「どうせ長続きしないだろう」——TSUNAGU Academyに入学したとき、中川さん(仮名・32歳)は自分に対してそう思っていたと言います。双極性障害を持つ彼は、過去に何度も「调子の良いときに始めて、体調の波に飲まれて途中でやめる」というサイクルを繰り返してきました。しかし、受発注データの自動化フローを完成させ、社内業務効率化コンテストで最優秀賞を受賞したとき、その認識は完全に変わりました。体調の波は「設計」できると、自分で証明したからです。
中川さんのプロフィール:波のある生活から学んだこと
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 障害種別 | 双極性障害(精神障害者保健福祉手帳2級) |
| 年齢 | 32歳 |
| 受講コース | Power Automate上級コース(5ヶ月) |
| 現在の役割 | 業務改善担当 |
| 受賞 | 社内業務効率化コンテスト 最優秀賞 |
双極性障害は「躁状態(活動的・高揚・睡眠が少なくても動ける)」と「鬱状態(意欲低下・集中困難・消耗感)」が繰り返す疾患です。躁期は「何でもできる気がして無理をしすぎる」、鬱期は「何もできない」という極端な波があります。中川さんの場合、躁期は週5日フルで取り組め、鬱期は1日2時間が限界という差がありました。
転換点:「体調の波を記録する」という発想
「最初は「波があるから無理」と思っていました。でも担当の講師から「まず自分の体調パターンを記録してみよう」と言われて、Excelに毎日スコアをつけ始めた。そうしたら4週間後に「火曜と水曜は比較的安定している」「鬱期でも午前中の2時間は動ける」というパターンが見えてきたんです」。
このデータが、学習設計の土台になりました。「集中が必要なフロー設計の作業は火曜・水曜の午前に集中させる」「月曜・木曜は動画教材の視聴やテキスト読み込みなど軽めの作業にする」「鬱期の日は2時間で切り上げる、翌日無理に取り返さない」という個人最適化されたスケジュールが生まれました。「波に飲まれるのではなく、波に乗るスケジュールを作る——この発想の転換が、5ヶ月間続けられた理由だと思います」。
受発注データ自動化フロー:50時間の作業をゼロに
研修の最終課題として作成したのが、受発注データの照合・転記を全自動化するPower Automateフローです。それまで月に50時間かかっていた作業——受注メールから品名・数量・納期を読み取り、Excelシートに転記し、発注担当者にデータを送る——をAI Builder(OCR)とPower Automateの組み合わせで完全自動化しました。
フローの精度が安定するまでに2週間の調整が必要でしたが、「エラーが出るたびに原因を探し、修正する」というデバッグ作業が「パズルを解く感覚で楽しかった」と中川さんは話します。「鬱期でも、デバッグ作業は「一つ直せた」という達成感があって、むしろモチベーションを保てた。波がある中でも続けられる理由のひとつになりました」。
最優秀賞の日に感じたこと
社内業務効率化コンテストで最優秀賞を受賞した日のことを、中川さんはこう振り返ります。「正直、受賞できるとは思っていなかった。発表されたとき、「自分がここにいていいんだ」という感覚が初めて生まれた。双極性障害があっても、会社に貢献できる。それが数字で証明された。この感覚は、どんな治療よりも自分を回復させる力があったと思います」。
- 1体調の波を4週間記録して「安定している時間帯・曜日」のパターンを把握した
- 2パターンに合わせて学習スケジュールを個人最適化した(重作業は安定日・軽作業は波のある日)
- 3「鬱期でも2時間は動ける」という事実を記録から見つけ、「ゼロか100か」の発想を変えた
- 4成果物(受発注自動化フロー)が「会社に貢献できた証拠」になり、自己効力感が回復した
「体調の波があっても、設計次第でパフォーマンスは安定する」——この言葉は、双極性障害を持つすべての方への、中川さんからのメッセージです。TSUNAGU Academyでは、体調の波を前提にした個人最適化の学習設計を大切にしています。「どうせ続かない」を「続けられた」に変える伴走をします。
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TSUNAGU 編集部
障害者雇用専門障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 社会保険労務士・障害者雇用コンサルタントが監修。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。