「障害者社員に任せられる仕事がない」という悩みを持つ企業の人事担当者が、総務・経理部門のバックオフィスを改めて見渡したとき、実は「最適な職域が山積みになっていた」という話をよく聞きます。請求書の入力・照合、経費精算データの整理、契約書のデジタル化——どれも「定型で、在宅で、ITツールと相性が良く、成果が数値で見える」業務です。バックオフィスDXと障害者雇用がなぜこれほど相性が良いのか、具体的な職域設計事例とともに解説します。

バックオフィスDXと障害者雇用の相性が良い5つの理由

まず、業務手順が明確で標準化しやすいという特徴があります。請求書の入力ひとつとっても「このフォーマットのこの列にこのデータを入力する」という手順書が書ける業務ばかりです。視覚化・手順化・チェックリスト化が得意なASD特性の方にとって、この明確さは最高の環境です。

次に、在宅でも業務の質を保ちやすいという点です。経費精算のデータ整理も、請求書照合も、SharePointやクラウドシステム上で完結します。出社しないと「仕事ができない」業務がほとんどありません。精神障害・発達障害を持つ方の在宅勤務との相性が抜群です。

また、定型業務が多く習熟曲線が描きやすいため、「最初はゆっくり、慣れたら速く正確に」というステップアップが評価として見えやすくなります。月次締め業務のような「この日までに完了させる」という締め切りのある業務は、KPIの設定と達成感の設計にも活用しやすい点も魅力です。

総務・経理での職域設計:5つの具体事例

請求書処理では、Power AutomateとAI Builderを組み合わせることで、届いたメールの請求書PDF添付から、金額・取引先名の抽出・Excelへの自動転記・照合フローまでを自動化できます。ここで障害者社員が担うのは「フローの監視・異常値の確認・承認ルーティング」です。単純入力ではなく「品質管理担当」として機能します。

経費精算のデータ整理は、Excel Power QueryやVBAを使ったデータ加工が中心です。異なるフォーマットの経費精算データを統一形式に整え、月次集計レポートに仕上げる作業は、パターンを見つけることが得意なASD・ADHD特性の方が高いパフォーマンスを発揮しやすい業務です。

業務活用ツール習得期間目安向いている特性
請求書データ入力・照合管理Power Automate + AI Builder2〜3ヶ月正確性・ルール遵守(ASD)
経費精算データ整理・集計Excel VBA・Power Query1〜2ヶ月データへの集中力(ASD・ADHD)
契約書・帳票のデジタル化Adobe Acrobat・OCRツール1ヶ月反復作業の安定性(知的障害)
月次報告ダッシュボード作成Power BI3〜4ヶ月データ可視化の精度(ASD)
文書管理・アーカイブ整備SharePoint・OneDrive1ヶ月分類・整理への集中力(ASD)

バックオフィスDX職域の成功事例:600時間の削減

中堅商社のケースでは、発達障害(ASD)を持つ障害者社員2名がPower Automate研修修了後にバックオフィスDX担当として配属。3ヶ月で請求書処理・経費精算・月次レポート生成の3フローを構築し、経理部の年間600時間分の定型作業を自動化しました。「彼らが作ったフローのおかげで、経理チームが付加価値業務に集中できるようになった」という経理部長の言葉が印象的でした。

総務・経理のバックオフィスは「障害者社員の試し場」ではなく「最も活躍できる最前線」になり得ます。TSUNAGU Academyでは、バックオフィスDXに特化した研修コースと、職域設計コンサルティングをセットで提供しています。「何をやってもらうか」が見えていない企業ほど、この職域から始めることをお勧めします。

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TSUNAGU 編集部

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障害者雇用専門

障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 社会保険労務士・障害者雇用コンサルタントが監修。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。

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