「発達障害の方には、特別な対応が必要なのでは」と思っていませんか?実は、発達障害のある社員が活躍できる環境は、「良いマネジメントの基本」を丁寧に実践するだけで整います。むしろ、これらの原則を徹底することで、一般社員全員にとっても働きやすいチームになっていきます。現場リーダーが今日から使える5つの原則を解説します。
原則1:「明確に伝える」——曖昧さをゼロにする
「なんとなくわかるよね?」「いい感じにやっておいて」——日常的に使われるこういった表現が、ASD特性を持つ社員にとっては最大の障壁になります。「いい感じ」とはどういう状態なのか、「なんとなく」の基準は何なのかが、文字通りわからないのです。
指示の基本は「何を」「いつまでに」「どの品質で」「誰に確認して」という4点セットです。たとえば「この週次レポートを、金曜17時までに、先週のフォーマットと同じ形式で作成して、完成したら私にTeamsで送ってください」という形です。最初は手間に感じるかもしれませんが、確認の往復が減り、結果的に双方の時間が節約されます。一般社員に対しても同じように明確な指示を出すと、チーム全体の効率が上がるという副産物もあります。
原則2:「変化の予告」——サプライズをなくす
ASD特性のある方にとって、予期しない変更は単なる「困ること」ではなく、強い不安やパニックにつながることがあります。スケジュール変更・担当業務の変更・職場環境の変化は、できる限り事前に(理想は1週間前、最低でも2〜3日前)伝えることを習慣にしましょう。
「なぜ変わるのか」という背景も一緒に説明することで、変化の意味が理解でき、受け入れやすくなります。急な変更がどうしても避けられない場合は「急で申し訳ないけど、〇〇が変更になりました。理由は〇〇です」と丁寧に伝えるだけで、受け取り方が大きく変わります。
原則3:「書くことで残す」——口頭指示を減らす
口頭での指示は「その場で聞いたことをすべて正確に記憶する」ことを前提にしていますが、ADHD特性のある方はワーキングメモリ(作業記憶)が弱く、聞いた直後から情報が抜け落ちることがあります。チャット・メモ・手順書で記録を残すことで、「もう一度確認できる」安心感が生まれます。
「口頭で言ったのにまた聞いてくる」という現場マネージャーの不満は、実はこの仕組みを整えることで解消されます。口頭指示の後にTeamsでテキストで送る習慣をつけるだけで、確認の往復が劇的に減ります。これも一般社員全員に効果がある習慣です。
原則4:「強みにフォーカスする」——できることから拡張する
人間は「できないこと」に意識を向けられると、自信を失い、パフォーマンスが下がります。「この人はここが苦手」ではなく「この人はここが得意」という視点で業務設計をすることが、長期定着の土台です。得意な業務が増えると自信がつき、苦手な場面への対処力も自然と高まります。
「強みにフォーカスする」は、1on1でも同じです。「今週うまくいったことは何ですか?」という質問から始めることで、本人が自分の成功パターンに気づき、それを次の業務に活かせるようになります。
原則5:「定期的な振り返り」——早期発見が最大のリスク管理
発達障害のある社員は、「困っていても自分から言い出せない」ケースが多くあります。ASD特性では「相手を困らせたくない」という配慮から相談を控えることがあり、ADHD特性では「また同じことで失敗した」という羞恥心から問題を隠してしまうことがあります。週次または隔週の1on1を設け、「調子はどう?」「今週困ったことはあった?」を繰り返し聞くことが、問題が小さいうちに対処できる唯一の手段です。
「特に何もないです」という返答が続いても、1on1を続けることをやめないでください。問題が起きたときに「言っても大丈夫な場所」として機能するよう、日常から接点を維持し続けることが重要です。
この5原則は発達障害者のためだけのものではありません。これらを徹底したチームは、全員のコミュニケーション効率と心理的安全性が高まり、一般社員の定着率と生産性まで上がる傾向があります。TSUNAGU Academyでは現場マネージャー向けのニューロダイバース人材マネジメント研修も提供しています。
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TSUNAGU 編集部
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