「一つの業務だけを長年担当していると、いつか置き換えられる不安がある」——障害者社員がこの不安を抱え始めたとき、最も効果的な対応は「ダブルキャリア」の育成です。2つの異なるスキルを掛け合わせることで、本人の市場価値と組織内での不可替代性が同時に高まります。ダブルキャリア育成の設計方法と、組織が得られる柔軟性について解説します。

「ダブルキャリア」とは——2つのスキルの掛け算

ダブルキャリアとは、1人の社員が2つ以上の異なる業務領域のスキルを持ち、両方で価値を生むキャリア形態です。たとえば「Excelデータ管理+Power Automate自動化」「SharePoint管理+社内研修資料作成」「Power BIダッシュボード+業務マニュアル整備」——こうした組み合わせが、本人にとっての「複合的な強み」になります。

障害者社員にとってダブルキャリアが特に有効な理由は、「1つのスキルだけでは代替されやすい不安」を解消できる点にあります。また、2つの業務を掛け合わせることで「他の人にはできない仕事」が生まれ、組織内での存在感とやりがいが大きく変わります。

ダブルキャリアの育成ステップ:12ヶ月モデル

最初の6ヶ月は「第一スキルの習熟」に専念します。Excelデータ管理やSharePoint運用など、基盤となる業務を完全に習得し、他の社員から「頼られる存在」になることを目指します。この期間中に本人の「得意なこと・楽しいこと」を丁寧に観察し、第二スキルの候補を見極めます。

7〜9ヶ月目は「第二スキルの入門」です。第一スキルとは異なる領域(たとえば自動化フロー構築や研修資料作成)に挑戦し、基礎的な業務を担当できるレベルに到達します。10〜12ヶ月目は「両スキルの融合」です。第一スキルで得た業務知識を第二スキルに活かし、新しい付加価値を生む作業を担当します。「データ管理の知識+自動化スキル」で、データ処理フローを自ら設計・構築するという形です。

時期フェーズ目標向いている組み合わせ例
1〜6ヶ月第一スキル習熟基盤業務で「頼られる存在」になるExcelデータ管理・SharePoint運用
7〜9ヶ月第二スキル入門異なる領域の基礎を習得するPower Automate・研修資料作成
10〜12ヶ月両スキル融合掛け算で新しい価値を生むデータ管理+自動化設計

組織に生まれる「柔軟性」と「代替不可能性」

ダブルキャリア人材が組織にもたらす最大のメリットは「柔軟性」です。業務Aの担当者が休んだとき、業務Bの担当者が業務Aもカバーできるようになり、業務の継続性が高まります。部門間の壁を越えた業務連携が自然に生まれ、組織全体の効率が向上します。

本人にとってのメリットは「代替不可能性の向上」です。1つのスキルだけではAIや他の社員に代替されやすくても、2つのスキルを掛け合わせた業務は代替が難しくなります。「この人にしかできない仕事」が増えるほど、本人の存在価値と定着意欲は高まります。

「一つのスキル」ではなく「二つのスキルの掛け算」——この発想が、障害者社員のキャリアと組織の柔軟性を同時に高めます。TSUNAGU Academyでは、ダブルキャリア育成に特化したスキルロードマップ設計と、企業内での職域融合支援を提供しています。

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TSUNAGU 編集部

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障害者雇用専門

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