国内EC市場は2023年に約24兆円規模に達し、コロナ禍以降も成長が続いています。この急成長の裏側で、EC・物流企業の人事担当者が直面しているのが「バックオフィス業務の人手不足」です。受発注データの入力・照合、在庫データの更新・集計、顧客問い合わせへのテンプレート返信——増え続ける定型業務に対して、人員が追いつかない。この課題と「定型的で在宅対応可能なIT業務が得意な障害者社員」の相性は、驚くほど良く合っています。
EC・物流業界で障害者活用が進む3つの理由
第一の理由は「業務が細分化・標準化しやすい」点です。EC業務の多くは「この受注が来たら→このフォーマットでこのシステムに入力する」という明確な手順で構成されています。複雑な判断を要する例外処理が少なく、「手順書を作れる」業務が多い。これが業務設計のしやすさにつながります。
第二は「在宅でほぼ完結する」点です。受発注データの処理も、在庫データの集計も、顧客対応テンプレートの管理も、すべてクラウドシステム上で完結します。精神障害・発達障害を持つ方が通勤ストレスなく自宅で安定して業務を担える環境が自然に整います。第三は「繁閑の差が大きく、スモールスタートがしやすい」点です。閑散期に入職し、少ない業務量から始めて繁忙期に向けて業務量を増やしていく計画が立てやすい。
4つの職域設計事例:業務と特性の対応関係
受発注データの入力・照合は最も基本的な職域です。EC基幹システム(ShopifyやECサイトの管理画面)とExcelを使い、受注情報の転記・在庫数との照合・発注指示の作成を担当します。「数値の正確な処理・データの一貫性確認」を得意とするASD特性の方が高いパフォーマンスを発揮します。1件でも照合ミスが顧客クレームや欠品に直結するため、「丁寧さ」への評価が自然と得られます。
在庫データの更新・集計はExcelとPower BIを使って、複数倉庫・複数商品の在庫状況をリアルタイムで把握できるダッシュボードを管理する業務です。「データが絶えず動く中で正確性を保つ」という継続的な集中が必要な業務で、データへの集中力が高いASD特性の方に向いています。慣れてくるとPower Automateで在庫アラート通知フローを構築するという発展も可能です。
| 業務 | 活用ツール | 習得期間 | 向いている特性 | 担当後の発展 |
|---|---|---|---|---|
| 受発注データ入力・照合 | Excel・EC管理システム | 1〜2ヶ月 | ASD・知的障害(数値の正確性) | 自動照合フローの構築へ |
| 在庫データ更新・集計 | Excel・Power BI | 2〜3ヶ月 | ASD(データへの集中力) | 在庫アラート自動通知フローへ |
| 顧客対応テンプレート管理 | SharePoint・Notion | 1〜2ヶ月 | 精神障害(在宅・テキスト対応) | テンプレート自動送信フローへ |
| 配送状況レポート自動化 | Power Automate・Excel | 3〜4ヶ月 | ADHD(自動化設計への関心) | レポートの完全自動化へ |
「繁忙期の戦力」になった障害者社員の事例
アパレルECの事例では、発達障害(ASD)を持つ障害者社員が受発注照合担当として入社し、半年後には繁忙期(ホリデーシーズン)の受注ピーク時に「他の誰よりも照合精度が高い」と評価される存在になりました。「ゴールデンウィーク前後の繁忙期に、受注照合のミスが例年より大幅に少なかった。絶対に確認する、絶対に飛ばさない——その姿勢が、本当に助かった」(倉庫管理責任者)。
EC・物流業界のバックオフィスは「誰かがやらなければならないけれど、誰もやりたがらない業務」の宝庫です。その業務が、特性を活かした障害者社員にとって「最も輝ける職場」になる。TSUNAGU Academyでは、EC・物流業界に特化した職域設計コンサルティングとIT研修を提供しています。業界特性に合わせた採用・育成を一緒に設計しましょう。
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TSUNAGU 編集部
障害者雇用専門障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 社会保険労務士・障害者雇用コンサルタントが監修。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。