「障害者を受け入れることで、うちの会社の何が変わりますか?」——この問いへの答えとして「法定雇用率を達成できます」「社会貢献になります」以外の答えを持っている企業はまだ少ない。でも人材サービス業のK社(従業員約200名)の代表取締役は、2年後にこう答えるようになりました。「一般社員の離職率が18%から11%になりました」と。障害者雇用をきっかけにした職場改善が、採用した5名の定着だけでなく、会社全体を変えたプロセスを振り返ります。
K社のプロフィール:人材サービス業の「普通の会社」
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業種 | 人材サービス |
| 従業員数 | 約200名 |
| 障害者雇用開始 | 2021年(精神障害2名・発達障害3名) |
| 全社離職率の変化 | 年18%→年11%(2年間で7ポイント改善) |
| 障害者社員の定着率 | 採用5名・全員2年後も在籍中(定着率100%) |
K社は人材派遣・転職支援を主事業とする創業15年の中堅企業です。「特別な体制があったわけではない。ごく普通の会社が、普通にやってみた」という代表の言葉通り、特例子会社もジョブコーチ専任担当者も最初からいませんでした。それでも2年後、誰も予想しなかった変化が全社規模で起きていました。
障害者採用が引き起こした「4つの連鎖変化」
最初に起きたのは業務マニュアルの整備です。「障害者社員が一人でも業務を進められるように」という目的でOneNoteマニュアルを作り始めたところ、一般社員からも「これがあれば引き継ぎがスムーズになる」「新入社員が自己解決できるようになった」という声が上がりました。障害者のために作ったマニュアルが、全社の知識共有インフラになりました。
次にTeamsの本格活用が広がりました。「障害者社員が口頭コミュニケーションではなくTeamsチャットで報告・相談できる環境を整えたことで、記録が残るコミュニケーションが全社に広がった。「あの件、Teams見ればわかります」という言葉が普通になった」(人事部長)。情報の透明化によって「聞いた・聞いていない」トラブルが減り、これが一般社員のストレス軽減につながりました。
- 1業務マニュアルの整備→一般社員の引き継ぎ・新人自己解決が劇的に改善した
- 2Teams活用の促進→記録が残るコミュニケーションが全社に広がり情報トラブルが減った
- 3テレワーク制度の整備→育児・介護を抱える一般社員も活用するようになった
- 41on1文化の浸透→一般社員の「言えなかった悩み」も表面化し早期解決できるようになった
一般社員の離職率が18%→11%になった本当の理由
2年間で7ポイントの離職率改善は、採用コストに換算すると数百万円規模の節約に相当します。代表はこの変化の本質をこう語ります。「障害者社員のために整えた環境が、結局「誰にとっても働きやすい職場」を作った。「業務がわかりやすく整理されている」「困ったことが言いやすい」「在宅も使える」——これらは全員が求めていたことだった。障害者雇用が、それに気づかせてくれた」。
「障害者を受け入れる「だけ」のつもりが、気づいたら全社員が働きやすい職場になっていた。これが本当のインクルージョンだと思います」——この言葉は、障害者雇用を「コスト」として捉えるすべての企業への、最も説得力のある答えです。
インクルーシブな職場づくりがもたらすリターンは「雇用率の達成」だけではありません。離職率改善・採用ブランディング向上・全社生産性向上という経営指標への影響があります。TSUNAGU Academyでは、障害者雇用を全社の「働きやすさ改革」と連動させる設計支援を提供しています。
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TSUNAGU 編集部
障害者雇用専門障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 社会保険労務士・障害者雇用コンサルタントが監修。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。