「同時に複数のことをこなしながら仕事するのが当然」——多くの職場でそう信じられています。でも、発達障害・精神障害を持つ方にとって、マルチタスクは単なる「苦手なこと」ではなく、毎日の消耗源です。切り替えのたびに大きなエネルギーを使い、注意が分散し、やがて疲弊していく。業務をシングルタスクに分解して設計し直すだけで、生産性も定着率も劇的に変わります。

そもそも「マルチタスク」は誰にとっても非効率

認知科学の研究では、脳は本来「真の並列処理」ができないことがわかっています。「マルチタスクが得意」と感じる人の多くは、タスク切り替えを素早くやっているだけで、切り替えのたびに認知コストが発生しています。発達障害・精神障害を持つ方はこの切り替えコストが特に大きく、マルチタスク環境に置かれると本来の能力の半分も発揮できないケースがあります。シングルタスク設計は「特別な配慮」ではなく、すべての人にとっての生産性向上策でもあります。

特性別:なぜマルチタスクが苦手なのか

ASDの方は「切り替えのコスト」が非常に大きい特性を持ちます。ひとつの業務に集中しているときに「ちょっとこれもやって」と割り込まれると、集中状態を再構築するまでに20〜30分かかることがあります。ADHDの方は注意のコントロールが困難で、複数のタスクが目の前にあると優先順位の判断に多くのエネルギーを使い、結果的に何も進まない悪循環に陥りやすい。精神障害(うつ)の方は認知機能の低下が起きているため、並列処理そのものが困難になっていることがあります。

特性マルチタスクが苦手な主な理由有効な対応
ASD切り替えコストが大きい・一貫性を好む1日1〜2タスクに絞る・割り込み禁止タイムを設ける
ADHD注意のコントロールが困難・優先順位判断に消耗タスク切り替えのタイミングを明示的に設定する
精神障害(うつ)認知機能低下で並列処理が困難余裕あるスケジュールで1タスクずつ進める
DCD複数の認知リソース同時使用が困難作業環境を整えてから次タスクに移る

シングルタスク化:今日から使える4つの設計方法

最もシンプルな方法は「今日やること1〜3件リスト」を毎朝作ることです。PlannerやNotionで「今日のタスク」を朝に絞り込み、それ以外は原則対応しないというルールを明示します。メール確認・返信の時間を「午前10時と午後3時の2回だけ」に固定することで、集中時間を守ります。割り込み作業が発生したときは「今日ではなく、明日のリストに追加する」というルールで今日の集中を守ります。

  • 1朝に「今日やること1〜3件」をPlannerまたはNotionでリスト化し、それ以外は原則対応しない
  • 2メール確認・返信は「午前10時と午後3時」の2回に固定する
  • 3割り込み作業は「明日のリスト」に追加して今日は手をつけない
  • 4タスク管理ツールで「未着手→進行中→完了」の状態を見える化する

シングルタスク設計は「その人のための特別ルール」ではなく、チーム全員の生産性を高める職場設計です。TSUNAGU Academyでは、シングルタスク設計に対応した業務マニュアルとタスク管理ツールの整備支援も行っています。「集中できる環境」は作れます。

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TSUNAGU 編集部

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障害者雇用専門

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