「ハラスメント防止教育を受けたけど、障害者社員がいる職場での適用方法がわからない」——このギャップを埋めたのが、従業員250名の流通企業C社の取り組みです。パワハラ防止と障害者雇用の両立を目指し、社内コミュニケーション改革を実施した結果、障害者社員の1年定着率が90%を達成。人事部長にその全貌を聞きました。
「ハラスメント防止」と「障害者雇用」の間のギャップ
多くの企業では「パワハラ防止教育」と「障害者雇用研修」が別々に実施されています。結果として、現場社員は「障害者社員への接し方」で戸惑い、配慮とハラスメントの境界が曖昧になります。「気を遣いすぎて不自然な距離感を作る」「配慮のつもりが当事者にとっては過保護でストレスになる」——こうした状況が職場の不安定化につながります。
C社が直面していたのはこの問題でした。2023年に精神障害・発達障害を持つ5名を採用したものの、現場社員から「どう接すればいいかわからない」「気を遣うばかりで疲れる」という声が上がり、障害者社員も「みんなが遠慮しているのが伝わる」と感じ、孤立が進んでいました。
「コミュニケーション改革」の3本柱
C社が実施したのは「ルール化」「可視化」「習慣化」の3本柱です。第一の「ルール化」では、全社員向けに「障害者社員とのコミュニケーションガイドライン」を作成しました。「〇〇という言葉はNG」「△△という配慮は過剰」「□□という支援は歓迎」——具体例を挙げてルールを明確化することで、「自分が今やっていることはOKかどうか」が判断できるようになりました。
第二の「可視化」では、障害者社員自身が「自分にとって嬉しい接し方・困る接し方」を匿名で投稿できる社内SNSスペースを設けました。投稿内容は週次で全社員にフィードバックされ、「こういう接し方は嬉しかった」「ああいう配慮は逆に気を遣わせてしまった」という当事者の声が、全社員の学びになります。
第三の「習慣化」では、全社員が月1回「インクルージョン振り返りミーティング」(15分)を実施するよう定着させました。自分のチーム内で「今月、障害者社員との接し方で気づいたこと」を短く共有するだけで、学びが組織に蓄積されていきます。
| 柱 | 具体的な施策 | 効果 |
|---|---|---|
| ルール化 | コミュニケーションガイドライン作成・配布 | 判断基準の明確化・不安の軽減 |
| 可視化 | 当事者の声を匿名で収集・全社フィードバック | 当事者の本音が現場に届く |
| 習慣化 | 月次インクルージョン振り返りミーティング | 継続的な学びの文化醸成 |
改革後の変化:定着率90%・職場満足度向上
コミュニケーション改革から1年後、C社の障害者社員の1年定着率は90%に達しました。「最初は「みんなが遠慮している」と感じていたけど、今は「普通に接してくれる」と感じるようになった」(在籍2年目の社員)。一般社員も「ルールが明確になったので、気を遣う必要がなくなった」とコメントしています。
さらに予期しない効果として、一般社員間のコミュニケーション質も向上しました。「障害者社員との接し方を考えるようになったら、他の社員との接し方も意識するようになった」。ハラスメント防止と障害者雇用の両立が、職場全体の心理的安全性を高める結果につながったのです。
「ハラスメント防止」と「障害者雇用」は別々の取り組みではなく、同じ「心理的安全性」の土台の上に成り立ちます。TSUNAGU Academyでは、コミュニケーション改革とインクルージョン文化醸成の研修・コンサルティングを提供しています。職場全体の信頼関係を一緒に構築しましょう。
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TSUNAGU 編集部
障害者雇用専門障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 社会保険労務士・障害者雇用コンサルタントが監修。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。