「障害者枠で採用されたから、一般社員とは別の基準で働いている」——そういう感覚を持っている障害者社員は、思っている以上に多いです。その感覚を変える最も強力な方法のひとつが、IT資格の取得です。ITパスポートを取得した瞬間「自分は客観的なスキルを持っている」という感覚が生まれ、それが定着意欲と自己肯定感を同時に高めます。資格取得支援の体制づくりと、効果的なロードマップを解説します。
IT資格取得が障害者雇用に与える3つの効果
IT資格取得の効果は3つの次元で現れます。第一は「本人の自信向上」です。資格合格という客観的な証明が「自分は能力がある」という根拠になります。精神障害・発達障害を持つ方の中には「自分の能力に自信が持てない」方が多く、この根拠はとても大きな意味を持ちます。
第二は「キャリアの見える化」です。「入門→基礎→中級→応用」というロードマップが描けることで、「今後どう成長できるか」が本人にも企業にも見えるようになります。「ここからどこへ行くのかわからない」という閉塞感は定着率を下げる大きな要因ですが、資格ロードマップはその解消に効果的です。
第三は「企業側の評価基準の整備」です。「障害者社員をどう評価すればいいかわからない」という管理職の悩みに対し、資格取得という客観指標が一つの答えを提供します。「ITパスポート取得=業務DXの基礎知識あり」「PL-900取得=Power Platform業務の担当可能」という基準が、公平な評価の土台になります。
障害者社員に推奨するIT資格ロードマップ
スタートはITパスポートです。IT全般の基礎知識を問う国家資格で、勉強時間の目安は50〜100時間。特定の業務スキルではなく「IT全体の地図を持つ」資格として、すべての業種・職種の方に有効です。合格率は約50〜55%と取得しやすく、達成感を得やすいという点で最初の一歩として最適です。
ITパスポートの次は、志望する職域に応じて分岐します。セキュリティ担当を目指すなら情報セキュリティマネジメント試験、Office業務の専門性を示したいならMOS(Microsoft Office Specialist)、Power Platform業務を担当するならマイクロソフト公式のPL-900(Power Platform Fundamentals)が有効です。
| レベル | 資格名 | 目安勉強時間 | 取得後に担当できる業務 |
|---|---|---|---|
| 入門 | ITパスポート | 50〜100時間 | IT関連業務全般・デジタル化推進補助 |
| 基礎 | 情報セキュリティマネジメント | 80〜120時間 | セキュリティ管理担当・リスク管理補助 |
| 中級 | MOS(Excel・Word・PowerPoint) | 50〜80時間/科目 | Office業務全般・資料作成・データ整理 |
| 応用 | PL-900(Power Platform Fundamentals) | 40〜60時間 | Power Automate・Apps開発・業務自動化担当 |
企業側の支援体制:3つのポイント
企業が資格取得を支援するには、まず「勉強時間の確保」が重要です。業務時間内に週2〜3時間の学習時間を確保する、またはリモートワーク日の業務量を少し軽くして学習に充てる時間を作るなど、「業務と並行して取れる」環境を整えます。次に、受験費用の補助です。ITパスポートの受験料は7,500円、PL-900は約15,000円程度。これを全額または一部補助する制度を設けることで、取得への動機づけが高まります。合格したら社内で発表・称える文化を作ることも、定着と成長意欲の向上に効きます。
資格取得は「あったら良いもの」ではなく「キャリアを変える転換点」になります。TSUNAGU Academyでは、IT研修プログラムと並行した資格取得支援も提供しています。「次の目標が見える」環境が、定着率を高める最も効果的な投資のひとつです。
この記事は役に立ちましたか?

TSUNAGU 編集部
障害者雇用専門障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 社会保険労務士・障害者雇用コンサルタントが監修。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。