「自分の障害を会社に伝えるべきか、伝えないべきか」——これは障害を持つ求職者が就職活動で最も悩む問いの一つです。企業の採用担当者も、「オープン就労とクローズ就労の違い」を正確に理解していないと、適切な採用プロセスを設計できません。両方の視点から、それぞれのメリット・リスクと、採用実務での対応方法を解説します。

オープン就労とクローズ就労とは

オープン就労とは、障害者手帳を会社に提示し、障害があることをオープンにして就労するスタイルです。企業は障害者雇用率にカウントでき、合理的配慮を提供する義務が生じます。クローズ就労は、障害を開示せずに一般採用と同じ条件で就職するスタイルで、雇用率のカウントにはなりません。

2つの就労スタイルの間には、本人にとっても企業にとっても、一長一短があります。「どちらが正しい」という絶対的な答えはなく、本人の状況・障害の特性・企業の対応力によって、最適な選択肢は変わります。

オープン就労のメリットとリスク

オープン就労の最大のメリットは、「合理的配慮を正式に受けられる」ことです。業務マニュアルの整備、在宅勤務の許可、勤務時間の柔軟設定——こうした配慮は、オープン就労であってはじめて企業に提供義務が生じます。体調悪化時にも「今日は少し調子が悪い」と正直に伝えやすくなり、早期対応につながります。

一方でリスクも存在します。障害を開示したことで、意図せず偏見の目で見られる、昇進・評価で不利に扱われるのではないかという不安は、特に日本の職場環境では完全には払拭できません。ただし、こうした差別的扱いは障害者雇用促進法で禁止されており、違反した場合は企業が行政指導を受けます。

クローズ就労のメリットとリスク

クローズ就労のメリットは「障害者として見られない」という自由さです。一般社員と同じ評価基準で働けることが、本人のモチベーションや自己効力感につながるケースもあります。ADHD・ASDなど外見からは気づかれにくい発達障害の場合、「特に配慮なくても十分に働ける」と判断してクローズを選ぶ方も多くいます。

リスクは「助けを求めにくい環境になる」ことです。体調が悪化しても「障害があることを言っていないから、休みにくい」「なぜミスが多いのかを説明できない」という状況が続くと、じわじわとストレスが積み重なります。企業側のリスクは、「知らずに不適切な業務配置をしてしまう」「体調悪化時の対応が遅れる」という点です。

比較項目オープン就労クローズ就労
障害の開示あり(障害者手帳提示)なし(一般採用と同じ)
雇用率へのカウントされるされない
合理的配慮企業に提供義務あり提供されない(開示していないため)
本人のメリット配慮を受けやすい・相談しやすい「障害者」として見られない自由
本人のリスク差別・偏見のリスク体調悪化時の対応が遅れるリスク
企業のリスク適切に対応すればほぼなし不適切な配置・対応遅れのリスク

採用担当者が今日から実践できる4つの対応

企業として最も重要なのは、「オープン就労者が安心して配慮を求めやすい環境をつくる」ことです。「障害があることを開示したら損をする」という印象を職場から払拭することが、本人の正直な開示と早期対応を可能にします。

  • 障害者専用求人と一般求人を分けて掲載し、候補者が選びやすくする
  • オープン就労者には入社前に「合理的配慮面談」を実施して具体的な配慮内容を合意する
  • 障害情報を個人情報として管理するルールを明文化し、不必要な共有を禁止する
  • クローズ就労者が後から「実は開示したい」と思ったときに開示できる仕組みを整える

オープン就労を選んだ社員が「開示してよかった」と感じられる職場環境こそが、障害者雇用の理想の姿です。TSUNAGU Academyでは、採用段階からのオープン・クローズ就労対応の実務支援を行っています。

この記事は役に立ちましたか?

TSUNAGU 編集部

TSUNAGU 編集部

障害者雇用専門

障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 社会保険労務士・障害者雇用コンサルタントが監修。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。

記事 92本
2022年〜連載中
TSUNAGU