法定雇用率を達成できていない企業が最初に感じる焦りは、「採用しなければ」というものです。しかし、採用はあくまで手段の一つです。自社の状況によっては、採用以外のアプローチが近道になる場合もあります。今すぐ取れる5つの選択肢を、それぞれの特徴・向いている企業・注意点とともに整理します。

「採用しかない」という思い込みを外すところから

雇用率未達企業の人事担当者が陥りやすい思考パターンは、「採用数を増やすしか方法はない」というものです。しかし実際には、5つの選択肢があり、企業の規模・現状・業務形態によって最も効果的なアプローチは異なります。大切なのは、自社の状況を正確に把握したうえで、最も現実的かつ持続可能な手段を選ぶことです。

「まず動く」ことも大切ですが、方向性を間違えると「採用したのに定着しない→また採用→また離職」という消耗サイクルに入ってしまいます。自社に合った戦略を選ぶ投資は、結果的に最も効率的な時間の使い方になります。

選択肢1:IT研修修了者のスキル先行採用

最も即効性が高い選択肢は、すでにPower Platform等のITスキルを習得した障害者を採用する「スキル先行採用」です。「採用してから研修」という従来のアプローチとは逆に、「研修済みの人材を採用する」ことで、入社直後から業務貢献が期待できます。

この選択肢が最も向いているのは、「業務設計はできているが、採用に時間がかかっている」企業です。TSUNAGU Academyでは、研修修了者と企業のマッチング支援も行っており、スキルと業務の適合を確認したうえで採用プロセスに入ることができます。

選択肢2:就労移行支援事業所との連携と実習受け入れ

障害者採用が初めての企業にとって、最もミスマッチリスクが低い選択肢が「就労移行支援事業所との連携と実習受け入れ」です。支援員が候補者の特性を熟知しており、企業側の業務内容と照らし合わせて適切な人材を紹介してくれます。実習を通じて「実際に一緒に働く」時間を確保することで、採用後の「思っていたのと違った」を防げます。

採用リードタイムは長くなりますが、採用後の定着率が高く、長期的にみると最も効率的なアプローチです。「急いで採用して離職された」という経験がある企業は、このアプローチに切り替えることを強くおすすめします。

選択肢3〜5:特例子会社・在宅雇用・既存社員の障害開示促進

従業員1,000人以上の大企業やグループ企業には、特例子会社の設立という選択肢があります。グループ全体の雇用率に算定できるため、障害者雇用に特化した環境を集約して整備できます。初期投資は大きいですが、長期的な視点では安定した雇用管理が実現できます。

精神障害者の在宅雇用は、定着率の観点から最もコストパフォーマンスの高い選択肢の一つです。通勤ストレスを排除することで、職場ではパフォーマンスを発揮できなかった方が在宅では安定した生産性を維持できることがあります。既存社員の障害開示促進は「追加採用なしで雇用率を改善する」という観点から検討する価値があります。未診断のまま働いている社員がいる企業では、開示しやすい環境整備が雇用率向上に直結することがあります。

選択肢向いている企業期待できる効果注意点
IT研修修了者の採用業務設計が明確な企業入社直後から業務貢献スキルと業務のすり合わせが必要
就労移行連携・実習採用初めての障害者採用企業定着率が高い採用リードタイムが長い
特例子会社の設立大企業・グループ企業グループ全体で算定可初期投資が大きい
精神障害者の在宅雇用テレワーク環境がある企業定着率が大幅に向上在宅設計の整備が必要
既存社員の障害開示促進未開示社員がいる可能性のある企業追加採用なしで率向上開示しやすい環境整備が先決

組み合わせ戦略で確実な達成を目指す

1〜2名の不足であれば単一の選択肢で対応できますが、大きな不足がある場合は複数の選択肢を組み合わせる戦略が現実的です。「在宅雇用で精神障害者を2名採用しながら、就労移行支援事業所との連携でパイプラインをつくる」「既存社員の開示促進と並行してスキル先行採用を進める」——組み合わせることで、速度と質を両立した雇用率改善が実現します。

最も大切なのは「動き始めること」です。完璧な計画を待っているうちに、2026年7月の法定雇用率2.7%引き上げは近づいてきます。「まずこの選択肢から試してみよう」という最初の一歩が、確実な達成への道を開きます。

TSUNAGU Academyでは、貴社の現状(雇用率・業務設計状況・採用経験)を診断したうえで、5つの選択肢のどの組み合わせが最も効果的かをご提案しています。「何から始めれば良いかわからない」という段階からご相談ください。

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TSUNAGU 編集部

TSUNAGU 編集部

障害者雇用専門

障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 社会保険労務士・障害者雇用コンサルタントが監修。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。

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2022年〜連載中
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