「障害者社員を支援するためのHR業務を、障害者社員自身が担う」——この逆転の発想が、静かに広がっています。採用候補者のリスト管理・面接スケジュールの調整・入社書類の収集・障害者雇用状況報告書の集計補助。これらのHR業務は、定型的で、在宅でも完結でき、ITツールと相性が良い業務ばかりです。「支援される側」から「仕組みを支える側」への転換が、当事者の自己効力感と組織の効率化を同時に実現しています。

なぜHR業務が障害者雇用の職域として適しているのか

HR業務の多くは「手順が決まっていて、データを正確に扱い、期日通りに完了させる」という特性を持ちます。採用候補者リストの更新・面接日程の調整・入社書類のチェックリスト管理——どれも「何をいつ、どのフォーマットで行うか」が明確な定型業務です。曖昧な指示や急な変更が少なく、正確性とルール遵守が得意なASD特性の方に特に向いています。

また、クラウド上でほぼすべての業務が完結するため、在宅勤務との相性が非常に良い点も魅力です。ExcelやNotionで候補者リストを管理し、Power Automateで面接リマインドを自動送信し、SharePointで書類を収集・管理する——これらはすべてオフィスに行かずに担当できます。精神障害・発達障害を持つ方が通勤ストレスなく安定して働ける環境が自然に整います。

HR職域の5つの具体的な業務と使用ツール

最初に担当しやすいのが採用候補者リストの管理・更新です。ExcelまたはNotionのデータベースで候補者情報(氏名・障害種別・スキル・選考ステータス)を管理します。「情報を最新に保つ」という定型業務であり、正確さが求められる分、得意な方には非常に向いています。次に面接スケジュールの調整とリマインド自動送信です。Microsoft OutlookとPower Automateを組み合わせて、「面接日の前日にリマインドメールを自動送信する」フローを管理します。フローを一度構築すれば、その後は監視と異常報告だけで済みます。

  • 1採用候補者リストの管理・更新(Excel・Notionのデータベースで一元管理)
  • 2面接スケジュール調整とリマインド自動送信(Outlook・Power Automate活用)
  • 3入社書類の収集チェックリスト管理(SharePointのファイル収集フォームを運用)
  • 4障害者雇用状況報告書のデータ収集・集計補助(6月1日基準の集計作業)
  • 5社内研修の受講記録・修了証管理(Excelまたはデータベースで追跡管理)

「支援する側に回った」当事者の変化

実際にHR業務担当になった障害者社員の多くが語るのが「自分が誰かの役に立っている実感」です。「入社書類の収集を担当するようになってから、新入社員から「ありがとうございます」と言われることが増えた。自分がHR担当だから言ってもらえる言葉で、最初は驚いた」という声があります。

「自分も以前は支援事業所で書類を用意する側でした。今は逆に、新しく入ってくる人たちのための書類を管理する側になった。同じ目線を持てるから、「この書類がわかりにくかったら、こう説明すれば伝わるかもしれない」という視点が自然に生まれます」——当事者だからこそ持てる視点が、HR業務の質を高める事例も出てきています。

HR業務担当の障害者社員は「自分が学んだ場を、自分が支える側に回る」という循環の体現者です。TSUNAGU Academyでは、HR業務に活かせるExcel・Power Automate・SharePointの研修と、HR職域設計のコンサルティングを提供しています。

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TSUNAGU 編集部

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障害者雇用専門

障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 社会保険労務士・障害者雇用コンサルタントが監修。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。

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