在宅勤務の障害者社員が「このツールが使いにくい」と感じたとき、その原因はしばしば「ソフトウェアのアクセシビリティ」にあります。JIS X 8341-3(高齢者・障害者配慮設計指針)に基づくソフトウェア環境整備は、企業の法的情報保障義務として求められると同時に、全社員の生産性向上にもつながります。具体的な基準と実践方法を解説します。

JIS X 8341-3とは——ソフトウェアのアクセシビリティ基準

JIS X 8341-3は、ソフトウェア・アプリケーション・Webコンテンツにおいて、高齢者・障害者が利用しやすいように設計するための日本産業規格です。「視覚・聴覚・運動・認知」に関わる4つの障害カテゴリに対して、具体的な設計指針が示されています。在宅勤務環境では、この規格に準拠したツール選定・設定が、障害者社員の生産性と定着率を大きく左右します。

たとえば視覚障害に関する指針では「テキストの拡大表示が可能であること」「キーボードだけで操作できること」「スクリーンリーダーに対応していること」が求められます。聴覚障害に関しては「音声情報に字幕やテキスト代替が提供されていること」が必要です。これらは専用の支援ソフトウェアを導入するだけでなく、企業が標準的に使用する業務ソフトウェア自体のアクセシビリティ対応が求められます。

在宅環境で整備すべき5つのアクセシビリティ項目

第一に「画面表示のカスタマイズ可能性」です。Windows/macOSの「ハイコントラストモード」「拡大鏡」「ナレーター(スクリーンリーダー)」などの標準アクセシビリティ機能が、業務ソフトウェア上で正常に動作するかを確認します。特に社内システム・業務アプリケーションがカスタム開発の場合、アクセシビリティ機能との互換性テストが不可欠です。

第二に「キーボード操作性」です。マウス操作が困難な肢体不自由の社員にとって、すべての業務がキーボードショートカットで完結するかどうかが働きやすさを左右します。ExcelやPower Platformでは標準で充実したキーボードショートカットが用意されていますが、社内独自システムでの対応状況を確認する必要があります。

第三に「音声・動画コンテンツの代替テキスト」、第四に「色だけに依存しない情報伝達」、第五に「操作時間の制限緩和」——これらはWeb会議ツール・eラーニングシステム・社内ポータルで特に重要になります。Teamsは標準で字幕機能・リアクション機能が備わっており、アクセシビリティ対応が進んでいます。

項目JIS基準の要点在宅環境での実践
画面表示カスタマイズ拡大・ハイコントラスト・色反転に対応Windows設定+業務ソフトの互換確認
キーボード操作性すべての機能をキーボードで操作可能社内システムのキーボード対応チェック
音声・動画代替字幕・音声解説・代替テキストを提供Web会議・研修動画に字幕を必須化
色以外の情報伝達色だけで情報を伝えないアイコン+テキストラベルの併用
操作時間制限緩和時間制限のない操作環境を提供自動ログアウト時間の延長設定

アクセシビリティ対応が全社員の生産性を上げる

アクセシビリティ対応は「障害者社員のための特別対応」ではなく、「より使いやすい環境づくり」そのものです。キーボードショートカットが充実していると、全社員の操作速度が上がります。字幕があると、騒がしい環境でもWeb会議に参加できます。ハイコントラスト表示は、老眼の進んだ一般社員にも読みやすさを提供します。

アクセシビリティ環境の整備は「法的情報保障」でもあり「全社員の生産性投資」でもあります。TSUNAGU Academyでは、在宅勤務環境のアクセシビリティ診断と、JIS規格に基づく改善提案を提供しています。「使いにくい」を「使いやすい」に変える設計を一緒に行いましょう。

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TSUNAGU 編集部

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障害者雇用専門

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