「採用したいが、受け入れ体制が整っていない」——この言葉を人事担当者から聞くたびに、ある種の矛盾を感じます。受け入れ体制は採用の後につくるものではなく、採用の前に設計するものだからです。採用が進まない根本原因は、ほぼ例外なく「業務設計の不足」にあります。
採用が進まない「本当の理由」を言語化する
障害者採用が進まない企業の声を聞くと、「業務がない」「現場が不安がっている」「定着するか心配」という3つのパターンに集約されます。しかしこれらはいずれも、真の原因ではなく「症状」です。
「業務がない」と言う企業でも、業務の棚卸しを一緒に行うと、データ入力・整理・ファイル管理・定型メール対応・Excelでの集計作業など、障害者社員が担える業務が必ず見つかります。「業務がない」のではなく、「担当できる業務として切り出されていない」だけなのです。「現場が不安」という場合も、その不安の正体はほとんどの場合、「具体的な業務イメージと支援体制のイメージが持てないこと」です。何をやってもらうか、困ったときに誰がどう動くか——この2点が明確になった瞬間、現場の不安は劇的に解消されます。
ステップ1:業務の棚卸しと「切り出し」
最初にやるべきことは、既存の業務の中から障害者社員が担当できる業務を洗い出し、「切り出す」ことです。全部の業務を任せる必要はありません。データ入力・整理・加工、ファイル管理・整理、メールの一次対応、Power Automateを使った業務フローの整備、SharePointでの情報管理・更新、Excelデータの集計とレポート作成——こういった業務は、IT/DXスキルを持つ障害者社員が非常に高い生産性を発揮できる領域です。
業務の切り出しは「減算」のイメージで行うのがコツです。既存社員の業務リストから「これは切り離せる」「これは標準化できる」という業務を選び、障害者社員用の業務パッケージとして再設計します。1日4時間分の業務を切り出すだけでも、週20時間勤務のパートタイム雇用として成立します。
ステップ2:現場への説明と「合意形成」
業務設計ができたら、受け入れる部署の現場マネージャーや同僚社員に対して説明を行います。ここで重要なのは「説明する」ではなく「一緒に設計する」というスタンスです。「本社から障害者を受け入れろと言われた」という空気が生まれると、現場の協力を得るのが難しくなります。
説明すべき内容は主に2点。「どんな業務をやってもらうのか(具体的に)」と「困ったときは誰がどう動くのか(サポート体制)」です。前者については業務リストを見せながら話すと、現場は「自分たちの負担が減る部分もある」と気づきます。後者については、ジョブコーチや支援員との連携体制、1on1面談の頻度、相談窓口を具体的に示すことで「自分たちだけで抱えなくていい」という安心感につながります。
ステップ3〜5:採用要件の設定・チャネル選定・定着体制の構築
業務設計と現場合意ができたら、採用要件を明確化します。「どんなスキルが必要か」「どんな特性の方に向いているか」「週何時間から始められるか」をあらかじめ整理しておくことで、採用媒体での訴求も明確になり、候補者とのミスマッチを防げます。
採用チャネルは、就労移行支援事業所との連携と実習受け入れを軸にするのが最もミスマッチを防ぎやすい方法です。求人サイトへの掲載(dodaチャレンジ・atGPなど)と組み合わせることで、より多くの候補者と出会えます。そして最後に、定着支援体制の構築——1on1面談の設計、業務マニュアルの整備、KPIの設定、緊急時の対応フローを採用前に設計しておくことが、「採用したら終わり」ではなく「採用してから始まる支援」を実現する鍵です。
TSUNAGU Academyでは、IT/DX業務に特化した研修を通じて即戦力となる障害者社員を育成し、企業の業務設計から採用・定着まで一体的にサポートしています。「何から始めればいいかわからない」という段階からご相談ください。
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TSUNAGU 編集部
障害者雇用専門障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 社会保険労務士・障害者雇用コンサルタントが監修。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。