グループ企業を持つ経営者にとって、障害者雇用率の算定は「単なる法務コンプライアンス」ではなく「グループ全体の人材戦略」になります。特定子会社で集約するか、各社に分散配置するか、関係子会社制度を活用するか——選択肢の違いが、長期的な定着率と経営効率を大きく変えます。

グループ算定の3つの制度を再整理する

特定子会社制度は、障害者雇用専門の子会社を設立し、親会社と合算して雇用率を算定できる制度です。設立要件は「親会社の議決権50%超」「障害者比率20%以上」「重度障害者30%以上」などが求められます。最大のメリットは「障害者雇用に特化した環境を一箇所に集約」できることですが、近年は「分離型雇用としての評価低下」というデメリットも指摘されています。

関係子会社制度は、特定子会社の認定を前提に、グループ内の他の子会社も合算対象にできる制度です。これにより「特定子会社でスキルを育成し、関係子会社でインクルーシブ雇用を実現」というハイブリッドモデルが設計できます。グループ適用は、特定子会社の要件を満たさなくても、一定の条件で複数社を合算できるケースがありますが、要件が厳しく活用事例は限定的です。

最適配置戦略:「この人がどこで輝くか」で選ぶ

グループ内での障害者配置を決める際、最も重要な基準は「雇用率の数字合わせ」ではなく「その人がどの会社で最も活躍できるか」です。ITスキルを持つ障害者社員は、IT業務が豊富な子会社に配置したほうが生産性が高まります。在宅勤務制度が整っている子会社には、通勤困難な社員を配置するのが適切です。

「障害者雇用率を達成するための人材配置」から「グループ全体の戦力最適化の一環としての人材配置」という発想の転換が、長期的な定着率と企業価値を高めます。グループ内での異動も、本人のキャリアパスとして設計することで「障害者社員にとっての成長機会」になります。

配置戦略向いているケースメリット注意点
特定子会社集中型大企業・グループ・障害者専門環境が必要集中管理しやすい・環境設計が徹底できるESG評価で「分離型」との指摘あり
関係子会社分散型グループ内に複数の適切な配置先がある本人の特性に合った配置が可能・キャリアパス設計しやすい管理が分散する・各社の連携が必要
ハイブリッド型特定子会社で育成→関係子会社で実務育成とインクルージョンの両立・スキル移転が可能移行設計に時間がかかる

グループ算定の注意点:よくある落とし穴

最もよくある失敗は「特定子会社の要件を満たしていないのに合算している」ケースです。特定子会社の認定は厚生労働省の審査が必要で、認定前に合算した場合は法的リスクがあります。また、関係子会社制度を活用する場合は「特定子会社の認定が前提」であることを忘れずに、手続きの順序を確認してください。

グループ内での異動・配置変更があった場合は、障害者雇用状況報告書の記載に反映させる必要があります。異動のタイミングで「どの会社の雇用率にカウントされるか」を人事部門間で確認し、重複カウントや漏れがないよう注意が必要です。

グループ企業の障害者雇用最適化は、制度理解と配置戦略の両方が必要です。TSUNAGU Academyでは、グループ全体の雇用戦略設計を、制度活用から人材育成まで一貫してサポートしています。

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TSUNAGU 編集部

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障害者雇用専門

障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 社会保険労務士・障害者雇用コンサルタントが監修。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。

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