「よかれと思って聞いた質問が、実は差別禁止規定に抵触していた」——障害者採用の面接で、これが起きています。悪意はない。むしろ「配慮したい」という気持ちから出た言葉が、法的リスクになる。採用担当者が知らずにやってしまいがちな10のNG行動を、「なぜNGなのか」という理由とともに解説します。善意の落とし穴を知ることが、法的に適切な採用プロセスの第一歩です。

NG①〜③:医療・服薬情報の詮索

「どんな薬を飲んでいますか?」「通院は週何回ですか?」「入院したことはありますか?」——これらはすべて、採用判断に使ってはいけない医療情報の詮索にあたります。服薬内容・通院頻度・治療歴は、業務遂行能力の判断に直接関係しない個人の医療情報であり、採用選考で収集することは差別禁止規定に抵触する可能性があります。

同様に「障害の程度は軽いですか?重いですか?」という質問も不適切です。手帳の等級は確認できますが、「程度の軽重」を採用判断の基準にすることは、障害の程度による不当差別にあたります。「この業務を担当できるか」という機能的な適性確認に絞ることが正しいアプローチです。

NG④〜⑥:低い期待値・欠勤前提・プライベートへの立入

「一般社員より期待値は低くていいですよ」という発言は、善意の配慮のつもりでも「この人には期待しない」というメッセージとして受け取られ、入社前から意欲を削ぐ差別的発言です。「体調が悪い日は無理せず休んでください」は業務上の配慮として適切ですが、「体調が悪くてよく休む前提で採用します」という文脈で言うと、欠勤を前提とした不当な扱いとも受け取られます。

「家族のサポートはありますか?同居の家族はいますか?」という質問は、業務遂行能力の確認ではなくプライベートへの過度な立入です。「緊急時の連絡先」は入社後に聞くことで十分であり、採用選考での質問は不要です。

NG⑦〜⑩:退職理由の詮索・偏見発言・配慮の拒否

「前の職場を辞めたのは障害が原因ですか?」という質問は、退職理由と障害を直結させる不適切な聞き方です。退職理由を聞くこと自体は許容されますが、「障害のせいで辞めたのか」という聞き方は障害への偏見を含みます。「この障害なら問題ないでしょう」「この障害は軽いから大丈夫」といった発言も、特定障害への偏見を示す発言として不適切です。

「できないことを先に全部教えてください」は、業務適性の確認ではなくハンデの列挙を求めるもので不当です。そして「うちは健常者と全く同じ扱いをします」という発言は、合理的配慮を提供しないことの宣言にあたる可能性があり、2024年改正で義務化された合理的配慮提供義務に反します。

NGパターン問題の本質正しいアプローチ
服薬内容・通院頻度を聞く医療情報の不当な収集業務遂行に必要な情報のみ確認
障害の程度を聞く程度による不当差別機能的な適性のみ確認
期待値が低いと伝える差別的な低評価の明示同等の期待値で入社してもらう
家族サポートを聞くプライベートへの過度な立入入社後に緊急連絡先として確認
「健常者と同じ扱い」発言合理的配慮提供義務の拒否合理的配慮の内容を面接で確認・合意する

法的に適切な採用面接は、「何を聞かないか」を知ることから始まります。TSUNAGU Academyでは、採用担当者向けの「障害者採用面接実務研修」を提供しています。法的リスクを避けながら、本当に必要な情報を適切に収集する面接設計を一緒に作りましょう。

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TSUNAGU 編集部

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障害者雇用専門

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