「車椅子を使っているから、働ける場所は限られる」——そんな思い込みを覆した事例があります。下肢機能障害のある28歳の佐藤さん(仮名)は、フルリモートでPower BIを使ったデータ分析業務を担当し、現在は経営会議用のリアルタイムダッシュボードを一人で管理しています。在宅雇用が身体障害者の可能性をどこまで広げるかを、本人の言葉で語っていただきました。
「通勤できないこと」が、雇用の壁だった
下肢機能障害により車椅子を使用している佐藤さんにとって、最大のキャリアの壁は「通勤」でした。バリアフリーの会社を探しても、最寄り駅からのアクセスや社内の段差など、実際に行ってみないとわからない問題が常に存在しました。就職活動で何社も内定を断らざるを得なかった経験が、「自分は普通に働けないのかもしれない」という気持ちにつながっていました。
転機になったのは、フルリモートでIT業務を担当できる求人との出会いでした。「画面の前で仕事ができるなら、通勤の問題はゼロになる。自分の障害が、仕事の質に関係ない世界がある」と感じたと言います。TSUNAGU AcademyのPower BI研修を受け、4ヶ月後に現在の会社に採用されました。
在宅雇用を実現した環境整備
採用後、会社は在宅勤務環境の整備をしっかりとサポートしました。高性能PCとモニター2台を自宅に配送し、通信費・光熱費の一部として月4,000円を補助。TeamsとSharePoint・Power BIの使用環境を設定し、セキュリティポリシーに沿ったVPN接続も整備しました。
「会社が「フルリモートで働けるように」真剣に準備してくれたことが、一番嬉しかった。「来られないなら仕方ない」ではなく、「来なくてもいい環境を一緒につくろう」というスタンスを感じられた」と佐藤さんは話します。週次の1on1(30分)を固定曜日に設け、年4回は対面でのコミュニケーション機会(ランチ等)も設定しています。
- 1会社支給の高性能PC・モニター2台を自宅に配送
- 2通信費・光熱費の一部補助(月4,000円)
- 3Teams・SharePoint・Power BIの使用環境を整備
- 4毎週固定曜日に30分のオンライン1on1を確立
- 5年4回の対面コミュニケーション日(社内ランチ等)を設定
入社からの9ヶ月——業務が進化した軌跡
入社直後の3ヶ月は、Excelでのデータ集計と週次売上報告書の作成からスタートしました。データの整理精度が高く、「ミスがない」という評価を早期に得られたことで、次のステップへの信頼が生まれました。4ヶ月目からPower BIの学習を開始し、8ヶ月目には部署別KPIダッシュボードの構築を任されました。
| 時期 | 担当業務 | 成果物 | 評価のポイント |
|---|---|---|---|
| 入社〜3ヶ月 | データ収集・Excelレポート作成 | 週次売上報告書 | ミスゼロ・納期遵守率100% |
| 4〜8ヶ月 | Power BI基礎・ダッシュボード作成 | 部署別KPIダッシュボード | 視認性の高いビジュアル設計 |
| 9ヶ月〜 | Power BI応用・自動更新設定 | 経営会議用リアルタイムダッシュボード | 会議の意思決定に直接貢献 |
現在は経営会議でリアルタイムに参照されるダッシュボードを一人で管理しています。「自分が作ったダッシュボードが毎月の経営判断に使われている。車椅子だから関係ない話だと思っていたことに、自分が一番近い場所にいる」——この言葉が、在宅×IT業務の可能性を最も力強く表しています。
「会社に行けないことがマイナスではなく、自分のベストな環境で最高の成果を出せることが証明できた」——佐藤さんのこの言葉は、身体障害×在宅×IT業務の組み合わせが生み出す新しい働き方の可能性を示しています。TSUNAGU Academyでは、このモデルを実現するための研修・採用支援を行っています。
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TSUNAGU 編集部
障害者雇用専門障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 社会保険労務士・障害者雇用コンサルタントが監修。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。