「入社して3ヶ月で消耗してしまった」——精神障害・発達障害を持つ方の離職事例を聞くと、このパターンが驚くほど多く出てきます。原因は能力不足ではありません。最初から8時間・週40時間のフル稼働を求めたことによる、慢性的な過負荷です。週20時間のスモールスタートから始め、安定を確認しながら時間を増やしていく。このステップアップモデルが、精神障害・発達障害を持つ方の長期定着を実現する最も実績のあるアプローチです。
なぜ「スモールスタート」が長期定着につながるのか
精神障害・発達障害を持つ方の多くは、「頑張りすぎる」という傾向を持ちます。入社直後は「期待に応えなければ」という気持ちから無理をしやすく、結果として3〜6ヶ月で体調を崩します。本人も「もっとできるはずなのに」という焦りを抱えながら、どんどん無理を重ねていくケースが多い。
週20時間からのスタートは、この「頑張りすぎ」の連鎖を止めます。少ない時間で業務を完遂する体験を積み、「この量なら安定してできる」という自信の基盤を作ってから次のステップへ進む。このプロセスが、1年後・2年後の安定した活躍につながります。また、「週20時間で雇用する」ことは、精神障害者の短時間雇用特例カウントの対象となり、1名で1.0の雇用率カウントが得られるという企業側のメリットもあります。
週20時間でできる業務:具体的な設計例
「週20時間って何ができるの?」という疑問は当然です。1日4時間・週5日という計算で、実は多くのバックオフィス業務を担当できます。データ入力・整理は1日2〜3時間でも十分な量をこなせます。ExcelレポートのチェックとSharePointへの保存は、慣れれば1〜2時間で完了する定型業務です。
- 1データ入力・整理・照合(1日2〜3時間×週5日で一定量を処理可能)
- 2ExcelレポートのチェックとSharePointへの保存・アーカイブ
- 3メール一次対応(テンプレートを使ったルーティン返信)
- 4Power Automateフローの実行状況モニタリングと異常報告
- 5チームへの日次・週次業務進捗報告(Teams投稿)
1年かけて積み上げる:ステップアップモデル
入社から1年間は「急がず、でも確実に」というペースが大切です。最初の3ヶ月は週20時間・定型業務のみで、「安定して出勤・稼働できているか」だけを評価します。「業務量が少なすぎる」という懸念は理解できますが、この安定期が次のステップへの土台になります。
4〜6ヶ月目に週25時間へ増やし、定型業務に加えて新しい業務を1つ追加します。ここで「新しいことを学べる」という成長体験が生まれ、仕事へのエンゲージメントが高まります。7〜12ヶ月で週30時間・複数業務を並行してこなせる状態に到達し、1年以降はフル稼働と後輩指導も視野に入ってきます。
| 時期 | 勤務時間 | 業務量 | 評価ポイント | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 入社〜3ヶ月 | 週20時間 | 定型業務のみ | 安定した稼働継続 | 増やすよりも安定を優先 |
| 4〜6ヶ月 | 週25時間 | 定型業務+新業務1つ | 新業務への適応状況 | 本人の意向を確認してから増やす |
| 7〜12ヶ月 | 週30時間 | 複数業務を並行 | 自走化・自己解決率 | 無理に引き上げず本人主体で |
| 1年以降 | 週35〜40時間 | フル稼働 | 後輩指導も視野に | 常に体調スコアをモニタリング |
スモールスタートは「低い期待値」ではなく「長期で活躍するための設計」です。TSUNAGU Academyでは、週20時間から始める段階的なIT研修プログラムを提供しています。本人のペースに合わせながら、1年後の「戦力化」を一緒に設計しましょう。
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TSUNAGU 編集部
障害者雇用専門障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 社会保険労務士・障害者雇用コンサルタントが監修。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。