「今年こそ報告書でミスをしてしまった」——毎年7月になると、障害者雇用状況報告書の記載誤りを後から気づいて慌てる人事担当者が後を絶ちません。「精神障害者の特例カウントを忘れた」「重度障害者のダブルカウントを1.0で出した」という小さな見落としが、雇用率を0.1〜0.2ポイント過少申告するミスにつながります。毎年6月1日基準で7月15日までに提出する報告書を、今年こそ正確に仕上げるための実務ガイドです。

障害者雇用状況報告書とは:提出義務の基本

常用雇用労働者数が100人を超える事業主は、毎年6月1日時点の障害者雇用状況を、7月15日までにハローワークへ報告する義務があります。報告書の内容は「何人の障害者を雇用しているか」だけでなく、「各障害者のカウント数・勤務時間区分・障害種別」を正確に記載する必要があります。

提出漏れや虚偽報告は行政指導の対象となります。また、報告書の数値をもとに雇用率が計算され、法定雇用率を下回っている場合は納付金の算定や行政指導・社名公表へとつながります。「知らなかった」では済まない書類です。

作業の流れ:5月末から始める報告書準備

6月1日基準の報告書を7月15日までに提出するには、5月末から準備を始めることが理想です。まず「6月1日時点で常用雇用している全社員リスト」を人事システムから抽出します。次に、そのリストの中から障害者手帳を保有している社員を特定し、手帳の種類(身体・知的・精神)・等級・勤務時間区分(週30時間以上/週20〜30時間)を確認します。

この情報が揃ったら、カウント数の計算に移ります。単純に「人数=カウント数」ではない点に注意が必要です。重度障害者は1名で2.0カウント、精神障害者(週20〜30時間)は2024年度も1.0カウントの特例が適用されます。これらを正確に反映してから雇用率を試算し、法定雇用率と比較します。

  • 5月末:6月1日時点の全常用雇用社員リストを抽出する
  • 6月1日:障害者手帳の保有・種別・等級・勤務時間区分を確認する
  • 6月中旬:重度カウント・特例カウントを反映した雇用率試算を行う
  • 6月下旬:除外率の適用業種・適用率を確認して再計算する
  • 7月上旬:ハローワーク提出用の報告書を作成・内部確認する
  • 7月15日:ハローワークへ提出(電子申請または窓口)

毎年繰り返される3つの記載ミス

最も多いのが「精神障害者の特例カウントを忘れる」ミスです。精神障害者が週20〜30時間の短時間勤務をしている場合、通常なら0.5カウントのところ、特例として1.0カウントが認められています(2026年度末までの暫定措置)。この特例を見落とすと、カウント数が0.5低く計算されます。

次が「重度障害者のダブルカウントを忘れる」ミスです。身体障害者手帳1〜2級・療育手帳A判定・精神障害者保健福祉手帳1級の方は、1名で2.0カウントになります。さらに、週20〜30時間の短時間勤務の重度障害者は1.0カウントになるため、勤務時間区分との組み合わせを正確に確認する必要があります。3番目は「派遣社員を自社カウントに入れてしまう」ミスです。派遣社員は原則として派遣元でカウントするため、自社でのカウントには含めません。

ミスの種類正しい扱い影響
精神障害者の特例カウント忘れ週20〜30時間勤務は1.0カウント(暫定)カウントが0.5過少になる
重度障害者のダブルカウント漏れ週30時間以上は2.0カウントカウントが1.0過少になる
派遣社員の自社カウント混入派遣社員は派遣元でカウントが原則雇用率が過大申告になる

報告書のミスは「意図的な虚偽報告」ではなくても、行政指導の対象になり得ます。TSUNAGU Academyでは、障害者雇用状況報告書の作成支援と事前チェックも提供しています。初めての提出でも、毎年ミスが気になる場合でも、お気軽にご相談ください。

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TSUNAGU 編集部

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障害者雇用専門

障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 社会保険労務士・障害者雇用コンサルタントが監修。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。

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