「同じ仕事を続けているうちに、なんだかやる気がなくなってきた」——障害者社員からこういった声が聞こえ始めたとき、多くのマネージャーは「体調の問題かな」と感じます。しかし実際には、「自分の強みと業務が噛み合っていない」という問題であることが少なくありません。ジョブクラフティングは、その噛み合わせを本人と一緒に調整するアプローチです。

ジョブクラフティングとは——「与えられた仕事」を「自分の仕事」にする

ジョブクラフティングとは、与えられた業務の範囲・関わり方・意味づけを、社員が自ら少しずつ再設計していくアプローチです。組織が決めた「あなたの仕事」という枠を、本人の強み・興味・価値観に合わせて形作り直していく——この小さな調整の積み重ねが、業務への主体性と定着意欲を生み出します。

ASD・ADHD・精神障害など、ニューロダイバース特性を持つ社員にとって、このアプローチが特に重要な理由があります。それは「標準的な業務設計が、その人の特性に合っていないことが多い」からです。一般社員なら「少し不得意でも慣れれば対処できる」業務が、ニューロダイバース特性を持つ方には継続的なストレス源になることがあります。その逆に、「一般的にはつまらない」と思われる業務が、特定の特性を持つ方には最高の適性を発揮できる場になることもあります。

3種類のジョブクラフティング——どこを変えるかを選ぶ

ジョブクラフティングには3つのアプローチがあります。どれか一つが正解ではなく、本人の状況と職場環境に合わせて組み合わせていきます。

第一の「タスク・クラフティング」は、業務の種類・量・やり方を調整するアプローチです。ASD特性を持つ社員が「データ分析業務の割合を増やし、対面の打ち合わせ準備業務を減らす」という調整をした結果、ストレスが激減しながら生産性が上がった事例があります。「苦手な業務をなくす」ことが目的ではなく、「得意な業務の比率を高める」ことが目的です。

第二の「関係性クラフティング」は、誰とどのように関わるかを調整するアプローチです。ASD特性のある社員が「対面での頻繁なやり取りをTeamsのチャットに切り替えた」だけで、業務のストレスが大幅に減り、同僚との関係が改善したケースがあります。「どう関わるか」を変えるだけで、「誰と関わるか」を変えなくても人間関係の質が変わります。

第三の「認知的クラフティング」は、業務の意味づけを変えるアプローチです。「細部へのこだわりが強くて仕事が遅い」と悩んでいたASD社員が、「自分のこだわりがエラーを防ぎ、チームの品質を守っている」という視点を持てたとき、同じ業務への取り組み方が変わりました。業務内容は何も変わっていないのに、本人の主体性とモチベーションが大きく高まったのです。

種類何を変えるかニューロダイバース活用例
タスク・クラフティング業務の種類・量・やり方データ分析の比率を増やし、対面作業の比率を減らす
関係性クラフティング誰とどう関わるかチャット中心の非同期コミュニケーションに切り替える
認知的クラフティング業務の意義の捉え方「こだわりが品質を守っている」と意味を再解釈する

ジョブクラフティングを実践する5つのステップ

最初のステップは「聞くこと」です。1on1で「最近、どんなときに仕事が楽しいと感じますか?」「逆に、しんどいなと感じるのはどんな場面ですか?」を丁寧に聞きます。この問いへの答えの中に、ジョブクラフティングのヒントが詰まっています。

答えが得られたら、現在の業務リストを本人と一緒に見直します。「これはもっとやりたい」「これは誰かと分担できるかも」「これが特にしんどい」という分類を一緒に行います。この作業自体が、本人にとって「自分の仕事を主体的に考える」経験になります。

  • 1STEP1:「楽しいとき」「しんどいとき」を1on1で丁寧に聞く
  • 2STEP2:現在の業務リストを本人と一緒に見直し、分類する
  • 3STEP3:「増やしたい業務」「減らしたい業務」「変えたい関わり方」を話し合う
  • 4STEP4:3ヶ月の試行期間で新しい業務配分を実験する
  • 5STEP5:振り返りを行い、継続・追加調整を上司と一緒に決定する

ジョブクラフティングで最も大切なのは、「一度決めたら終わり」にしないことです。本人のスキルが上がれば得意な業務も変わり、チームの状況が変われば関わり方も変わります。半期ごとの定期的な見直しを習慣にすることで、「常に自分の強みと業務が噛み合っている」状態を維持できます。

ジョブクラフティングは「特別なプログラム」ではなく、1on1での問いかけから始められる小さな実践です。TSUNAGU Academyでは、ジョブクラフティングの考え方を取り入れた業務設計コンサルティングと、マネージャー向けの実践研修を提供しています。

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TSUNAGU 編集部

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障害者雇用専門

障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 社会保険労務士・障害者雇用コンサルタントが監修。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。

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2022年〜連載中
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