「良かれと思ってやっていた」——障害者雇用の失敗事例を聞くと、この言葉が何度も出てきます。悪意から生まれる失敗より、善意から生まれる失敗のほうが厄介です。なぜなら、自分が失敗していることに気づきにくいからです。障害者雇用の現場でよく起きる10の失敗パターンを、その「なぜ起きるか」と「どう防ぐか」とともに整理します。

失敗パターン①:業務設計なしの採用

「採用してから業務を考えよう」という順序が、最初の大きな失敗を生みます。入社後に「この人に何をやってもらえばいいか」で迷走すると、本人は「自分はここで必要とされているのか」という不安を抱え、入社3ヶ月以内の離職につながります。採用前に「誰が」「何を」「どのツールで」「週何時間担当するか」を具体的に設計してから採用活動を始めることが大原則です。

失敗パターン②:現場への説明不足

「本社から障害者を受け入れるように言われた」という空気が現場に生まれると、障害者社員は孤立します。現場のマネージャーや同僚社員に「何を担当してもらうか(具体的に)」「困ったときは誰がどう動くか」の2点を、採用前に丁寧に伝えることで、現場の不安は大幅に解消されます。「一緒に設計した」という感覚が、現場の当事者意識を生みます。

失敗パターン③〜⑤:ミスマッチ・配慮未合意・1on1なし

「なんでもやります・なんでもお任せします」という採用は、特性と業務のミスマッチを生みやすくなります。合理的配慮の内容(在宅可否・マニュアルの整備・報告方法など)を入社前に本人と書面で合意していないと、問題が起きてから初めて「どうすればいいか」を話し合うことになります。入社後6ヶ月は週次1on1が必須です。「なんとなくうまくいっていそう」という感覚的な管理は、気づいたときには限界という事態を招きます。

失敗パターン⑥〜⑧:過保護・プライバシー管理なし・支援機関連携なし

「障害があるから大変だろう」という配慮から業務を減らしすぎると、本人の成長機会とやりがいが失われます。「低い期待値」は「自分はここで期待されていない」というメッセージとして受け取られます。また、障害情報の開示範囲を明文化していない場合、本人の同意なく「あの人は〇〇の障害がある」という噂が広がるプライバシー侵害につながります。支援機関(就労移行支援事業所・ジョブコーチ)との連携は、採用後も継続することが体調悪化時の早期対応に不可欠です。

失敗パターン⑨〜⑩:評価制度の対象外・フォロー終了が早すぎる

「障害者だから評価はしなくていい」という発想は、本人の定着意欲を静かに削ります。「頑張りを認められない」という感覚は、じわじわと離職動機になります。入社後のフォローを「慣れたから終わり」と早期に打ち切るのも危険です。入社3〜6ヶ月は、仕事に慣れてきた一方で「自分はここでどうなっていくのか」という将来不安が高まる時期で、実はこの期間が最も離職リスクが高い。少なくとも入社後1年間は、定期的な1on1とフォローを継続することが重要です。

失敗パターン起きる理由防止策
①業務設計なし採用採用を急ぎすぎる採用前に業務設計を完成させる
②現場説明不足人事と現場の分断現場と一緒に業務設計する
③特性ミスマッチ「合う業務」を考えていない特性ヒアリングと試行期間を設ける
④配慮未合意「なんとかなる」という思い込み入社前に書面で合意する
⑤1on1なし「様子を見る」だけの管理週次1on1を6ヶ月継続する
⑥過保護な配慮善意の配慮のつもり本人の意向を定期的に確認する
⑦プライバシー管理なし開示ルールの不在開示範囲を書面で明確化する
⑧支援機関連携なし採用後に連携を切る定期的な三者連携を継続する
⑨評価制度の対象外「特別扱い」のつもり公平な評価制度に組み込む
⑩フォロー早期終了「慣れたから大丈夫」という判断入社後1年間はフォローを継続する

すべての失敗を防ぐために最も重要な原則は「採用前に業務設計・配慮合意・サポート体制を完成させること」「入社後6ヶ月は週次1on1を必ず実施すること」「支援機関との連携を採用後も継続すること」の3つです。TSUNAGU Academyでは、この3原則の実践を一体的にサポートします。

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TSUNAGU 編集部

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障害者雇用専門

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