「調子が悪そうだとは思っていたけど、まさか限界まで来ているとは思わなかった」——体調の悪化に気づけなかった管理職が後悔とともに話すこの言葉は、多くの現場で繰り返されています。感覚的な観察に頼る体調管理から抜け出し、データを使って「先手を打つ」体調トラッキングの設計方法を紹介します。障害者社員本人の自己管理力向上と、管理職の早期察知を同時に実現できます。

「なんとなく大丈夫そう」という観察が持つ限界

在宅勤務が当たり前になった今、管理職が部下の体調を「雰囲気」で感じ取ることはほぼ不可能になりました。オフィス勤務でも、ASD・精神障害特性を持つ方の中には「表情や態度に出にくい」人が多く、限界が来るまで「普通に見える」ケースが少なくありません。

データを使った体調トラッキングは、この問題を根本から解決します。毎朝5段階のスコアを報告するだけの簡単な仕組みが、「今週水曜から数字が下がり始めている」という変化を可視化し、早期の声かけにつながります。重要なのは「完璧なシステム」ではなく「毎日続けられるシンプルな仕組み」です。

体調トラッキングの3段階設計

最もシンプルな第1段階は、毎朝TeamsのチャットやSharePointフォームで「今日の体調スコア(1〜5)」を報告してもらうだけです。スコアの定義を事前に合意しておくことが大切です。「5:万全、4:良好、3:普通、2:少し辛い、1:かなり辛い」という基準を本人と一緒に決め、「2以下が連続したら担当者が声をかける」というルールを設けます。

第2段階では、体調スコアにその日の業務量・タスク完了数を紐づけて記録します。「体調スコアが低い日は業務完了数も落ちる」という当然のパターンが見えてくるだけでなく、「スコア3でも月曜は特に完了数が落ちる」「午後のスコアより午前のタスクを先にやると安定する」といった個人特有のパターンが3〜4週間で浮かび上がります。

第3段階では、蓄積されたデータをもとに業務設計を調整します。「水曜の午前中は集中業務を入れる」「金曜午後は軽めのルーティン業務のみ」といった個人最適化された業務スケジュールが、データなしでは作れなかった精度で設計できるようになります。

Power Automateで体調記録を自動化する

体調スコアの収集は、Power AutomateとTeamsのAdaptive Cardを組み合わせることで完全自動化できます。毎朝9時に「今日の体調スコアを教えてください」というカードがTeamsに自動送信され、社員がボタンをタップするだけで回答が送れる仕組みです。回答結果はSharePointリストに自動保存され、管理職は一覧で全員の体調スコアを確認できます。

「スコアが2以下の回答が来たら担当者にTeams通知を送る」というアラートフローを追加すれば、見落としゼロの早期察知体制が完成します。この仕組み自体を、Power Automateスキルを習得した障害者社員が構築・管理する事例も増えています。「自分がトラッキングシステムを作り、自分もそれで支援されている」という循環が、当事者意識と定着率を高めます。

  • 体調スコアの定義を本人と合意し、「2以下が連続したら声をかける」ルールを設ける
  • スコアと業務量を紐づけて記録し、3〜4週間でパターンを分析する
  • Power AutomateでTeams毎朝自動送信→SharePoint自動記録のフローを構築する
  • スコア2以下のアラート通知フローで見落としゼロの早期察知体制を整える
  • 月次で蓄積データを振り返り、業務スケジュールを個人最適化する

データドリブンな体調管理は「監視」ではなく「先手を打つパートナーシップ」です。TSUNAGU Academyでは、体調トラッキングシステムの構築を研修の実践課題として取り組むプログラムを提供しています。受講者が自分のためのツールを自分で作る——この体験が、最も深い学びになります。

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TSUNAGU 編集部

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障害者雇用専門

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