「自分は飽き性で、何をやっても続かない」——ADHDと診断されてからずっとそう思っていたという27歳の田中さん(仮名)。しかしVBAでExcelマクロを書き始めた日、気づいたら4時間が経過していました。疲れどころか、もっと続けたいと感じていた。この体験が、「自分は「向いていることには誰よりも没頭できる」という強みを持っている」という気づきのターニングポイントになりました。

ADHDと診断されてから、ずっと探していたもの

田中さんがADHDの診断を受けたのは大学3年生のとき。「それまで「なぜ自分はこんなに集中できないのか」と悩み続けていた謎が解けた気がしました。でも同時に「じゃあ自分には向いている仕事なんてあるのか」という不安も生まれた」と振り返ります。

就職活動では複数の会社に入社するも、単調な事務作業や長期間のルーティン業務で集中力が続かず、短期離職を繰り返しました。就労移行支援事業所に通い始め、TSUNAGU AcademyのExcel VBA研修を紹介されたのは、そんな時期のことでした。「「プログラミング」という言葉に最初は「自分には難しそう」と思いましたが、「まず2週間試してみよう」と担当者に背中を押されました」。

「過集中」が初めて武器になった日

VBA研修が始まって3日目のことです。「For文でループを組んで、100行のデータを自動処理するマクロが完成した瞬間、気づいたら4時間経っていた。でも全然疲れていなくて、むしろもっとやりたかった。あのとき初めて「自分が集中できる何か」を見つけた気がしました」。

以前の業務では30分で集中が切れていたのに、マクロ開発では何時間でも続けられる。「エラーが出るとむしろテンションが上がる。「なぜ動かないんだろう」という謎解きが楽しくて仕方ない」と田中さんは話します。この「問題解決への過集中」は、プログラミング開発において最高の資質の一つです。担当の支援員が「ADHDの過集中って、こういうときに爆発するんですね」と驚いていたほどでした。

研修中に見つけた「自分だけの学習法」

研修期間中、田中さんはいくつかの工夫を自分で編み出しました。一つはポモドーロ法の応用です。「25分集中・5分休憩の基本ルールより、自分は15分集中・3分休憩のほうが集中の波に合っていた。自分のリズムで設定するのが大事でした」。

もう一つは「自分の言葉でメモする」という習慣です。ADHDの特性としてワーキングメモリ(作業記憶)が弱く、聞いたことをすぐ忘れる傾向があります。「学んだことを、その日のうちに「自分の言葉で」手書きのノートに書き直す。これをするとしないとでは、翌週の定着度が全然違った」と田中さんは話します。

対面での質問が苦手だった田中さんにとって、TeamsとチャットベースのQ&A対応が充実していたことも大きかった。「「また聞いてしまう」という申し訳なさを感じずに、何度でも聞き直せた。それが研修を最後まで続けられた理由の一つです」。

入社後の活躍——業務改善推進担当へ

研修修了後、現在の会社に採用された田中さんは、入社6ヶ月でExcelマクロを使った業務効率化プロジェクトを5件完了しました。「経理部が毎月2日かけて手作業でやっていた照合作業を、マクロで2時間に短縮した」「営業チームの週次報告書を全自動生成するようにした」——どれも、以前は「誰かがやるべきだけど、手が回っていない」業務でした。

現在は社内の業務改善推進担当として、新たにVBAを学びたい社員への研修講師も担当しています。「自分と同じように「集中できない」と悩んでいる人に「プログラミングは向いているかもしれないよ」と伝えることが、今一番やりがいを感じる仕事です。ADHDが武器になる業務は、絶対にある」——この言葉が、ニューロダイバース採用の可能性を最もシンプルに示しています。

「飽き性」「集中できない」というADHDのレッテルは、適切な業務との出会いで「過集中という武器」に変わります。TSUNAGU AcademyではADHDの特性を活かすIT研修プログラムを提供しており、田中さんのような変化を体験している受講者が多数います。「特性が強みになる」体験を、一緒につくりましょう。

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TSUNAGU 編集部

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