グループ会社を持つ企業の人事担当者から「どの会社の雇用率で採用するか」という相談を受けることがあります。実は、障害者雇用促進法には「グループ全体で雇用率を合算できる」制度が複数存在します。この制度を正確に理解して活用することで、グループ全体の雇用戦略を大きく最適化できます。特定子会社制度・関係子会社制度・グループ適用の違いと、それぞれの活用法を整理します。

まず押さえたい:3つのグループ算定制度

特定子会社制度とは、障害者雇用を専門に担う子会社を設立・認定し、親会社と合算して雇用率を算定できる制度です。認定要件は「親会社の議決権50%超」「障害者の比率が従業員の20%以上」「障害者の職業生活向上のための体制整備」などが求められます。大手企業の多くがこの制度を活用して特例子会社を設立していますが、近年は「分離ではなくインクルーシブに」という方向性も強まっています。

関係子会社制度は、特定子会社の認定を取得した上で、そのグループに属する複数の子会社をまとめて算定できる制度です。特定子会社を持つグループが、グループ全体での障害者雇用を一体的に管理・算定できる仕組みです。さらに、特定子会社の要件を満たさない場合でも、一定の要件を満たすことで「グループ適用」として複数社の合算算定が認められるケースがあります。

制度名対象主な要件主なメリット
特定子会社制度障害者雇用専門の子会社議決権50%超・障害者比率20%以上など親会社と合算して雇用率を算定できる
関係子会社制度特定子会社+関係会社特定子会社の認定が前提グループ複数社を一体で算定できる
グループ適用グループ各社の合算所定の要件を満たす特定子会社なしでもグループ合算できる場合あり

グループ算定の最適化:どの会社に配置するかの考え方

グループ内で障害者社員をどの会社に配置するかは、単に「雇用率が低い会社」に割り振るという発想ではなく、「その人が最も活躍できる環境がある会社」を選ぶことが長期定着のポイントです。IT/DX業務が豊富でリモートワーク制度が整った会社への集中配置が、生産性と定着率の両方を高める効果があります。

例えば、グループ内にIT子会社・事務系子会社・製造業子会社があるとします。Power Automateスキルを持つ障害者社員は、業務自動化ニーズが高いIT子会社や事務系子会社に配置するほうが、活躍機会が多く定着率も高まります。雇用率の数値合わせだけでなく「この人がどこで輝けるか」という視点でグループ内配置を考えることが、本質的なグループ戦略です。

特定子会社から「インクルーシブ雇用」へのシフト

近年のトレンドとして、特定子会社中心の「分離型」雇用から、本体採用・本体配属の「インクルーシブ型」雇用へのシフトが加速しています。ESG評価の観点から「分離型は包摂性が低い」という指摘を受けるケースが増えており、グループ全体の雇用戦略を見直す企業が増えています。特定子会社は「雇用の入口」として機能させつつ、スキルを習得した社員を本体配属に移行させるハイブリッドモデルが、今後の主流になっていく可能性があります。

グループ企業の障害者雇用最適化は、制度理解×配置戦略×スキル育成の三位一体で設計することが重要です。TSUNAGU Academyでは、グループ全体の雇用戦略設計を、制度活用から人材育成まで一貫してサポートしています。

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TSUNAGU 編集部

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障害者雇用専門

障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 社会保険労務士・障害者雇用コンサルタントが監修。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。

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