「特例子会社があれば安心」という時代が、静かに終わりつつあります。ESG投資家からの「分離型は包摂性が低い」という指摘、障害者社員自身の「別扱いされている」という孤立感、そしてニューロダイバーシティへの社会的関心の高まり。大手流通業が特例子会社中心の「分離型」から、本体採用・本体配属の「統合型」へと転換した5段階のプロセスと、その先に待っていた変化を紹介します。

転換を決断した3つの理由

人事部長が転換を決意したきっかけは、3つの課題が重なったことでした。「特例子会社に配属された障害者社員から、「自分たちは別の世界に隔離されている感じがする」という声が複数寄せられていた。ESG評価でも「分離型雇用は真のインクルージョンではない」という指摘を格付け機関から受けた。そして、特例子会社に在籍する社員のスキルが高まっているのに、キャリアパスが見えずに離職するケースが増えていた」。

これら3つが重なったとき、「今の仕組みは企業にとっても、本人にとっても、最善ではない」という認識が生まれました。インクルーシブ雇用への転換は、コストではなく投資として意思決定されました。

5段階の転換プロセス:2年かけた段階的移行

まず特例子会社社員を本体業務に6ヶ月間の研修派遣という形で送り出しました。これは「本体で通用するか」のテストではなく、「本体で働く体験を積む」ための期間です。派遣中に「この部署の、この業務なら力を発揮できそう」という感覚が本人にも企業側にも生まれ、その後の受け入れ設計に活かされました。

次の3ヶ月で、本体での受け入れ部署と業務設計を整備しました。「どこに配属するか」ではなく「その人のスキルと特性が最も活きる業務はどこか」という視点で設計されたことで、配属後のミスマッチが最小化されました。その後1年をかけて、希望者から段階的に本体採用へ移行していきました。

  • 1第1段階:特例子会社社員を本体業務に研修派遣(6ヶ月)——「本体で働く体験」を積む
  • 2第2段階:本体での受け入れ部署・業務設計を整備(3ヶ月)——特性に合った配置を設計
  • 3第3段階:希望者から本体採用に移行(1年かけて段階的に)——強制移行はしない
  • 4第4段階:一般社員向けのダイバーシティ研修を実施——受け入れる側の準備
  • 5第5段階:統合的な評価・育成制度を設計——「特別扱い」をなくす

転換後、障害者社員から届いた言葉

本体採用に移行した社員のひとりは、転換後1年のインタビューでこう話してくれました。「特例子会社のときは「自分たちは別扱いなんだ」という感覚がどこかにあった。本体で一般社員と同じフロアで働くようになってから、「自分も普通に働いているんだ」という自信が生まれた。上司に「あなたの担当業務、本当に助かっています」と言ってもらえることが、毎日の力になっています」。

また別の社員は「特例子会社にいたときは「ここから先のキャリアが見えなかった」。本体に移ってから「来年はこのスキルを習得して、こういう業務に挑戦したい」という具体的な目標が持てるようになった」と語りました。

「分離から統合へ」の転換は、一度に全員を動かす必要はありません。希望者から、段階的に、丁寧に。TSUNAGU Academyでは、特例子会社からインクルーシブ雇用への転換を支援するコンサルティングを提供しています。「どう変えるか」を一緒に設計しましょう。

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TSUNAGU 編集部

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障害者雇用専門

障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 社会保険労務士・障害者雇用コンサルタントが監修。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。

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