「社労士に頼めば安心」と思って契約したものの、助成金申請が漏れていた、就業規則が障害者雇用に対応していなかった——こうした失敗談は珍しくありません。社労士の専門性は多岐にわたり、「一般的な労務管理に強い」ことと「障害者雇用に強い」ことは別の話です。障害者雇用担当として、正しいパートナーを選ぶための判断基準を解説します。
「社労士ならどこでも同じ」という誤解
社会保険労務士(社労士)は幅広い分野を扱う専門家です。労働保険・社会保険の手続き、就業規則の作成・改定、給与計算、助成金申請、労使紛争対応——これだけ広い分野をカバーしているため、どの社労士も「全分野に精通している」わけではありません。
障害者雇用に関しては特に、「就労移行支援制度の仕組み」「合理的配慮の法的義務」「障害種別ごとの雇用管理の実務」「障害者雇用専用の助成金スキーム」という専門知識が必要です。これらに精通している社労士と、そうでない社労士では、実務のサポート品質に大きな差が生まれます。
障害者雇用に強い社労士を見極める5つの質問
社労士を選ぶ際、最初の面談でこの5つを確認することをおすすめします。これらへの回答の具体性と深さが、障害者雇用に関する専門性の目安になります。
第一の質問は「障害者雇用の支援実績は何社・何年ありますか?」です。「障害者雇用も対応しています」と言う社労士は多くいますが、「年間10社以上、5年以上の実績がある」という具体的な数字を持っているかどうかが重要です。第二は「就労移行支援事業所との連携経験はありますか?」。支援機関とのネットワークを持つ社労士は、採用候補者の特性理解や入社後の連携において価値を発揮します。
第三は「特定求職者雇用開発助成金と人材開発支援助成金の申請を同時に進めた経験はありますか?」。この2つを組み合わせて申請できると知っている社労士は、障害者雇用の助成金体系を本当に理解しているシグナルです。第四は「2024年4月の障害者雇用促進法改正の実務への影響を説明してもらえますか?」。最新の法改正を把握しているかどうかの確認です。第五は「就業規則に合理的配慮の条項を追加する作業をお願いしたら、対応できますか?」。多くの企業の就業規則には障害者特有の規定が入っておらず、この整備ができる社労士かどうかは重要な判断基準です。
- 1「障害者雇用の支援実績は何社・何年か」を具体的な数字で確認する
- 2就労移行支援事業所との連携・紹介ルートを持っているかを確認する
- 3主要な助成金の申請を伴走支援してくれるかを確認する
- 42024年法改正の内容を正確に把握しているかを確認する
- 5合理的配慮条項を就業規則に追加する対応ができるかを確認する
よくある委託ミス3パターンと防ぎ方
社労士との委託で起きやすい失敗は大きく3パターンです。最も多いのは「助成金の申請機会を逃す」失敗です。特に人材開発支援助成金の事前申請(訓練開始1ヶ月前)を社労士に任せているつもりで、情報連携が遅れて申請期限を過ぎてしまうケースがあります。「採用が決まったら・研修が決まったら、即日社労士に連絡する」というルールを社内で徹底することが防止策です。
二つ目は「就業規則が障害者雇用に対応していない」失敗です。一般的な社労士が提供する就業規則テンプレートには、合理的配慮・短時間勤務制度・在宅勤務・体調不良時の連絡ルール等の規定が含まれていないことが多くあります。「障害者採用を始める前に、就業規則の整備を依頼する」という順序が大切です。
三つ目は「就労移行支援との連携ができていない」失敗です。採用した社員の支援員との情報共有や、問題発生時の三者連携を円滑に進めるには、社労士自身が就労移行支援の仕組みを理解している必要があります。「支援機関とどう連携しているか」を事前に確認することが重要です。
| 失敗パターン | 原因 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 助成金申請の機会を逃す | 社労士への情報連携が遅かった | 採用・研修決定と同時に即日連絡するルールを設ける |
| 就業規則が障害者雇用に対応していない | 標準テンプレートをそのまま使用 | 採用開始前に合理的配慮条項の追加を明示的に依頼する |
| 就労移行支援との連携ができない | 社労士が就労移行支援の仕組みを知らない | 選定時に支援機関との連携実績を確認する |
障害者雇用においては「一般的な労務管理に詳しい社労士」ではなく「障害者雇用の実務に精通した社労士」との連携が、成果の差を生みます。TSUNAGU Academyでは、障害者雇用に強い社労士・就労移行支援機関・企業の三者連携モデルによるサポートを提供しています。
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TSUNAGU 編集部
障害者雇用専門障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 社会保険労務士・障害者雇用コンサルタントが監修。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。