「うちは法定雇用率を達成できていない」と思っていた企業が、計算方法を見直したら「実はほぼ達成していた」というケースがあります。逆に「達成している」と思っていたら「実は未達だった」というケースも起きています。法定雇用率の算定には複数の特例・控除ルールがあり、正確に理解すれば自社に有利に働かせることができます。知らないと損をする計算テクニックを整理します。

「自社の雇用率、本当に正確ですか?」——よくある計算ミス

雇用率の計算式は「雇用障害者数 ÷ 常用雇用労働者数(除外率適用後)× 100」です。シンプルに見えますが、実務では「常用雇用労働者数」の算出と「雇用障害者数」のカウントの両方で見落としが起きやすいポイントがあります。

最も多いミスは「精神障害者の短時間勤務カウントを0.5にしたまま」というものです。2024年4月の法改正により、精神障害者の週20〜30時間勤務は1.0カウントとして恒久化されました。以前の0.5カウントで計算していると、雇用率が実態より低く算出されてしまいます。既存の精神障害者社員に週20〜30時間勤務の方がいる場合、今すぐ再計算が必要です。

「みなし規定」——重度障害者は2倍カウントされる

あまり知られていない有利な規定として「重度障害者の2倍カウント」があります。重度身体障害者・重度知的障害者を週30時間以上で雇用している場合、1人で2.0カウントとして算定できます。また、重度身体障害者・重度知的障害者を週20〜30時間の短時間で雇用している場合でも1.0カウントになります。

精神障害者については先述の通り週20〜30時間勤務で1.0カウント(恒久化)ですが、さらに2024年改正で新設された「週10〜20時間の重度障害者等」は0.5カウントとして算定可能になりました。週10〜20時間という超短時間雇用でも雇用率にカウントできるようになったことで、体調の波が大きい精神障害者の雇用設計の幅が広がっています。

障害者の種類週労働時間カウント数
身体・知的障害者30時間以上1.0カウント
重度身体・重度知的障害者30時間以上2.0カウント(みなし)
重度身体・重度知的障害者20〜30時間1.0カウント
精神障害者30時間以上1.0カウント
精神障害者20〜30時間1.0カウント(特例・恒久化)
重度障害者等10〜20時間0.5カウント(2024年新設)

除外率制度——「この業種は不利」が緩和された

除外率制度は、業種によって障害者就業が構造的に困難とされる業務の割合を、常用雇用労働者数から控除する仕組みです。除外率が高いほど「実質的に必要な雇用数が少なくなる」ため、以前は建設業・製造業の一部など特定業種にとって有利な制度でした。

2024年の改正で全業種の除外率が一律10%引き下げられました。これにより、以前は除外率の恩恵で「実質的に達成していた」企業が、再計算すると未達になるケースが発生しています。自社の業種の除外率を確認し、改正後の数値で改めて計算することが急務です。

業種例改正前除外率改正後除外率影響
建設業45%35%必要雇用数が増える
製造業(一部)30%20%必要雇用数が増える
電気・ガス・水道事業25%15%必要雇用数が増える
病院・診療所10%0%除外率廃止

今すぐやるべき「雇用率の再計算チェックリスト」

以下の4点を確認するだけで、自社の雇用率計算の正確性をチェックできます。これらのいずれかに「確認していない」という項目がある場合、実態と異なる雇用率を報告している可能性があります。

  • 精神障害者の週20〜30時間勤務者を1.0カウントで再計算しているか
  • 重度障害者(身体・知的)を2.0カウントで算定しているか
  • 自社業種の2024年改正後の除外率を確認・適用しているか
  • 週10〜20時間の重度障害者等を0.5カウントに含めているか(2024年新設)

雇用率の計算ミスは「知らないだけで損をしている」または「知らないだけで問題を見落としている」のどちらかにつながります。TSUNAGU Academyでは自社の雇用率計算の正確性チェックと、最適な雇用設計のご提案を専門スタッフがサポートしています。

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TSUNAGU 編集部

TSUNAGU 編集部

障害者雇用専門

障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 社会保険労務士・障害者雇用コンサルタントが監修。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。

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2022年〜連載中
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