「納付金を払っていれば問題ない」——そう思っている人事担当者がいるとすれば、それは大きな誤解です。法定雇用率の未達が続くと、納付金だけでなく行政指導・勧告・そして企業名の公表という段階的なリスクが待っています。どのタイミングでどんな対応が必要か、そして今すぐ取れるリスク回避策を整理します。

「納付金を払えばOK」ではない——段階的に重くなるリスク

法定雇用率未達の企業が直面するリスクは、4つの段階で重くなっていきます。まず第1段階として、毎年の障害者雇用状況報告と納付金の支払い義務が生じます。多くの企業はこの段階で止まっていますが、この状態が長く続くと次のフェーズに移行します。

第2段階は「雇用計画作成命令」です。雇用率が著しく低い状態が続き、改善の見込みがないとハローワークが判断した場合、雇用改善計画の作成・提出が命じられます。第3段階では、この計画が守られなかった場合に厚生労働大臣による「勧告」が行われます。そして第4段階——勧告を無視し続けた場合、企業名と違反内容が厚生労働省のウェブサイトで公表されます。

段階状況対応内容企業への影響
第1段階雇用率未達(納付金対象)毎年の状況報告・納付金支払い経済的負担
第2段階著しく低い・改善なしハローワークから雇用計画作成命令行政との関係悪化
第3段階計画未履行厚生労働大臣による勧告法的拘束力が生じる
第4段階勧告無視企業名・違反内容の公表社会的信用の失墜

社名公表が引き起こす「見えないダメージ」

社名公表が怖いのは、即時的な経済的ペナルティではなく、企業ブランドへの長期的なダメージです。最も深刻なのは採用への影響です。特に新卒採用では、就活生がGoogleで社名検索した際に「障害者雇用違反」という情報が出てくることで、応募数が激減するケースがあります。

ESG・SDGs投資家からの評価低下も見逃せません。機関投資家がESGスコアを投資判断に使う割合が高まる中、障害者雇用の違反歴は「S(社会)」の評価を直撃します。取引先・顧客からの信頼失墜、メディア報道による二次的な風評被害も重なり、一度公表されたイメージを回復するには数年単位の取り組みが必要になります。

「取り組んでいる姿勢」が行政指導を回避する

行政指導・社名公表を回避するための最重要ポイントは、「雇用率を達成していること」よりも「改善に向けて具体的に動いていること」です。ハローワークの担当者が見ているのは、企業が本気で課題に向き合っているかどうかです。採用計画を立案してハローワークに提出している、就労移行支援事業所と連携して実習受け入れを開始している——こうした具体的な行動の記録が、「改善意欲がある企業」として評価されます。

今すぐできることは4つです。まず現在の雇用率と法定値のギャップを正確に計算すること。次に採用計画を文書化してハローワークに提出すること。就労移行支援事業所に連絡して連携の第一歩を踏み出すこと。そしてIT/DX業務を中心とした職域開発の検討を始めること。完璧な準備が整う前でも、「動き始めた記録」を作ることが最善のリスク管理です。

  • 現在の雇用率と法定値のギャップを正確に計算する
  • 採用計画を文書化してハローワークに提出する
  • 就労移行支援事業所に連絡・訪問して連携を開始する
  • IT/DX業務を中心とした職域開発の検討を始める
  • 取り組みの記録(日付・内容)を残しておく

リスクを回避するための最善策は、「納付金を払い続けること」ではなく「採用に向けて動き続けること」です。TSUNAGU Academyでは、雇用率改善に向けた具体的な行動計画の策定から、採用・定着まで一貫してサポートします。

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TSUNAGU 編集部

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障害者雇用専門

障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 社会保険労務士・障害者雇用コンサルタントが監修。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。

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