「中小企業には障害者雇用は難しい」という思い込みが、まだ根強く残っています。でも実際には、中小企業だからこそできる障害者雇用のやり方があります。従業員120名のWEBマーケティング会社が、ゼロから始めた障害者雇用で2年後に法定雇用率を超過達成するまでの道のり。「大企業の真似をしなかったことが正解だった」と語る代表取締役に、その実践を聞きました。

スタートはゼロ:2022年、何も知らないところから

法定雇用率の引き上げで「対応しなければ」と感じたのが2022年初頭でした。当時は就労移行支援事業所の存在も知らず、障害者専門の求人サイトも使ったことがなかった。「何から始めればいいかすら分からなかった」と代表は振り返ります。

まず近隣のハローワークに相談し、障害者専門の窓口担当者と繋がりました。そこから就労移行支援事業所の見学、業務設計の相談、求人票の作成と進み、最初の採用が実現したのは相談開始から5ヶ月後のことでした。「正直、もっと大変だと思っていた。一つひとつ相談しながら進めれば、中小企業でも十分にできる」と代表は言います。

項目内容
業種WEBマーケティング
従業員数約120名
障害者雇用開始2022年(ゼロから)
2年後の雇用率2.6%(法定2.5%を超過)
採用人数3名(精神障害1名・発達障害2名)
定着率3名全員が2年後も在籍中

「中小企業だからこそできた」3つのこと

代表が最も強調するのが「意思決定の速さ」です。大企業なら稟議・承認・部門間調整が必要な場面でも、代表が「やろう」と決めれば翌日から動けた。採用した社員の業務設計を「やっぱりこっちの業務のほうが向いていそうだ」と変更するのも、一週間もあれば実現できました。制度や体制が硬直した大企業では難しいこのスピード感が、定着率を高める大きな武器になりました。

次に「現場との距離の近さ」です。120名規模だと、障害者社員と上司が毎日直接コミュニケーションを取れます。「困ったことはない?」という声かけが、マニュアル通りではなく、本当に気にかけているという温度で伝わる。「支援体制が整っていない分、人間としての関係で補えた」という言葉が印象的でした。

3つ目は「柔軟な業務設計」です。採用した発達障害の社員が最初にアサインした業務では力を発揮しきれていないと感じた際、他部署の業務を少し分けてもらい、その社員に合ったポジションを1ヶ月かけて作り直しました。「大企業と同じことをしようとしても無理です。中小企業の強みは「人」と「フットワーク」。この2つを活かして、その人に合う仕事を一緒に作れたことが、全員の定着につながったと思います」(代表取締役)。

2年で見えてきた「想定外の効果」

障害者社員3名の採用をきっかけに、業務マニュアルの整備・Teamsの本格活用・1on1文化の浸透という3つの変化が全社に広がりました。「障害者社員のために整えた環境が、気づいたら一般社員にとっても働きやすい職場になっていた。採用コストを超えるリターンがあった」という言葉は、インクルーシブ雇用の本質を突いています。

「中小企業には難しい」は思い込みです。スピードと柔軟性という中小企業の強みは、障害者雇用においてむしろ武器になります。TSUNAGU Academyでは、中小企業向けの障害者雇用スタートアップ支援プログラムを提供しています。ゼロからでも3ヶ月で採用の土台を作れます。

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TSUNAGU 編集部

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障害者雇用専門

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