「法定雇用率は達成している。障害者社員も離職していない。毎日担当業務もある。」——それでも、こんな状態だったとしたら、その障害者雇用は「成功している」と言えるだろうか。何年も同じ業務だけを担当している。新しいスキルを学ぶ機会がない。人事評価の仕組みから実質的に外れている。将来どのような仕事をするのか本人にも分からない。自分の仕事が会社にどう役立っているのか分からない——こうした状態を、あなたの会社は「問題なし」と見なせるだろうか。

この問いが、本記事のすべての出発点です。「人数を満たす」から「雇用の質」へ。そして今後は「働くことで何が生まれたのか」まで問う時代へ。2024年に発行されたウェルビーイングISO(ISO 25554)という国際規格が、その問いに新しい切り口を与えています。

【この記事の結論】ウェルビーイングISOと障害者雇用の関係について:ISO 25554は障害者雇用を直接規定する規格ではありません。しかし、組織がウェルビーイングの対象・成果・施策・計測・評価・改善を設計する考え方は、障害者雇用の質を能力発揮・成長・貢献実感等まで拡張して評価する際に活用できます。障害者雇用担当者にとって、この規格は「雇用の質」を問い直すための参考的な思考フレームとして価値があります。

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いま、なぜ「障害者雇用×ウェルビーイング」なのか

法定雇用率だけでは見えないもの

2026年7月から民間企業の法定雇用率が2.7%に引き上げられました。企業には引き続き、障害者を一定数雇用することが義務づけられています。法定雇用率は非常に重要なコンプライアンス指標であり、その達成は企業として最低限果たすべき責務です。

一方で、法定雇用率は「何人雇っているか」を示す指標です。「その人が職場でどのように働いているか」「どんな成果を上げているか」「どれほど成長を実感できているか」——そうした実態は、雇用率という数字からは読み取れません。

法定雇用率そのものを否定する意図はまったくありません。ただ、「達成した」という事実が、その先にある「雇用の中身」を保証するわけではない。そのことを、改めて確認しておく必要があります。

国でも議論が始まった「障害者雇用の質」

注目すべき動きがあります。厚生労働省の第140回労働政策審議会障害者雇用分科会(2026年7月24日)で、「障害者雇用の質」が明示的に議題として取り上げられました。能力発揮・事業活動への活用・適正な雇用管理・正当な評価・雇用の安定という5つの観点が、雇用の「質」を構成する要素として整理されています。

これは、国の政策議論においても「人数さえ達成すればよい」という段階を超えつつある兆候です。「障害者雇用の質」についてより詳しく知りたい方は、TSUNAGU編集部の別記事「障害者雇用の『質』とは何か——法定雇用率の達成から、能力発揮・本業貢献・成長する雇用へ」もあわせてお読みください(内容の重複を避けるため、本記事では「雇用の質」の詳細な解説よりも、ウェルビーイングという視点からの考察を中心に進めます)。

ウェルビーイングISO「ISO 25554」とは

2024年に発行された日本主導の国際規格

ISO 25554の正式名称は「Ageing societies — Guidelines for promoting wellbeing in communities(高齢化社会—コミュニティにおけるウェルビーイング推進のためのガイドライン)」です。2024年11月12日、国際標準化機構(ISO)によって発行されました。この規格は日本が主導して開発したもので、高齢化が急速に進む社会において、コミュニティ(地域・組織)がウェルビーイングを推進するための指針を提供します。

なお、ISO 25554は企業専用の規格ではなく、コミュニティ全般を対象としたガイドラインです。職場・地域・組織など、さまざまな文脈での応用が想定されています。

「ウェルビーイングの正解」を決める規格ではない

ISO 25554を理解するうえで、最も重要なポイントがあります。この規格は「ウェルビーイングとはこれだ」という世界共通の一つの定義を押し付けるものではない、ということです。

各組織やコミュニティが、それぞれの文脈において「誰のウェルビーイングを対象にするのか」「何を成果とするのか」「何を実施するのか」「どう計測するのか」「どう評価するのか」「どう改善するのか」——これらを自ら定義し、継続的に改善していくためのフレームワークとして機能します。

以下の図(仮置き)は、ISO 25554が示すウェルビーイング推進のプロセスを概念的に示したものです。正式なISOモデルとは異なりますが、考え方の理解を助けるための参考として掲載しています。

1対象を定める(Define)——誰のウェルビーイングか
2計画する(Plan)——何を実施するか
3実施する(Act)——具体的に取り組む
4計測する(Measure)——効果をデータで確認する
5評価する(Evaluate)——成果・課題を整理する
6改善する(Improve)——次のサイクルへ
ゴール

※ 上記のプロセス図はTSUNAGU編集部によるISO 25554の概念的な解釈であり、ISOが公式に示したモデルではありません。

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「ISO認証」と「国内認定」を混同しない

ISO 25554はガイドライン規格です。「ISO 25554のISO認証を取得する」という表現は、この規格の性質を正確に表していないため、使用には注意が必要です。ISO認証は、品質管理(ISO 9001)や環境管理(ISO 14001)のような「マネジメントシステム規格」に対して行われるものです。

一方、日本では一般社団法人社会的健康戦略研究所によって、ISO 25554に基づく「ウェルビーイングISOガイドライン認定」という国内第三者認定制度が2026年1月より開始されています。これはISOそのものが発行する国際認証とは別のもので、国内民間団体による独自の認定です。両者の区別を明確にしておくことが重要です。

なぜウェルビーイングISOと障害者雇用は相性がよいのか

改めて確認しますが、ISO 25554は障害者雇用について直接規定した規格ではありません。しかし、この規格が示す「ウェルビーイングの設計・計測・改善のプロセス」という思想を障害者雇用に応用すると、非常に多くの接点が浮かび上がります。

以下の比較表は、TSUNAGU編集部が「障害者雇用で重要なテーマ」と「ウェルビーイングの視点」を対応させて整理したものです(ISO 25554の公式対応表ではありません)。

障害者雇用で重要なテーマWell-beingの視点
合理的配慮安心して働ける環境の確保
能力発揮強み・自己効力感の実現
人材育成・スキルアップ学習・成長の機会
職域拡大自律性・キャリアの自己決定
正当な評価承認・公平感
雇用の安定安心感・将来展望
本業への貢献仕事の意味・貢献実感
社内との関係所属感・社会的つながり

この対応から見えてくるのは、「障害者を会社に在籍させること」と「その人が会社の中でWell-beingな状態で働けていること」は、まったく同義ではない、という事実です。在籍数という外形的な指標の裏側に、本人の内側にある状態——自己効力感・貢献実感・将来展望——が問われています。

「定着率が高い=ウェルビーイングが高い」とは限らない

以下は架空の企業事例です。実在する企業の事例ではありません。あくまで「同一指標でも、その中身が異なる場合がある」ことを理解していただくための概念的な比較です。

架空のA社:定着率95%

  • 入社以来、ずっと同じ単純業務を担当
  • 新しい研修・学習の機会がほぼない
  • 職域変更・業務拡大の実績がない
  • 評価制度への参加が限定的
  • 将来のキャリアが本人にも不明確

架空のB社:同様の定着率

  • 本人の適性・希望を定期的に確認している
  • 研修・スキルアップの機会を提供している
  • 新しい業務への段階的な挑戦を支援
  • 上司からのフィードバックが定期的にある
  • 成果を評価し、業務範囲の拡大を実現

どちらが優れているかを単純に断定することはできません。A社にも丁寧な管理体制や安定した雇用環境という強みがある可能性があります。ただ、この比較が示すのは「定着率という一つの指標だけでは、障害者雇用の状態を十分に評価できない場合がある」ということです。

「働く喜び」を設計し、エンゲージメントを高めることが、単なる定着率向上を超えた障害者雇用の姿につながる——詳しくは「「働く喜び」を設計する——障害者社員のエンゲージメント向上で離職率30%→8%に」もあわせてご参照ください。

障害者雇用は「Quantity → Quality → Well-being」へ

以下は、TSUNAGU編集部が障害者雇用の評価軸の変遷を概念的に整理したフレームです。ISO 25554が正式に示しているモデルではありません。「TSUNAGU編集部による概念整理」として参照してください。

レベル評価軸主な指標(例)
LEVEL 1:Compliance法定雇用率を満たす雇用人数・実雇用率
LEVEL 2:Employment安定して働ける定着率・勤怠・雇用継続
LEVEL 3:Quality能力を発揮できる職務適合・成果・適正な評価
LEVEL 4:Growth学習し、成長できるスキル・担当業務・職域・キャリア
LEVEL 5:Well-being働くことで良い変化が生まれる働きがい・自己効力感・貢献実感・将来展望

「何人雇ったか」→「どのように働いているか」→「働くことで何が変わったか」 ※ 上記はTSUNAGU編集部による概念整理であり、ISO 25554やその他の公的基準が示す公式モデルではありません。

これから企業は何を測ればよいのか

既存の障害者雇用KPIについてより詳しく知りたい方は、TSUNAGU編集部の「障害者雇用の『質』とは何か」をご参照ください。ここでは、その一段上のOutcome指標として、TSUNAGU編集部が独自に整理した参考フレームを提示します。

以下の「障害者雇用 Well-being 8指標」は、ISO 25554の公式評価指標ではありません。同規格の考え方と障害者雇用の実務を踏まえてTSUNAGU編集部が整理した参考フレームです。これが唯一の正解ではなく、各社の状況に応じてカスタマイズすることが前提です。

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障害者雇用 Well-being 8指標(TSUNAGU編集部 参考フレーム)

指標問いかけ
1. 安心安心して働き続けられると感じているか
2. 合理的配慮必要な配慮について本人と会社が継続的に対話できているか
3. 能力発揮自分の得意なこと・能力を仕事で活かせているか
4. 成長新しい知識やスキルを身につけている実感があるか
5. 自律性仕事の進め方やキャリアについて一定の自己決定ができているか
6. 承認・評価成果や努力が適切にフィードバック・評価されているか
7. 貢献実感自分の仕事が会社や誰かの役に立っていると感じられるか
8. 将来展望半年後・1年後・数年後の自分の働き方や役割を描けるか

これら8つの指標は、測定ツールや診断基準ではありません。定期的な1on1や面談の中で「問いかける視点」として活用することを想定しています。全項目を一度に確認する必要はなく、本人の状況や雇用段階に応じて優先順位を変えながら活用してください。

KPIも「Input」から「Outcome」へ

企業担当者が実務で理解しやすいよう、4層のモデルで整理します。「研修を何時間したか」ではなく、「研修によって本人の仕事や役割がどう変わったか」を見ることが、この考え方の核心です。

内容障害者雇用での例
INPUT(投入)企業が投入したリソース研修時間・支援者の工数・合理的配慮・面談・教育予算
OUTPUT(産出)実際に行われた活動・成果物研修修了・資格取得・新規業務への挑戦・PBL実施
OUTCOME(成果)本人・職場に生じた変化担当業務の拡大・スキル向上・自己効力感・貢献実感・キャリア展望
IMPACT(影響)企業・社会への中長期的変化生産性向上・人材定着・DX推進・インクルーシブな組織文化・社会参加

多くの企業はInputとOutputの管理はできています。しかし、OutcomeとImpactを意識的に見ている企業はまだ少ない。「研修を受けさせた(Input)」「修了した(Output)」という事実確認にとどまらず、「その研修によって本人の仕事や役割がどう変わったか(Outcome)」を追いかけることが、Well-being視点の実務への落とし込みです。

2030年の障害者雇用はどう変わるのか

以下は将来の方向性に関する考察です。確定した政策や予測ではなく、複数の流れから考えられる可能性として読んでください。

時期問われること中心的な評価軸
これまで(〜2020年代前半)何人雇用したか雇用人数・法定雇用率
現在(2026年〜)どのように働いているか能力発揮・職務・評価・定着・成長
これから(2030年代へ)働くことで何が変わったか自己効力感・働きがい・貢献・キャリア・社会参加・組織インパクト

この方向性を生み出している背景として、法定雇用率の段階的引き上げ、障害者雇用の質に関する政策議論の高まり、人的資本経営の普及、DE&Iへの社会的要請、ウェルビーイング経営の拡大、そして今回テーマにしたウェルビーイングの国際標準化という複数の潮流が重なっています。いずれも単独では「2030年にはこうなる」と断言できるものではありませんが、それぞれが同じ方向を指し示していることは確かです。

さらに進む「職場のウェルビーイング」の国際標準化

ISO 25554(コミュニティのウェルビーイング)と並んで注目される動きがあります。ISO/FDIS 30441です。正式名称は「Human resource management — Workplace well-being — Guidelines for thriving workplaces(人的資源管理——職場のウェルビーイング——繁栄する職場のためのガイドライン)」です。

2026年8月時点では、FDIS(Final Draft International Standard=最終国際規格案)の段階にあり、正式な国際規格(International Standard)としての発行には至っていません。記事公開後にステータスが変わる可能性があるため、最新情報はISO公式サイトでご確認ください。

この規格は、ワークライフバランス・柔軟な働き方・テレワーク・マネジメント・ハラスメント防止・承認・意思決定の自律性・業務負荷・職場環境など、より直接的に職場のウェルビーイングを扱う方向性にあります。ただし、ISO/FDIS 30441もISO 25554と同様に、障害者雇用について特定の規定を設けているわけではありません。

これらの動きが示すのは、「障害者雇用も今後、福祉・採用・コンプライアンスだけでなく、人材マネジメントや職場ウェルビーイングの一部として考える必要性が高まる」という方向性です。障害者雇用を経営課題・人事戦略として捉え直す文脈が、国際規格という形でも醸成されつつあります。

障害者雇用のゴールは「辞めないこと」なのか

「離職しなかった」ことを障害者雇用の最終成果とする——その発想自体を、一度立ち止まって問い直してみてください。

働くことには、多くの意味があります。収入を得ること。能力を発揮すること。新しいことを学ぶこと。誰かの役に立つこと。成果を認められること。社会との接点を持つこと。自分の未来を描くこと。これらは障害の有無によって変わるものではありません。

「辞めない雇用」から、「成長できる雇用」へ。 そして、「働くことでWell-beingが高まる雇用」へ。

もちろん、すべての障害者社員が同じペースで成長すべきだという意味ではありません。本人の希望、適性、障害特性、必要な配慮によって、望ましい働き方は人それぞれです。大切なのは、「辞めなければそれで十分」という発想の天井を取り払い、本人にとって望ましい働き方と企業の事業活動を両立させる視点を持ち続けることです。

ウェルビーイングを高めるには「配慮」だけでは足りない

合理的配慮は、障害者が職場で安心して働くための不可欠な基盤です。これは疑いようがありません。しかし、合理的配慮だけでウェルビーイングが完成するわけではありません。配慮は「スタートライン」であって、「ゴール」ではないのです。

ウェルビーイングが高まっていく循環は、概念的に以下のように描くことができます(TSUNAGU編集部による参考モデル)。

1合理的配慮——安心できる環境の確保
2適切な仕事——能力と業務の接続
3学習機会——研修・リスキリングの提供
4能力発揮——担当業務での成果創出
5評価——成果・努力への適切なフィードバック
6職域拡大——より広い役割への挑戦
7貢献実感・キャリア展望——次の成長へ
ゴール

この循環を回すためには、IT/DX/AIリスキリング、PBL型学習、職域開発、業務設計といった積極的な人材育成施策が必要です。詳しくは「人的資本経営が求める障害者社員へのリスキリング投資——「コスト」から「価値創造」への転換」および「障害者雇用の人材育成に、なぜPBLが必要なのか」をご参照ください。

TSUNAGUが考える、これからの障害者雇用

TSUNAGUは、障害者雇用の目的を「法定雇用率のために在籍してもらうこと」だけとは考えていません。本人が学び、スキルを身につけ、実務に挑戦し、成果を出し、評価され、職域が広がり、企業の生産活動へ貢献する——この循環を作ることを重視しています。

IT・DX・AI研修、PBL型学習、職域開発、業務設計、開発伴走支援は、そのための手段として提供しています。ただし、研修を受ければ必ずウェルビーイングが高まる、職域が広がれば必ず定着率が上がる——そういった断定はしません。障害特性、適性、希望、企業環境によって必要な支援はそれぞれ異なります。

「既存の障害者社員に成長機会をつくりたい」「今の業務から職域を広げたい」「研修したスキルを実務につなげたい」という課題をお持ちであれば、障害者社員向けIT/DX/AI研修についてご相談ください。また「研修後に実務へ接続できない」「社内にPMがいない」という課題には、職域開発・実務への接続を伴走支援するサービスもあります。

御社の障害者雇用は、「人数」の次へ進めていますか?

法定雇用率や定着率だけでは、障害者雇用の状態を十分に把握できない場合があります。「既存の障害者社員に成長機会をつくりたい」「今の業務から職域を広げたい」「研修したスキルを実務につなげたい」「障害者雇用の成果を経営層へ説明できるようにしたい」——こうした課題があれば、現在の雇用状況や人材育成の仕組みを整理するところから相談できます。

よくある質問

Q1. ウェルビーイングISOとは何ですか?

ウェルビーイングISO(ISO 25554)は、2024年11月に発行された国際規格です。正式名称は「Ageing societies — Guidelines for promoting wellbeing in communities」。コミュニティ(地域・組織など)がウェルビーイングを推進するためのガイドラインを提供します。日本が主導して開発した規格であり、「ウェルビーイングの正解」を押し付けるのではなく、各組織が自らの文脈でウェルビーイングを定義・設計・改善するためのフレームワークを示しています。

Q2. ISO 25554は障害者雇用の規格ですか?

いいえ。ISO 25554は障害者雇用を直接規定した規格ではありません。コミュニティ全般でのウェルビーイング推進を扱うガイドラインです。ただし、この規格が示す「対象・成果・施策・計測・評価・改善を設計するプロセス」の考え方は、障害者雇用の質を能力発揮・成長・貢献実感等まで拡張して評価する際の参考フレームとして活用できます。ISO 25554が障害者雇用に直接関係すると誤解のないよう、この区別は重要です。

Q3. 「ISO 25554認証」は取得できますか?

ISO 25554はガイドライン規格であり、品質管理(ISO 9001)のような「マネジメントシステム認証」は存在しません。「ISO 25554認証を取得する」という表現は規格の性質を正確に反映していないため注意が必要です。一方、日本では一般社団法人社会的健康戦略研究所が、ISO 25554に基づく「ウェルビーイングISOガイドライン認定」という国内民間認定制度を2026年1月より開始しています。これはISOが発行する国際認証とは別の制度です。

Q4. 障害者雇用のウェルビーイングは何を測ればよいですか?

雇用率・定着率などの従来指標に加えて、能力発揮、成長、貢献実感、心理的安全性、所属感、キャリア展望といったOutcome指標を組み合わせて考えることが有効です。本記事で紹介した「障害者雇用 Well-being 8指標」はTSUNAGU編集部による参考フレームです。重要なのは、どの指標を使うかよりも「本人の状態を定期的に問いかける姿勢を持つこと」です。

Q5. 定着率が高ければ質の高い障害者雇用と言えますか?

定着率は重要な指標ですが、それ単独では障害者雇用の「質」を十分に評価できません。定着率が高くても、同じ業務を何年も繰り返しているだけだったり、成長の機会がなかったりする場合があります。逆に、定着率が100%であっても、本人がやりがいや将来展望を感じていなければ、持続可能な雇用とは言えないかもしれません。定着率は複数の指標の一つとして活用することをおすすめします。

Q6. 人材育成とウェルビーイングにはどのような関係がありますか?

学習・成長・能力発揮・自己効力感・キャリア展望は、ウェルビーイングを構成する重要な要素です。新しいスキルを習得し、担当業務が広がり、自分の成長を実感できることは、働くことに対する意欲や貢献実感に直結します。人材育成への投資は、単なる「戦力化のコスト」ではなく、本人のウェルビーイングを高め、それが結果として定着・貢献・組織全体の生産性向上へとつながる「循環の起点」と捉えることができます。

Q7. ISO 30441とは何ですか?

「Human resource management — Workplace well-being — Guidelines for thriving workplaces」という規格の草案名称です。2026年8月時点ではFDIS(最終国際規格案)の承認段階にあり、正式な国際規格(IS)としてはまだ発行されていません。職場のウェルビーイングをより直接的に扱う規格として注目されていますが、最新ステータスはISO公式サイト(iso.org)でご確認ください。この規格も障害者雇用を直接規定するものではありません。

おわりに

法定雇用率を満たすことは重要です。安定して働き続けられる環境をつくることも重要です。しかしその先には、自分の能力を活かすこと、新しいことを学ぶこと、仕事を通じて誰かに貢献すること、成果を認められること、自分の未来を描けること——が続いています。

障害者雇用が「雇用義務を満たす仕組み」から、一人ひとりが能力を発揮し、企業とともに成長できる仕組みへ——ウェルビーイングという視点は、その未来を考えるための新しい物差しの一つになります。

「何人雇用したか」から、 「働くことで何が生まれたか」へ。

【出典】ISO「ISO 25554:2024 Ageing societies — Guidelines for promoting wellbeing in communities」:https://www.iso.org/standard/82832.html / 厚生労働省「第140回労働政策審議会障害者雇用分科会」(2026年7月24日):https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_46721.html

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参考文献・一次資料

※本記事の内容は執筆時点の情報に基づきます。最新の法令・制度については、上記の一次資料をご確認ください。

障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 監修は水野 祐美子(プロフィールはこちら)。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。

監修:水野 祐美子
公開日:2026-08-22