「業務がない」「現場が不安がっている」——この2つの課題を抱えていたIT企業が、TSUNAGU Academyの導入から12ヶ月で法定雇用率を達成しました。人事責任者・田中氏へのインタビューをもとに、12ヶ月間の歩みと成功の要因を振り返ります。
「業務がない」という思い込みから始まった
従業員約300名のIT企業でプロジェクト管理を担当する田中氏が障害者雇用担当になったのは2年前のことです。当時の雇用率は1.8%。法定雇用率2.3%に対して0.5%不足しており、毎年納付金を払い続けていました。
「正直に言うと、最初は「うちはエンジニア集団だから、障害のある方に任せられる業務なんてない」と思っていました。でも、その思い込みが最初の壁でした」と田中氏は振り返ります。TSUNAGU Academyの担当者と一緒に既存業務を棚卸しした結果、「これは任せられる」という業務がいくつも見つかりました。データ入力・ファイル管理・定型メール対応・Power Automateでの業務フロー整備——エンジニアたちが「めんどくさい」と後回しにしていた業務が、まさにそれでした。
現場の不安を解消した「具体的なイメージ」
次の壁は現場でした。開発チームのリーダーたちに「障害者社員の受け入れ」を伝えると、「サポートの仕方がわからない」「普通に接して大丈夫なのか」という声が上がりました。田中氏はこれを「説明不足が生む不安」と受け取り、「何を担当してもらうか」「困ったときは誰がどう動くか」の2点を、できる限り具体的に現場に伝えることにしました。
「業務リストを見せながら「このExcelの集計作業を担当してもらいます。困ったときは支援員が相談を受けてくれます」と話した瞬間、リーダーたちの表情が変わりました。「それなら一緒にやれるかも」という空気に変わったんです」。抽象的な不安は、具体的なイメージを与えることで解消できる——この体験は、田中氏にとって大きな学びになりました。
12ヶ月の歩み——採用から定着まで
1〜2ヶ月目は業務の棚卸しと職域設計に専念しました。受け入れ可能な業務リストを作り、どの部署のどの業務を担当してもらうかを決めました。3〜4ヶ月目には、近隣の就労移行支援事業所2社を訪問して関係を構築し、3名の実習受け入れを開始。実習を通じて双方向のミスマッチをほぼゼロにできたことが、その後の採用成功につながりました。
| 期間 | 取り組み内容 | 成果 |
|---|---|---|
| 1〜2ヶ月目 | 業務棚卸し・職域設計 | 受け入れ業務リスト完成 |
| 3〜4ヶ月目 | 就労移行支援事業所との連携・実習受け入れ | 3名の実習生受け入れ・ミスマッチゼロ |
| 5〜6ヶ月目 | 2名採用・Power Platform研修開始 | 自動化フロー初号機が完成 |
| 7〜9ヶ月目 | さらに3名採用・業務本格稼働 | 雇用率2.5%達成 |
| 10〜12ヶ月目 | 定着支援・スキルアップフォロー | 雇用率2.7%達成・全員定着継続 |
想定外の成果——DX推進との相乗効果
「正直、雇用率を達成したら終わり、くらいに思っていました。でも実際に一緒に働いてみると、想定外のことが起きました。障害者社員が構築したPower Automateフローが、私たちエンジニアが手をつけられていなかった業務改善に使われ始めたんです」
月次の請求書照合に毎月2日かかっていた業務が2時間になった。営業レポートを毎週手作業で作っていた担当者の作業が全自動化された。「障害者雇用でDXが加速するなんて、思ってもいなかった」と田中氏は笑います。義務として始めた取り組みが、会社の競争力につながっていく——この体験こそが、障害者雇用を「戦略」として捉え直すきっかけになりました。
「まず動いてみることが大事でした。完璧な準備を待っていたら、絶対に動き出せなかった。就労移行支援事業所とTSUNAGU Academyのサポートがあれば、最初の一歩はそれほど怖くない」——田中氏の言葉が、次の一歩を踏み出せないでいる企業への最良のメッセージです。
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TSUNAGU 編集部
障害者雇用専門障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 社会保険労務士・障害者雇用コンサルタントが監修。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。