日本の障害者雇用で、最も進んでいない領域が「重度障害者」の就労です。厚生労働省の調査でも、重度身体障害者・重度知的障害者の一般就労率は低い水準で推移しています。しかし2024年の法改正により、週10〜20時間の重度障害者等も0.5カウントとして算定可能になり、これまで「フルタイムでないと意味がない」と諦めていた企業にとって、重度障害者雇用が新たな現実味を帯びてきました。「重度だから働けない」は思い込みです——短時間勤務から始め、適切な業務設計とIT研修を組み合わせれば、重度障害者こそが企業のDX戦力として活躍できる時代が来ています。
日本の重度障害者雇用——「見えない壁」の正体
日本の障害者雇用統計を見ると、身体障害者手帳1〜2級や療育手帳A判定に該当する「重度障害者」の一般就労率は、軽度・中度の障害者と比較して圧倒的に低いのが現状です。多くの企業が「重度障害者を雇用するには、配慮が大変すぎる」「業務が任せられない」と考えていますが、これは「重度障害者の能力」を正しく理解していないことに起因しています。
実際には、重度障害者の中には「身体の機能が制限されていても、認知機能・判断力・注意力は非常に高い」方が大勢います。特に ASD(自閉スペクトラム症)で重度に分類される方の中には、細部への注意力と論理的思考力が一般社員を大きく上回るケースもあります。問題は「その能力を活かせる業務と環境が用意されていない」ことにあります。
法定雇用率未達企業への提言——「重度障害者を雇う」は最も効率的な解法
法定雇用率を達成できていない企業にとって、重度障害者の雇用は「最もコストパフォーマンスの高い選択肢」の一つです。なぜなら、重度障害者は「2倍カウント」されるからです。
重度身体障害者・重度知的障害者を週30時間以上で雇用すると、1名で2.0カウントとして算定されます。つまり、通常の障害者2名分に相当するカウントが、重度障害者1名で得られるのです。週20〜30時間の短時間勤務でも1.0カウント、さらに2024年改正で追加された「週10〜20時間の重度障害者等」も0.5カウントとして算定可能になりました。
| 勤務形態 | 重度障害者カウント | 通常障害者カウント |
|---|---|---|
| 週30時間以上 | 2.0(2倍) | 1.0 |
| 週20〜30時間 | 1.0 | 0.5 |
| 週10〜20時間(重度等・2024年新設) | 0.5 | 対象外 |
従業員300名の企業で法定雇用率2.7%を目指す場合、必要な障害者雇用数は約9名です。しかし重度障害者を週30時間以上で3名雇えば、3名×2.0カウント=6.0カウント。残り3カウントを通常の障害者雇用で補うだけで達成できます。重度障害者雇用は「数合わせ」ではなく、制度上も極めて効率的な雇用戦略なのです。
なぜ「短時間勤務」から始めることが重要か
重度障害者の多くは、長時間の連続勤務が体調に負担をかけるケースがあります。精神障害・身体障害・発達障害のいずれにおいても、「週40時間のフルタイム」が最初から最適とは限りません。しかし「短時間勤務から始めて、慣れたら時間を増やす」というステップアップモデルであれば、無理なく定着できます。
特に精神障害のある方の場合、体調の波が大きいため、週20時間から始めて「この量なら安定して続けられる」という自信をつけてから時間を増やすアプローチが最も定着率が高いです。2024年改正で精神障害者の週20〜30時間勤務が1.0カウントとして恒久化されたことも、短時間勤務スタートの後押しとなっています。
- 1週20時間から始め、体調とスキルの習熟状況を見ながら段階的に増やす
- 2コアタイムを設けつつ、前後はフレックス対応で体調に合わせる
- 3在宅勤務を基本とし、通勤による体力消耗を排除する
- 4業務量を「最低ライン」と「余裕があれば追加」の2段階で設計する
重度障害者でも担えるIT/DX業務——「できないこと」から「得意なこと」へ
重度障害者が就労できないと考えられがちな背景には、「体力を要する業務」「対面コミュニケーションが多い業務」というイメージがあります。しかしIT/DX業務は、その前提を根本から覆します。
Power Automateでの業務フロー自動化、Power BIでのデータ可視化、SharePointでの情報管理——これらの業務は「明確な手順がある」「在宅で完結する」「成果が数値で見える」という特性を持ち、障害の重さに関わらず能力を発揮しやすい領域です。特にASD特性の「細部への注意力」は、データの品質管理やフローのエラー検出で突出した強みになります。
身体に重度の障害がある方でも、マウス操作を最小限に抑えたキーボードショートカット操作や、スクリーンリーダーと組み合わせた音声ベースのPC操作で、ExcelやPower Platformの業務を担当できます。視覚障害のある方がスクリーンリーダー×Excelで経理業務を担う事例も、TSUNAGU Academyでは複数確認しています。
法定雇用率の「カウント方法」を正しく理解する
重度障害者雇用の効率性を最大限に活かすには、カウント方法を正確に理解することが前提です。「どの程度の障害が「重度」に該当するのか」「短時間勤務の場合はどうカウントされるのか」——これらの基準を整理します。
「重度身体障害者・重度知的障害者」に該当するのは、身体障害者手帳1〜2級、療育手帳A判定、精神障害者保健福祉手帳1級の方です。これらの方を週30時間以上で雇用すれば2.0カウント、週20〜30時間で1.0カウントです。2024年改正で新設された「週10〜20時間の重度障害者等」は0.5カウントとなります。
※ 障害者手帳の等級判定・算定方法の詳細は、ハローワークまたは所管の福祉事務所でご確認ください。本記事は2026年5月時点の情報に基づいています。
まずは無料相談でお気軽にご連絡ください。
無料相談する重要なのは「重度障害者を雇う=高コスト」という誤解を解くことです。短時間勤務から始めれば、賃金負担も開始時は軽く済みます。さらに特定求職者雇用開発助成金や障害者雇用安定助成金を活用すれば、雇用コストの一部が補助されます。制度的なハードルは、想像以上に低いのです。
重度障害者雇用を成功させる5つの設計原則
重度障害者の雇用を成功させるには、採用前から「この人に合う業務・環境・支援」を設計することが不可欠です。以下の5原則が、定着率80%以上を実現する土台になります。
- 1原則1:業務設計を先に完成させる——採用後に「何をやってもらうか」を考えない
- 2原則2:短時間・在宅からのスタートを基本とする——通勤負担を排除し、体調に合わせた柔軟な働き方を設計する
- 3原則3:視覚的・手順化されたマニュアルを用意する——口頭指示ではなく、テキスト・写真・動画のマルチモーダルマニュアルで自己解決を促す
- 4原則4:週次1on1と体調トラッキングを必須にする——「しんどい」と言いやすい関係性を最初から構築する
- 5原則5:IT研修を並行させてスキルを育てる——業務だけでなく、Power PlatformなどのDXスキル習得で本人の自信と市場価値を高める
TSUNAGU Academyが重度障害者雇用を「可能」にする理由
TSUNAGU Academyでは、重度障害を持つ方が在宅で自分のペースを保ちながらITスキルを習得できる研修プログラムを提供しています。Power Platform(Power Automate・Power BI・SharePoint)の基礎から応用まで、実際の業務課題を使ったプロジェクト型研修で「研修中に作った成果物が、そのまま会社で使える」という体験を重ねます。
特に重度障害を持つ受講者の多くは、「自分のペースで進められる」という柔軟性が続けられた最大の理由だと話しています。体調が悪い日は30分で終え、調子が良い日は2時間取り組む——この柔軟性が、「また働けるかもしれない」という感覚を少しずつ取り戻します。研修修了後は、企業の業務に即戦力として配属され、Power Automateフローの構築やデータ管理業務を担当するケースが多数あります。
「重度障害者を雇うのは難しい」——その思い込みを、制度設計とITスキル、そして在宅勤務という3つの組み合わせで覆します。法定雇用率未達でお悩みの企業は、まず「重度障害者の短時間雇用」という選択肢を検討してみてください。TSUNAGU Academyでは、貴社の現状に合わせた重度障害者雇用の設計支援を無料でご相談を受け付けています。
重度障害者雇用は「特別な対応」ではなく、法定雇用率達成の「最も効率的な解法」の一つです。短時間勤務から始め、在宅×IT業務という組み合わせで、重度障害を持つ方も企業のDX戦力として活躍できる——その可能性を、ぜひ一度検討してください。TSUNAGU Academyは、採用から育成・定着までを伴走支援します。
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TSUNAGU 編集部
障害者雇用専門障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 社会保険労務士・障害者雇用コンサルタントが監修。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。