「法定雇用率を達成するために、農園型やサテライトオフィス型、雇用代行型のサービスには頼らず、自社の職場、自社の業務、自社の人材だけで障害者雇用を進めたい」——この方針は、障害者社員を企業の本業や組織から分離せず、既存社員と共に働く環境をつくろうとする点で、非常に意義のある選択です。ただし、法定雇用率の達成に必要な人数を採用することと、採用した人が長く働き、成長し、企業に貢献できる状態をつくることは、別の課題です。

はじめに——「自社でやる」という方針の価値と、その先にある問い

自社の組織、自社の業務、自社のマネジメント体制の中で障害者雇用を実現したい。その方針を持つ企業は、障害者を企業の本業や組織から切り離さず、既存社員と共に働くインクルーシブな職場を目指しています。これは、法令対応を超えた経営判断であり、非常に意義のある考え方です。

一方で、「自社で雇用する」という方針を継続するためには、採用人数を確保するだけでは不十分です。以下のような問いが、採用後に必ず直面する課題として存在します。

  • 採用した後に、継続して任せられる仕事はあるか
  • 障害者社員が成長した後に、次の業務を用意できるか
  • 受け入れ部署を増やせるか
  • 現場の管理者が適切に指示や評価を行えるか
  • 採用人数が増えても、現在の支援体制を維持できるか
  • 障害者社員自身がキャリアの展望を持てるか

この記事では、自社内で障害者雇用を実現する方針の価値を尊重しながら、その持続可能性を高めるために必要な視点——職域開発、人材育成、リスキリング、管理者育成——について、客観的な情報を提供します。

自社内で法定雇用率の達成を目指す企業が増える背景

近年、法定雇用率の達成にあたり、外部サービスに依存せず自社のリソースを中心に障害者雇用を進める企業が増えています。その背景には、以下のような考え方があります。

  • 1障害者を企業の本業や組織から切り離したくない
  • 2既存社員と同じ組織の中で働いてもらいたい
  • 3ダイバーシティやインクルージョンを社内文化として根づかせたい
  • 4外部サービスへの依存を避けたい
  • 5自社の業務を通じて障害者社員に成長してもらいたい
  • 6障害者雇用を法令対応だけで終わらせたくない
  • 7自社の人材マネジメント力を高めたい

こうした考えは、企業が障害者雇用を単なる法令対応ではなく、自社の経営課題、人材戦略、組織開発の一部として捉えている表れです。この方針自体は、インクルーシブな職場を実現するための重要な第一歩です。

一方で、「自社で雇用する」という方針と、「すべての機能を最初から自社だけで持つ」という方針は、分けて考える必要があります。この区別については、記事の後半で詳しく解説します。

自社リソースを中心に障害者雇用を進めるメリット

自社のリソースを中心に障害者雇用を進めることには、以下のような明確なメリットがあります。ただし、これらを実現するためには相応の準備と社内体制が必要です。

1. 障害者社員が企業の一員として働ける

企業の理念、商品、サービス、顧客、事業目的とつながった業務を担当できるため、自分の仕事が企業活動にどのように貢献しているかを実感しやすくなります。これは、障害者社員のモチベーションとエンゲージメントに直結する要素です。

2. 既存社員との接点が生まれる

一般部署や既存チームの中で共に働くことにより、障害に対する理解が、研修だけではなく日常業務を通じて深まる可能性があります。これは、全社的なインクルージョン文化の醸成に大きく寄与します。

3. 社内に障害者雇用のノウハウが蓄積する

採用、面談、合理的配慮、業務指示、評価、定着支援などの経験が社内に蓄積され、将来的な採用や受け入れに生かせます。このノウハウは、障害者雇用以外の人事施策にも応用できる経営資産です。

4. 本業に近い職域を開発しやすい

自社の業務を熟知している社員が関わることで、後回しになっている業務、外注している業務、属人化した業務などを障害者社員の職域として再設計できる可能性があります。これは、組織全体の業務効率化にもつながります。

5. インクルーシブな組織文化につながる

障害の有無にかかわらず、個人の特性や能力に応じて仕事を設計する考え方が、組織全体に広がる可能性があります。この考え方は、障害者雇用の枠を超えて、多様な人材が活躍できる組織づくりの基盤になります。

6. 長期的には自社の雇用力が高まる

外部に依存せず、自社で採用、育成、配属、定着を実施できるようになれば、継続的な障害者雇用の基盤になります。これは、法定雇用率の変動や制度変更にも柔軟に対応できる組織力につながります。

図解:自社雇用と「すべてを自社完結」することの違い

以下の図は、「自社雇用」と「自社完結」の概念的な違いを整理したものです。この2つは混同されがちですが、明確に区別する必要があります。

自社雇用

  • 自社が雇用主
  • 自社業務を担当
  • 自社の管理者が指示
  • 自社で評価
  • 自社組織に所属
自社雇用を実現するために、必要な専門知識だけを外部から取り入れることもできる

すべてを自社完結

  • 採用も社内だけ
  • 研修も社内だけ
  • 職域開発も社内だけ
  • 管理者育成も社内だけ
  • 専門相談も社内だけ

「自社雇用を実現するために、必要な専門知識だけを外部から取り入れることもできる」

自社リソースだけで進める場合に起こりやすい課題

自社のリソースを中心に障害者雇用を進める方針には大きな意義がありますが、実務上、以下のような課題が発生しやすいことも事実です。これらは企業を批判するものではなく、事前に認識し対策を検討するためのものです。

1. 障害者雇用担当者に業務が集中する

採用、面談、配慮事項の確認、配属調整、現場との連携、体調確認、トラブル対応などが、少数の担当者に集中する可能性があります。担当者一人あたりの負荷が高まると、対応の質が低下したり、担当者自身の離職リスクが高まったりすることがあります。

2. 現場管理者が対応方法を学ぶ機会が少ない

障害特性に配慮した指示、面談、評価、フィードバックの方法が分からず、現場が不安を抱えることがあります。「どう接すればいいか分からない」という状態が続くと、結果的に障害者社員に新しい業務を任せることをためらう原因になります。

3. 採用人数を増やすほど、任せる業務が不足する

最初の数人には業務を用意できても、雇用人数が増えるにつれて、定型業務や補助業務だけでは職域が足りなくなることがあります。この課題は、法定雇用率が段階的に引き上げられる中で、より深刻になります。

4. 特定の社員や部署に依存する

障害者雇用に理解のある担当者が異動や退職をした場合、運用が継続できなくなるリスクがあります。特定の個人の善意や熱意に依存した運用は、組織としての持続可能性を損ないます。

5. 障害者社員のキャリアが停滞する

採用時に用意した業務を何年も続けるだけになり、スキル向上、役割拡大、昇給、昇格などにつながらない可能性があります。これは本人のモチベーション低下や離職につながるリスクがあります。

6. 配慮と過度な遠慮の区別が難しい

本人への負担を避けようとするあまり、新しい業務や責任を任せず、結果的に成長機会を奪ってしまうことがあります。「障害があるから」という理由で挑戦の機会を制限することは、合理的配慮の本来の趣旨とは異なります。

7. 社内だけでは新しい知識が入りにくい

自社内に障害者雇用、人材育成、職務設計、リモートマネジメントなどの経験者がいない場合、手探りの運用が長期間続く可能性があります。同じ課題に長期間直面することで、担当者の疲弊やモチベーション低下を招くことがあります。

8. 法定雇用率の達成自体が目的化する

採用人数の確保が優先され、採用後の育成、定着、役割、キャリアについての検討が後回しになる場合があります。これは短期的には雇用率を達成できても、長期的な継続を難しくする要因です。

最大の課題は「採用人数」ではなく「職域の持続可能性」

企業が法定雇用率を自社雇用で達成しようとする場合、多くの企業が「あと何人採用すればよいか」という人数の計算から始めます。しかし、より本質的な問いは「その人数が長期的に担当できる業務が社内にあるか」です。

例えば、現在5人の障害者社員がいる企業が、法定雇用率達成のために10人、15人と採用を増やす場合、単に既存業務を分けるだけでは、やがて担当業務が不足します。採用計画と同時に、人数に応じた職域計画が必要です。

職域計画には、以下の視点が欠かせません。

  • 現在任せている業務の棚卸し
  • 今後移管できる業務の洗い出し
  • 外注から内製化できる業務の検討
  • デジタル化によって新しく生まれる業務の特定
  • 各部署が抱える未着手業務の可視化
  • 属人化している業務の整理
  • データ整理や情報更新など、重要だが後回しになっている業務の発掘
  • AIやDXを活用することで担当可能になる業務の開拓
  • 本人の成長に合わせて難易度を上げられる業務の段階設計

重要なのは、障害者社員のために単純作業を探し続けることではなく、社内の業務課題と障害者社員の能力を結びつけることです。これは「障害者向けの特別な仕事」をつくる発想ではなく、組織全体の業務効率化と人材活用を同時に実現する考え方です。

「自社雇用を続けるためには、採用人数と同じ速度で、職域と育成機会を増やす必要があります。」

職域を拡大できない場合に起こり得ること

職域が固定されたままだと、以下のような状況が発生するリスクがあります。これらは障害者社員本人に原因があるのではなく、企業側の業務設計、育成機会、評価制度、管理者の経験などが複合的に関係して生じるものです。

  • 1同じ業務だけを長期間続けることになり、本人が成長を実感できない
  • 2新しい仕事への意欲が低下し、離職リスクが高まる
  • 3評価や昇給の根拠をつくりにくく、キャリア形成が停滞する
  • 4一般部署への異動や職域拡大が進まない
  • 5担当業務が減少した際に、新しい役割を用意できない
  • 6業務量を確保するために、必要性の低い作業をつくってしまう
  • 7採用人数が増えるほど管理担当者の負担が増える
  • 8現場から「任せられる仕事がない」という声が出る
  • 9障害者雇用が特定部署だけの課題になり、全社的な広がりを欠く
  • 10新規採用を止めざるを得なくなる
  • 11結果として法定雇用率を継続的に維持できなくなる

職域が広がらない原因は、本人の能力不足だけではなく、企業側の業務設計の不足、育成機会の欠如、評価制度の未整備、管理者の経験不足などが複合的に関係しています。「この仕事しか任せられない」という発想から、「この人の能力を活かせる仕事をどう設計するか」という発想への転換が求められます。

図解:法定雇用率達成から持続可能な雇用までのプロセス

法定雇用率の達成はゴールではなく、あくまで通過点です。以下の図は、採用から持続可能な雇用に至るまでのプロセスを示しています。

1採用計画
2法定雇用率達成
通過点
3業務アサイン
4人材育成・研修
5職域拡大
6公正な評価
7キャリア形成
8持続可能な自社雇用
ゴール

「法定雇用率の達成は、障害者雇用のゴールではなく、継続的な人材育成と職域開発の出発点です。」

インクルーシブ雇用は「同じ場所で働くこと」だけではない

「インクルーシブな障害者雇用」という言葉は、ともすると「同じオフィスで働いていること」や「同じ部署に所属していること」と同一視されがちです。しかし、同じ場所にいるだけでは、必ずしもインクルーシブな雇用とは言えません。

本当の意味でのインクルーシブ雇用には、以下の状態が伴っている必要があります。

  • 1企業の事業目的とつながった仕事を担当していること
  • 2本人の役割が組織内で認識されていること
  • 3成果や貢献が適切に評価されること
  • 4必要な配慮を受けながら、成長機会も与えられること
  • 5本人の希望や適性に応じて、担当業務を広げられること
  • 6他の社員と同様に、将来のキャリアを考えられること
  • 7障害者雇用担当部署だけでなく、複数の部署が雇用に関わること

「インクルーシブ雇用とは、同じ場所にいることだけではなく、役割、評価、成長機会を共有することです。」

「居場所をつくる」だけでなく、「役割と成長機会をつくる」ことが、本当の意味でのインクルーシブ雇用につながります。これは、障害の有無にかかわらず、すべての社員にとって働きがいのある職場をつくることと同義です。

障害者社員の職域拡大に必要な人材育成とリスキリング

職域拡大と人材育成は、別々に考えるべきではありません。企業が新しい業務を用意しても、本人がその業務を担当するための知識やスキルを学ぶ機会がなければ、職域は広がりません。一方で、研修だけを実施しても、研修内容と実際の社内業務がつながっていなければ、学んだスキルは活用されません。

必要なのは、以下の循環を継続的に回すことです。

  • 11. 社内業務を棚卸しする
  • 22. 将来任せたい業務を決める
  • 33. 本人の現在のスキルを把握する
  • 44. 不足しているスキルを研修で身につける
  • 55. 仮想の実務課題で練習する
  • 66. 小さな実業務から担当する
  • 77. 成果と課題を評価する
  • 88. 次の業務と育成目標を設定する

この循環において、研修は単独のイベントではなく、職域開発と一体となったプロセスの一部です。職域開発と人材育成を一体的に実施することで、障害者社員の「できること」を段階的に増やしながら、企業の「任せられること」も同時に広げていくことが可能になります。

図解:職域開発と人材育成の循環モデル

以下の図は、職域開発と人材育成が循環的に機能するモデルを示しています。この循環を継続的に回すことで、障害者社員の「できること」と企業の「任せられること」が同時に広がっていきます。

1社内業務の棚卸し
2必要なスキルの特定
3研修・PBL実践
4小さな実業務から担当
5評価・フィードバック
6次の職域開発
7業務再整理に戻る
継続的改善

この循環は一度回して終わりではなく、障害者社員の成長と組織の業務変化に合わせて、継続的に回し続けることが重要です。

今後拡大が考えられる職域の例

障害者社員が担当できる業務は、単純作業だけに限定されません。以下に、今後拡大が考えられる職域の例を分野別に紹介します。ただし、すべての障害者社員がこれらの業務に適しているとは限らず、本人の希望、適性、障害特性、経験、現在のスキル、必要な配慮を確認しながら、段階的に担当業務を広げる必要があります。

バックオフィス

  • 1データ入力・データ集計
  • 2請求書や申請書類の確認
  • 3経費データの整理・人事情報の更新
  • 4採用関連データの管理
  • 5文書の電子化・議事録作成
  • 6マニュアル整備

Microsoft 365関連

  • 1Excelを使った集計や分析
  • 2PowerPoint資料の作成
  • 3Word文書の整備
  • 4TeamsやSharePointの情報整理
  • 5Microsoft Formsを使ったアンケート作成
  • 6Power Automateを使った定型業務の自動化

AI・DX関連

  • 1生成AIを使った文章の下書き
  • 2社内FAQの作成・データクレンジング
  • 3AI出力内容の確認
  • 4マニュアルや手順書の作成
  • 5社内情報の分類・業務プロセスの可視化
  • 6システムの動作確認

Web・広報関連

  • 1Webサイトの更新・記事の入稿
  • 2SNS投稿案の作成・画像や動画の編集
  • 3競合調査・市場調査
  • 4営業リスト作成・アクセスデータの整理

IT関連

  • 1端末やアカウント情報の管理
  • 2社内IT問い合わせの一次対応
  • 3ソフトウェアの動作確認
  • 4Webアクセシビリティチェック
  • 5セキュリティ確認業務・システムテスト

すべてを社内だけで行う必要はあるのか——自社雇用と外部知見の活用

ここで重要な整理をします。企業が自社雇用を目指す方針と、外部の専門知識を活用することは、決して矛盾しません。以下の2つは明確に区別する必要があります。

雇用を外部に任せる自社の雇用力を高めるために外部知見を使う
障害者社員の勤務場所や日常管理を外部に依存障害者社員は自社で雇用し、自社業務を担当
担当業務を外部が用意・管理自社の管理者がマネジメント
指揮命令が外部にある場合がある人材育成・研修・職域開発の専門知識を外部から取り入れる
雇用の主体が不明確になりやすい雇用の主体はあくまで自社にある

外部研修や専門支援を利用しても、雇用の主体が企業から失われるわけではありません。むしろ、自社内にない知識やノウハウを取り入れ、最終的に企業自身が運用できる状態を目指すことで、自社雇用の持続可能性を高められます。

「外部に雇用を任せるのではなく、自社内で雇用を続けるために、外部の知見を活用するという選択肢があります。」

「自社雇用を貫くことと、すべてを自社だけで抱えることは同じではありません。」

図解:職域が固定される場合と拡大する場合の比較

以下の図は、職域が固定された場合と拡大した場合の、障害者社員と組織に生じる違いを比較したものです。

職域が固定する場合

  • 同じ業務の繰り返し
  • 成長機会が限定的
  • 評価が難しい
  • 業務量が不足
  • 新規採用が困難

職域が拡大する場合

  • スキルが向上
  • 責任範囲が拡大
  • 複数部署と連携
  • 業務貢献が増加
  • 持続可能な採用

職域が広がることで、本人の成長だけでなく、組織全体の業務効率化や人材活用の幅も広がります。これは、障害者雇用をコストではなく投資として捉える視点です。

自社完結型の障害者雇用を継続するための7つの条件

自社のリソースを中心に障害者雇用を継続するために、以下の7つの条件を整えることが有効です。

1. 経営層が障害者雇用の目的を明確にする

法定雇用率達成だけでなく、どのような組織や人材活用を目指すのかを経営層が示します。「人数合わせ」ではなく、「自社の競争力強化のための人材戦略」として位置づけることが、全社的な協力を得る基盤になります。

2. 採用人数と職域計画を同時に策定する

採用予定人数だけでなく、その人たちが担当する現在業務と将来業務を設計します。採用計画と職域計画は、車の両輪として同時に進める必要があります。

3. 複数部署が受け入れに関わる

障害者雇用を人事部や特定部署だけの役割にしないようにします。各部署の業務を棚卸しし、障害者社員が貢献できる領域を部署横断で検討することが、職域拡大の鍵です。

4. 本人のスキルを定期的に可視化する

採用時だけでなく、定期的に能力、経験、希望、配慮事項を確認します。スキルの可視化は、適切な業務アサインと育成計画の基礎データになります。

5. 研修と実務を接続する

学習内容を社内業務に活用できる形にし、成果物や担当業務へつなげます。「研修で学んだこと」と「実際の仕事」がつながらなければ、研修の投資対効果は低くなります。

6. 管理者も学ぶ

障害者社員だけでなく、業務指示、評価、フィードバック、合理的配慮を行う管理者にも研修機会を設けます。管理者のスキル向上は、障害者社員のパフォーマンスと定着率に直接影響します。

7. 最終的な自走化を目指す

外部支援を利用する場合も、支援に依存し続けるのではなく、社内に方法やノウハウを移転します。外部の知見を「借りる」から「自社のものにする」への移行を計画的に進めることが、長期的な持続可能性を高めます。

自社の現在地を確認するチェックリスト

以下のチェックリストで、自社の障害者雇用の持続可能性に関する現在地を確認してください。チェック数が少ないことを否定的に捉える必要はありません。法定雇用率達成前に不足している仕組みを確認できたこと自体が、改善の第一歩です。

  • 法定雇用率達成後の3年間の雇用計画がある
  • 採用予定人数ごとの担当業務が決まっている
  • 障害者社員が現在担当している業務を一覧化している
  • 今後拡大できる職域を検討している
  • 本人ごとのスキルと育成目標を把握している
  • 障害者社員向けの研修機会がある
  • 研修内容と実際の社内業務がつながっている
  • 一般部署への配属や業務移管を検討している
  • 複数の管理者が障害者雇用に対応できる
  • 業務指示や評価の方法が標準化されている
  • 担当者が異動しても運用を継続できる
  • 外注業務や未着手業務を職域候補として整理している
  • 障害者社員本人とキャリアについて話し合っている
  • 成長や貢献を評価する仕組みがある
  • 必要に応じて外部の専門知識を取り入れる方針がある

TSUNAGUが支援するのは「雇用の代行」ではなく「自社雇用の継続」

ここまで、自社内で障害者雇用を実現する方針の意義と、継続のために必要な職域開発・人材育成・管理者育成について解説してきました。最後に、合同会社TSUNAGUの研修事業についてご紹介します。

合同会社TSUNAGUは、企業に代わって障害者を雇用することを目的としているのではありません。企業が自社の組織、自社の業務、自社のマネジメント体制の中で、障害者社員を育成し、担当業務を広げ、長期的に雇用を継続できるように支援しています。

具体的な支援内容は以下の通りです。

  • 1障害者社員の現在のスキル把握と個別の育成計画策定
  • 2Microsoft 365研修・生成AI活用研修・IT/DX/Web/事務領域の研修
  • 3仮想の実務課題を使ったPBL型学習
  • 4業務指示を理解し、成果物を提出する訓練
  • 5報告・連絡・相談の訓練
  • 6社内業務に合わせた実務課題の設計
  • 7障害者社員の職域拡大支援
  • 8管理者や指導担当者への支援
  • 9研修後の実業務への接続
  • 10企業が将来的に自社で育成とマネジメントを行うための自走化支援

TSUNAGUの研修は、資格取得やツールの操作方法を覚えることだけを目的とするものではありません。企業で実際に上司から業務指示を受け、内容を理解し、期限までに成果物を提出し、必要な報告や相談を行う実務能力を育成することを重視しています。

「自社で障害者雇用を実現したい企業だからこそ、採用後の人材育成と職域開発が重要になります。」

よくある質問

Q1. 外部サービスを使わずに法定雇用率を達成できますか?

可能です。実際に、人材紹介会社や農園型雇用支援、雇用代行型サービスを利用せず、自社の採用活動と社内の業務設計だけで法定雇用率を達成している企業は存在します。ただし、採用した障害者社員が長期的に活躍できるかどうかは、採用後の職域開発と人材育成の体制にかかっています。人数を確保するだけでなく、その人たちが担当できる業務を継続的に用意できるかが、自社完結型の障害者雇用の成否を分けるポイントです。

Q2. 自社雇用と自社完結は同じ意味ですか?

異なります。「自社雇用」は、雇用契約、指揮命令、評価、配属、日常的なマネジメントを企業自身が担うことを指します。一方「自社完結」は、採用、育成、業務設計、配属、定着支援、管理者教育など、障害者雇用に必要なすべての機能を社内リソースだけで実施する状態を指します。自社雇用を実現しながら、必要な部分に外部の専門知識(研修、業務設計支援、管理者教育など)を取り入れることは可能であり、むしろ持続可能性を高める有効な方法です。

Q3. 研修会社を利用すると、自社完結ではなくなりますか?

いいえ。「自社完結」にこだわることが目的ではなく、「自社で障害者雇用を継続できる状態」をつくることが本質的な目的です。外部の研修会社や専門機関を利用しても、雇用の主体、指揮命令、評価、日常的なマネジメントが自社にある限り、それは自社雇用です。むしろ、自社にない専門知識を外部から取り入れ、そのノウハウを最終的に社内に移転することで、自社の雇用力を高めることができます。外部支援の活用は、自社完結を諦めることではなく、自社完結を実現するための手段と捉えることが重要です。

Q4. 障害者社員に任せる仕事がなくなった場合はどうすればよいですか?

まず、社内の業務を棚卸しし、以下の観点で職域候補を洗い出してください。現在外注している業務、後回しになっている業務、属人化している業務、デジタル化によって新たに生まれる業務、各部署の未着手業務です。並行して、障害者社員本人のスキルを把握し、不足しているスキルがあれば研修で補います。単純作業を探すのではなく、「社内の業務課題」と「本人の能力・成長可能性」を結びつけることが重要です。社内だけでの検討が難しい場合は、職域開発の専門知識を持つ外部の支援を活用することも有効な選択肢です。

Q5. 障害者社員の職域はどのように広げればよいですか?

職域拡大は段階的に進めることが基本です。まず社内業務を棚卸しし、現在任せている業務と今後任せたい業務を整理します。次に、本人の現在のスキルと必要なスキルのギャップを特定し、研修やPBL型実務訓練でそのギャップを埋めます。その後、小さな実業務から担当を始め、成果を評価しながら徐々に業務範囲を広げていきます。重要なのは、「障害者向けの特別な仕事」をつくるのではなく、社内に存在する業務課題と本人の能力を結びつける視点です。この循環を継続的に回すことで、職域は段階的に広がっていきます。

Q6. 障害者社員にもリスキリングは必要ですか?

必要です。デジタル技術の進化や業務環境の変化は、障害の有無にかかわらずすべての社員に影響します。特に、Microsoft 365の活用スキル、生成AIの活用スキル、Power Platformなどのローコード開発スキルは、今後多くの職域で必要とされる可能性が高い分野です。リスキリングの目的は「今の仕事を続けるため」だけではなく、「次の仕事に挑戦するため」でもあります。障害者社員のリスキリングは、本人のキャリア形成と企業の職域拡大を同時に実現する投資です。

Q7. 同じ仕事を長期間続けてもらうことに問題はありますか?

障害者社員本人がその業務に満足し、成長を実感できているのであれば、必ずしも問題ではありません。しかし、多くの場合、同じ業務を長期間続けることで以下のような課題が生じる可能性があります。本人が成長を実感できずモチベーションが低下する、評価や昇給の根拠をつくりにくい、業務量の変動や業務自体の消滅に対応できない、新しいスキルを習得する機会を失う、などです。これらのリスクを認識した上で、本人の希望や適性に応じて、担当業務を段階的に広げる選択肢を用意しておくことが望ましいです。

Q8. 障害者社員のキャリア形成はどのように考えればよいですか?

障害者社員のキャリア形成は、「現在の業務」→「習得すべきスキル」→「次の業務」→「新たな役割」という段階的なプロセスとして設計します。重要なのは、企業側がキャリアの方向性を一方的に決めるのではなく、本人の希望、適性、障害特性、現在のスキル、必要な配慮を確認しながら、一緒にキャリアを考えていくことです。また、キャリア形成は昇進・昇格だけを意味するわけではなく、担当業務の幅が広がること、専門性が深まること、複数部署と関わること、後輩の指導的役割を担うことなども、広義のキャリア形成です。

Q9. 現場管理者にはどのような研修が必要ですか?

現場管理者には、以下のような研修が有効です。障害特性の基礎理解(身体障害・精神障害・発達障害それぞれの特性と配慮のポイント)、合理的配慮の考え方と実践方法、業務指示の出し方(曖昧な指示を避け、目的・手順・期限・品質基準を明確にする方法)、フィードバックと評価の方法(改善点の伝え方、成果の認め方)、体調変化のサインの察知と適切な対応、障害者社員との1on1ミーティングの進め方、などです。管理者研修は「障害者対応の特別なスキル」ではなく、「誰に対しても明確で公平なマネジメントを行うスキル」の一環として位置づけることが重要です。

Q10. TSUNAGUは雇用代行サービスですか?

いいえ、TSUNAGUは企業に代わって障害者を雇用することを主目的とするサービスではありません。TSUNAGUは、企業が自社の組織、自社の業務、自社のマネジメント体制の中で障害者社員を育成し、担当業務を広げ、長期的に雇用を継続できるよう支援する「人材育成型障害者雇用支援」を提供しています。具体的には、障害者社員のスキル把握・育成計画策定・IT/DX研修・PBL型実務訓練・職域開発支援・管理者支援・自走化支援などを行っています。雇用の主体はあくまで企業にあり、TSUNAGUはそれを支援する立場です。

まとめ——自社雇用を選ぶなら、成長し続けられる仕組みまで設計する

自社内で障害者雇用を実現する方針は、障害者を企業の本業や組織から切り離さず、既存社員と共に働くインクルーシブな職場を目指す、非常に意義のある選択です。この方針は最大限に尊重されるべきものです。

一方で、採用人数を確保するだけでは、長期的な継続は難しいという現実もあります。雇用人数が増えるほど、職域開発と人材育成の重要性は高まります。同じ業務を続けるだけでは、本人の成長やキャリア形成が停滞する可能性があります。

重要なのは、「雇用を自社で行うこと」と「すべての知識や機能を社内だけで用意すること」を区別することです。必要な部分に外部の専門知識を取り入れることで、自社雇用の持続可能性を高められます。最終的に目指すべきなのは、企業自身が障害者社員を育成し、職域を広げ、雇用を継続できる状態です。

自社で障害者雇用を実現したいという方針は、どうか大切にしてください。その方針を継続するための仕組みづくりに、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

自社雇用を続けるための、人材育成と職域開発を考えませんか。外部に雇用を任せるのではなく、自社の組織と業務の中で障害者雇用を実現したい。その方針を継続するためには、採用人数の確保と同時に、障害者社員が成長し、担当業務を広げられる仕組みが必要です。合同会社TSUNAGUでは、現在雇用している障害者社員のスキルや担当業務を確認し、今後必要となる人材育成、リスキリング、PBL型実務訓練、職域拡大についてご相談を受けています。雇用を外部へ任せるためではなく、自社内で障害者雇用を継続するための仕組みを一緒に検討します。

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参考文献・一次資料

※本記事の内容は執筆時点の情報に基づきます。最新の法令・制度については、上記の一次資料をご確認ください。

障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 監修は水野 祐美子(プロフィールはこちら)。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。

監修:水野 祐美子
公開日:2026-07-30