「知的障害があるから、パソコン業務は難しいだろう」——この思い込みが、多くの可能性を潰してきました。特別支援学校を卒業した22歳の田村さん(仮名)は、入社時にExcelをほとんど使ったことがありませんでした。しかし丁寧な業務設計と反復学習、そして毎日の「小さな承認」が重なり、6ヶ月後には後輩にExcelを教える立場になっていました。「できることが増えるたびに嬉しかった」という言葉が、このプロセスのすべてを語っています。

田村さんのプロフィールと入社の経緯

田村さんは療育手帳B判定(軽度知的障害)を持つ22歳。特別支援学校卒業後、就労移行支援事業所で2年間のプログラムを経て、現在の会社に採用されました。就労移行支援事業所での実習期間に「数字を扱うことが好き」「手順が決まっていることは正確にできる」という適性が確認されており、データ管理業務への配属が最初から設計されていました。

項目内容
障害種別知的障害(療育手帳B判定)
年齢22歳
入社経緯特別支援学校卒業後、就労移行支援事業所を経て採用
受講コースExcel実務コース(6ヶ月)
現在の役割データ管理担当・月次集計専任
入社2年後後輩2名へのExcel指導担当も兼務

最初の1ヶ月:「できた」を1つ積み上げることから

入社直後の業務は、既存のExcelシートに決まった列のデータを入力するという、非常にシンプルな作業でした。担当上司は毎日、業務終了前に5分間、「今日はどうだった?」と声をかけることを習慣にしました。「今日も正確に入力できていたよ」「このデータ、昨日より速くできたね」という具体的な言葉が、毎日田村さんに届きました。

「最初は、毎日同じことを繰り返すのが正直少し退屈に感じることもあった。でも、「今日も正確にできたね」と毎日声をかけてもらえることが、本当に嬉しかった。「自分は正確にできている」という感覚が、少しずつ自信になっていきました」と田村さんは振り返ります。

3ヶ月後:手順が「体に染み込む」瞬間

入社から3ヶ月が経つ頃、業務の手順がマニュアルを見なくてもできるようになりました。「あ、今日はマニュアルを開かずに最後まで終わった」という瞬間があり、上司にその話をしたところ「それが「手順が体に染み込んだ」ということだよ」と教えてもらいました。「その言葉が、すごく嬉しかった。自分でも「成長した」って感じられた」。

失敗したときも、上司が「なぜそうなったか一緒に考えよう」という姿勢で向き合ってくれたことが、田村さんの恐怖心を取り除きました。「ミスを叱られるのではなく、「次はこうしよう」と一緒に考えてもらえた。だからミスが怖くなかった。むしろ「次こそ正確にやろう」という気持ちになれた」。

6ヶ月後:「先生」になっていた

入社から6ヶ月後、新しく入社した後輩社員にExcelの基本操作を教える役割が田村さんに回ってきました。「まさか自分が人に教える立場になるとは思っていなかった。でも、「こうするんだよ」と教えながら、「自分はこんなことを知っているんだ」という発見があって、また嬉しかった」。後輩指導を経験したことで、「自分が教わったことで成長した、次は自分が誰かを成長させる番だ」という意識が芽生えました。

「できることが増えるたびに嬉しかった。今は後輩に教える立場になって、自分でも驚いています」——この言葉が、丁寧な業務設計と反復学習、そして毎日の承認が生み出した成長の証です。TSUNAGU Academyでは、知的障害を持つ方の段階的なスキル習得を支援する実務研修を提供しています。

この記事は役に立ちましたか?

TSUNAGU 編集部

TSUNAGU 編集部

障害者雇用専門

障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 社会保険労務士・障害者雇用コンサルタントが監修。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。

記事 92本
2022年〜連載中
TSUNAGU