「データ入力が多すぎて疲弊している」「ミスが多くて困っている」——障害者社員がこう感じているとしたら、それは本人の問題ではなく業務設計の問題かもしれません。OCRとAI Builder・Power Automateを組み合わせると、手作業でこなしていたデータ入力の大部分を自動化でき、担当者は「確認・修正・判断」という付加価値の高い業務に集中できるようになります。生産性3倍を実現した自動化設計を解説します。
「自動化すべき理由」——データ入力業務が持つ構造的な問題
データ入力業務は、障害者社員が最初に担当するケースが多い業務の一つです。単純で手順が明確、在宅でもできる——確かにこれらの条件を満たしています。しかし長期的に見ると、量が多く単調なデータ入力は、精神的な疲弊とミスの蓄積を生みやすいという構造的な問題があります。
特に精神障害・ADHD特性を持つ方は、長時間の反復作業で集中力が低下すると、エラー率が急激に上がることがあります。「もっと正確にやらなければ」というプレッシャーがストレスになり、体調悪化につながるケースも珍しくありません。この問題を解決するアプローチは「もっと頑張る」ではなく「自動化して負荷を下げる」ことです。
3段階自動化の仕組み——紙からSharePointまでをつなぐ
自動化の設計は「入力前」「処理中」「書き込み後」の3段階で考えます。最初のステップは、紙やPDFで届くデータをデジタルに変換することです。ここで力を発揮するのがAI Builder(Forms Processing)です。請求書・発注書・申込書などの定型書類をカメラやスキャナで読み取るだけで、必要なフィールド(金額・日付・会社名など)を自動で抽出します。手入力と比べてエラー率が大幅に低く、処理速度も格段に速くなります。
次のステップは、抽出したデータをPower Automateで整形・検証します。「金額フィールドに数字以外が入っていないか」「日付フォーマットが統一されているか」「必須フィールドが空欄になっていないか」——こうしたバリデーション(入力値チェック)を自動で行うフローを組むことで、誤ったデータが後工程に流れるリスクを防ぎます。
最後のステップは、整形・検証済みのデータをSharePointリストやExcelに自動書き込みします。担当者がやることは「AI Builderが読み取った結果をざっと確認して承認する」だけになります。この「人間は確認と判断に集中する」という役割分担が、障害者社員の業務負荷を適切なレベルに保ちながら、処理量を大幅に増やす設計の核心です。
実際の導入事例——処理件数3倍・エラー率83%削減
ある物流企業では、精神障害のある社員が担当していた納品書データ入力業務にこの3段階自動化を導入しました。導入前は1日200件の処理が限界で、エラー率も約3%ありました。AI BuilderとPower Automateを組み合わせた後、同じ社員が確認業務に集中することで1日600件の処理が可能になり、エラー率は0.5%以下に低下しました。
| 指標 | 導入前(手作業) | 導入後(自動化) | 改善率 |
|---|---|---|---|
| 1日の処理件数 | 約200件 | 約600件 | 3倍 |
| エラー率 | 約3% | 約0.5%未満 | 83%削減 |
| 1件あたり処理時間 | 約90秒 | 約30秒 | 67%削減 |
| 担当者の疲弊感(主観評価) | 「毎日ぐったりする」 | 「余力が生まれた」 | 大幅改善 |
担当者本人は「手入力しているときは「ミスしてはいけない」というプレッシャーが常にあった。今は「確認する」だけなので、気持ちの余裕が全然違う。むしろ「次は何を自動化できるか」を考えるのが楽しくなった」と話します。業務の性質が「消耗する仕事」から「改善を提案する仕事」に変わった瞬間です。
導入のための準備——3つの確認ポイント
自動化導入を始める前に確認すべきポイントが3つあります。まず「対象書類の定型度」です。AI Builderは定型書類(フォーマットが統一されている書類)の認識精度が高く、フリーフォーマットの書類には向きません。請求書・発注書・申込書などは自動化に適した代表例です。
次に「Microsoft 365のプランにAI Builder(Power Automate Premium)が含まれているか」の確認です。追加ライセンスが必要な場合もあるため、IT部門に確認しておきましょう。最後に「担当者のPower Automateの習得状況」です。基礎フローが組めるレベルがあれば、この3段階自動化は十分に実装できます。TSUNAGU Academyの研修でそのレベルまで習得している受講者は多くいます。
データ入力の自動化は「障害者社員を楽にする」だけでなく、「組織全体の処理能力を高める」投資です。TSUNAGU AcademyではOCR・AI Builder・Power Automateを組み合わせた業務自動化を研修の中で実際に設計・構築するプロジェクト型研修を提供しています。
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TSUNAGU 編集部
障害者雇用専門障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 社会保険労務士・障害者雇用コンサルタントが監修。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。