ハローワークから「雇入れ計画作成命令」を受けた担当者がまず直面するのは「何を書けばいいのか、何を提出すればいいのかわからない」という困惑です。この記事では、雇入れ計画の作成に必要な書類一覧・各記載項目の解説・担当者がやりがちな記載ミス・ハローワーク担当者に伝わる書き方のコツを、実務目線でまとめました。前回の記事「社名公表より前が大変——人事担当者を疲弊させる"ハローワーク対応"とは」の続編として、担当者が今すぐ使える情報に絞っています。

【重要な前置き】雇入れ計画書の様式・提出先・具体的な要件は、ハローワーク(公共職業安定所)・都道府県労働局によって細部が異なる場合があります。この記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別のケースに対する法的助言ではありません。実際の計画書作成・提出にあたっては、必ず管轄のハローワーク担当者に確認してください。

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1. そもそも「雇入れ計画」とは何か——命令を受けたときに知っておくべき基本

雇入れ計画(正式には「障害者雇入れ計画」)は、障害者雇用促進法に基づいて厚生労働大臣(実務上は都道府県労働局・ハローワーク)が、一定の条件を満たす障害者雇用率未達企業に対して作成を命令する計画書です。

作成命令の対象となるのは、主に「雇用率未達かつ不足人数が一定規模以上」の企業です。対象となった企業は、原則として2年間の雇入れ計画を作成し、提出期限内(通常は命令から1〜2ヶ月程度)にハローワークへ提出しなければなりません。

計画期間は通常2年間で、その間に段階的に障害者を雇い入れることを計画します。単なる「目標の宣言」ではなく、「いつ・何名・どのような業務で・どのチャネルから採用するか」を具体的に記載することが求められます。

項目内容
根拠法令障害者雇用促進法 第46条(雇入れ計画作成命令)
計画期間通常2年間(開始年度・終了年度を設定)
提出先管轄のハローワーク(公共職業安定所)
提出期限命令受理後、通常1〜2ヶ月以内(担当者に確認)
計画の効力提出後は計画内容に基づく実行責任と進捗報告義務が発生
未達の場合適正実施勧告→特別指導→社名公表のリスク
雇入れ計画作成命令——提出期限・計画期間・記載要件を正確に把握することが第一歩

雇入れ計画作成命令——提出期限・計画期間・記載要件を正確に把握することが第一歩

2. 雇入れ計画に必要な書類一覧——何を用意すれば提出できるか

雇入れ計画の提出に際して必要となる書類は、主に以下の通りです。担当ハローワークによって様式や追加資料の要求が異なるため、事前に確認することをお勧めします。

書類内容・備考作成主体
①障害者雇入れ計画書(正式様式)ハローワークが指定する様式。ハローワーク窓口またはホームページで入手企業(担当者)
②現在の障害者雇用状況の確認資料6月1日時点報告書の写し・現在の在籍障害者一覧企業(担当者)
③採用活動の実施状況記録ハローワーク求人票・面接実施記録・就労移行支援事業所への連絡記録企業(担当者)
④受け入れ予定業務の概要説明採用後に担当させる予定の業務内容・配属部門の概要企業(担当者)
⑤法人登記簿謄本または会社概要初回提出時に必要な場合あり(担当者に確認)企業
⑥(任意)採用活動強化の具体的施策説明就労移行事業所との連携計画・採用サービス利用計画など、計画の実現可能性を補強する資料企業(担当者)

①の計画書本体が最も重要ですが、③④の添付資料の充実度がハローワーク担当者への「本気度の証明」になります。特に「現在どのような採用活動を行っているか」の記録は、計画書の信頼性を高める上で効果的です。まだ本格的な採用活動を始めていない場合でも、「ハローワーク求人を登録済みであること」「就労移行支援事業所に問い合わせ済みであること」を示す記録があると印象が変わります。

書類収集の優先順位——最初に動くべき3つ

  • 1【最優先】管轄ハローワークに連絡し、計画書の正式様式・提出期限・追加資料の要件を確認する(電話でも可。窓口に行くのが最も確実)
  • 2【次に】前年6月1日時点の障害者雇用状況報告書の写し・現在の在籍障害者リストを人事台帳から抽出する
  • 3【並行して】過去1〜2年間のハローワーク求人登録履歴・応募者数・面接数・採否の記録を整理する(「採用しようとしてきた形跡」の証拠として機能する)

3. 計画書の記載項目を解説——各欄に何を書けばいいか

雇入れ計画書の様式はハローワークによって若干異なりますが、共通して記載が求められる主要項目は以下の通りです。各項目で「何を書くべきか」「何をNGとすべきか」を解説します。

記載項目記載すべき内容記載のポイント
計画期間開始月・終了月(通常2年間)命令を受けた年の翌1月〜翌々年12月など、ハローワーク担当者と確認して設定
計画開始時の雇用状況現在の常用雇用者数・雇用障害者数・雇用率報告書の数値と一致させる。端数処理も含めて正確に
計画終了時の雇用目標目標とする雇用率・雇用障害者数法定雇用率(2026年7月以降は2.7%)を下回らない目標を設定。未達の場合のリスクを認識した上で現実的な数値を
年度別採用目標人数1年目・2年目それぞれの採用予定人数一度に大人数を計上するより、年度ごとに分散させた方が達成しやすく、説得力も高い
採用予定の障害種別身体・知的・精神・発達障害などの区分特定しすぎると選考の幅が狭まる。「身体・精神・発達障害等を含む」と幅を持たせる記述が実務的
採用チャネル(採用方法)ハローワーク求人・就労移行支援事業所・特例子会社・民間エージェントなど複数チャネルを列挙すると取り組みの積極性が示せる。すでに利用中のものを優先的に記載
採用後の配属予定部門・業務内容受け入れる部門名・具体的な担当業務最も重要な欄。曖昧な記述は計画の信頼性を損なう。具体的な業務名を書く(例:データ入力・書類整理・電話一次受付)
採用活動の強化策現在進めている・今後進める採用強化施策就労移行事業所訪問・社内受け入れ研修・業務設計の見直しなど、具体的な行動計画を記載
各記載項目で「具体性」を意識することが、計画書の信頼性を左右する

各記載項目で「具体性」を意識することが、計画書の信頼性を左右する

4. 「伝わる」記載のコツ——ハローワーク担当者に評価される書き方

ハローワーク担当者は毎年多数の雇入れ計画書を確認しています。その中で「この会社は本気で取り組もうとしている」と評価される計画書と、「形式だけ整えた計画書」は、記載内容の具体性・整合性・実現可能性で明確に区別されます。

コツ①——「配属予定業務」は職種名ではなく作業内容で書く

「事務職として採用予定」という記述は評価されません。「週3日・1日4時間、経理部門での請求書データ入力および照合確認業務(Excelを使用)」のように、実際の作業レベルで書くことで計画の実現可能性が格段に高まります。業務が具体的に書かれているということは、社内で受け入れの合意が取れている可能性が高いとハローワーク担当者は判断します。

コツ②——「採用チャネル」は複数列挙し、すでに動いているものは進捗を書く

「ハローワーク求人を登録する予定」より「○月にハローワーク求人を登録済み(求人番号:XXXX)」という記述の方が信頼度が高い。また「就労移行支援事業所○社に連絡済み・実習受け入れ検討中」といった進捗情報を添えると、採用活動の本気度が伝わります。

コツ③——「なぜ今まで採用できなかったか」の原因分析を一言添える

計画書の「採用活動強化策」欄に、「これまで採用が進まなかった主因(業務設計の未整備・受け入れ部門の特定ができていなかった等)とその改善策(○月までに部門別業務棚卸しを実施する)」を記載すると、ハローワーク担当者が「この会社は問題の所在を理解している」と判断し、指導も建設的な方向に進みやすくなります。

コツ④——年度別の目標人数は「1年目:控えめ、2年目:達成ライン」で設定する

「2年間で一気に5名採用」という計画より、「1年目:1〜2名、2年目:3〜4名(法定雇用率達成ライン)」という段階的な計画の方が現実的かつ評価されやすいです。1年目で未達でも「計画通りのペース」として説明できる余裕を持たせることが、2年間の実行を乗り切るための戦略です。

コツ⑤——社内の推進体制を記載する

「担当者名:〇〇(人事部)」だけでなく、「採用推進体制:人事部長・〇〇部部長を含む推進委員会を設置し、月次で進捗を確認する」といった社内体制を一行添えると、「担当者任せではない」という印象を与えられます。実際に推進委員会が動いている必要はありますが、少なくとも経営承認を得た上で計画を提出していることが伝わります。

計画書は「完璧な状態で出す」より「提出期限を守ること」が最優先です。不完全でも提出し、担当者と面談しながら修正するアプローチの方が、提出遅延による心証悪化より遥かにマシです。「まず出す、それから改善する」という姿勢を担当者に伝えましょう。

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5. よくある記載ミス・提出ミス——先輩担当者が踏んだ地雷

ハローワーク担当者が実際によく指摘する記載ミス・提出時のトラブルをまとめました。提出前に必ずチェックしてください。

ミスのパターン何が問題か対処法
雇用率の計算を間違えている常用雇用者数・除外率・みなし規定を誤解して計算。「現在〇名雇用済み」と書いたが実際の雇用率と乖離提出前にハローワーク担当者に計算方法を確認する。報告書の数値と一致させる
計画終了時の目標が法定雇用率を下回っている「2年後に2.5%を目標」と書いたが、2026年7月以降の法定雇用率は2.7%目標設定時は最新の法定雇用率(2.7%)以上を目標にする
配属業務が抽象的すぎる「一般事務として採用予定」だけで、担当業務が特定されていない最低限、部門名と主な作業(データ入力・ファイリング等)を具体的に記載
採用チャネルが「ハローワーク」のみチャネルが一つだけでは採用活動の積極性に疑問符がつく就労移行支援事業所・特例子会社・民間障害者専門エージェントを追加する
勤務形態が未記載正社員・契約社員・パートタイムの区分、週の勤務時間の記載がない短時間勤務(週20〜30時間)から始める場合はその旨を明記する
社内承認を取らずに提出した計画書計画書に書いた部門の部長が「聞いていない」と後から発覚、計画が実行不能に提出前に配属予定部門の責任者の承認印・サインを取得しておく
提出期限を過ぎたハローワーク担当者への心証が著しく悪化。督促→指導強化の可能性期限超過が見込まれる場合は事前に担当者に連絡し、延長可否を確認する
提出前チェックリストの活用——よくある記載ミスを事前に潰す

提出前チェックリストの活用——よくある記載ミスを事前に潰す

提出前の最終チェックリスト

  • 計画書の様式はハローワーク指定の最新版を使用しているか
  • 計画開始時の雇用率・雇用者数は直近の報告書と一致しているか
  • 目標雇用率は最新の法定雇用率(2026年7月〜2.7%)以上に設定されているか
  • 年度別採用目標人数の合計が、目標雇用率達成に必要な採用数と整合しているか
  • 配属予定業務に「部門名・具体的な作業内容・勤務形態(週時間数)」が記載されているか
  • 採用チャネルが2つ以上列挙されているか
  • 配属予定部門の責任者の承認を取得済みか
  • 経営トップ(代表者・人事担当役員)の承認・署名は取得済みか
  • 添付書類(雇用状況確認資料・採用活動記録)は揃っているか
  • 提出期限までに余裕があるか(最低でも3営業日前までに担当者確認を取ること)

6. 計画書を「作って終わり」にしないための運用設計

前回の記事でも触れましたが、雇入れ計画は「作って提出すれば終わり」ではありません。2年間の実行責任と進捗報告義務が伴います。計画書を提出した段階で、同時に「2年間の運用設計」を立てておくことが、担当者の将来の疲弊を防ぐ最重要ポイントです。

時期やること用意しておくべき記録
提出直後〜1ヶ月ハローワーク担当者との初回面談・方針確認面談メモ・担当者名・連絡先の記録
毎月採用活動の実施状況記録(求人更新・応募者数・面接数)採用活動月次ログ(Excelで管理推奨)
四半期ごと採用活動の進捗を経営陣・現場部門長に共有四半期進捗報告書(社内用)
半年後ハローワーク中間確認面談への出席採用活動記録・採用状況・課題と対策の整理資料
採用成立時採用後の配属状況・業務開始の報告採用報告書・配属確認書類
1年経過時計画1年目の達成状況確認・2年目計画の修正協議1年間の採用活動総括レポート
2年経過時計画終了時の雇用率報告・達成状況の確認2年間の採用実績・現在の雇用率確認資料

この運用スケジュールを計画書提出と同時に「社内カレンダー」に入れておくことを強くお勧めします。2年後の期限は遠いように感じますが、四半期ごとの確認・面談対応が積み重なると、その準備作業が担当者の定期業務として負荷になります。最初から「いつ・何をするか」をカレンダー化しておくことで、直前の慌ただしさを防げます。

7. 社内を動かすための「根拠資料」の作り方

担当者が最も困るのは「社内の誰も動いてくれない」ことです。雇入れ計画書の作成を機に、社内の関係者を動かすための「根拠資料」を一度作っておくと、計画実行期間の2年間を通じて活用できます。

経営陣向け——「やらないとどうなるか」の数値化

経営陣は「法的リスク」より「コスト・ブランド・採用への影響」で動きます。以下のような試算資料を1ページで作ると、経営承認を得やすくなります。

  • 1納付金の年間コスト試算:「現在○名不足→年間○万円の納付金(月5万円×不足数×12ヶ月)」
  • 2雇用達成した場合の調整金受給可能額:「○名採用で年間○万円の調整金受給見込み」
  • 3社名公表リスクの具体化:「公表後の採用ブランドへの影響・取引先への影響を考慮した機会損失の概算」
  • 4助成金活用による採用コスト軽減:「人材開発支援助成金活用で研修費用の○割が助成される可能性」

現場部門向け——「どんな人がどんな業務をするか」の具体的イメージ

「障害者を受け入れてほしい」と言っても現場が動かない最大の理由は「どんな業務をさせればいいかわからない」「管理コストが増えそう」という不安です。以下のような1枚ペーパーを部門長向けに用意すると、受け入れ承認を得やすくなります。

  • 1想定する採用者のプロフィール(例:精神障害・週30時間・PC操作可能・コミュニケーション課題少)
  • 2担当してもらう予定の業務リスト(例:月次集計データ入力・会議資料印刷・メール一次振り分け)
  • 3週の業務時間数の概算(例:週30時間のうち、このリストの業務だけで週20時間分ある)
  • 4「現場担当者がやること」の明確化(例:週1回の15分面談・業務指示はTeamsでテキスト送信)
  • 5採用後の支援体制(例:就労移行支援事業所のジョブコーチが定期訪問・人事が月次でフォロー)

経験則として、「現場部門が受け入れを承認する」最大の障壁は「管理コストへの不安」です。「週1回15分のTeams面談だけで済む」「わからないことは人事が最初に対応する」という安心感を与えることが、現場承認の最短ルートです。

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8. 計画書を作る前にやるべき最重要ステップ——「業務設計」なしに計画書は機能しない

計画書の記載を充実させることは重要ですが、それ以上に重要なのが「計画書に書ける内容を実際に作ること」です。言い換えると、計画書を作る前に「受け入れ可能な業務の設計」が済んでいなければ、計画書はどれだけ丁寧に書いても「絵に描いた餅」になります。

業務設計とは、「どの部門の・どの業務を・週何時間・どんな手順で・どんなITツールを使って・どんな障害特性の人が担当するか」を具体的に設計することです。これが整っていれば計画書は自然と書けます。整っていなければ、担当者はいつまでも「言い訳の計画書」を作り続けることになります。

計画書作成と並行して進める「業務設計の最初の3ステップ」

  • 1ステップ1【業務棚卸しシートの作成】各部門に「週○時間以上ある・PCで完結できる・マニュアル化できる」業務のリストを記入してもらうシートを配布する(部門長宛ての依頼文を添付し、1週間以内の回答を求める)
  • 2ステップ2【業務候補の絞り込み】回収したシートから「週10時間以上の定型業務で、マニュアル化が可能なもの」をピックアップ。合計で週20〜30時間になるよう複数部門から組み合わせる
  • 3ステップ3【受け入れ部門との合意形成】候補業務の部門長と個別に話し合い、「受け入れる業務範囲・勤務形態・サポート体制」について合意を得る。この合意内容が計画書の「配属予定業務欄」に書く内容になる

この3ステップは最低でも2〜3週間かかります。計画書の提出期限が1〜2ヶ月後と考えると、提出1週間前から動くのでは間に合いません。計画作成命令を受けた段階で、即座にステップ1を開始することが重要です。

業務棚卸しワークショップ——計画書作成と並行して、受け入れ可能業務を各部門から洗い出す

業務棚卸しワークショップ——計画書作成と並行して、受け入れ可能業務を各部門から洗い出す

まとめ——計画書は「手段」であり、目的は「採用・定着の実現」

雇入れ計画書の作成は、ハローワークへの提出義務という側面だけで捉えがちですが、本来は「自社がどう障害者雇用を実現していくか」を言語化する機会です。計画書を書く過程で「どこに業務があるか」「誰が採用担当になるか」「どのチャネルで採用するか」を整理することは、採用活動を前に進めるための思考整理にもなります。

担当者一人で全てを抱え込まないためにも、計画書の作成プロセスを「社内を巻き込む機会」として使ってください。計画書を書くために部門長と話す、経営陣の承認を取る——これらは面倒に感じますが、その過程で得られる社内の理解と協力こそが、2年間の計画実行を支える基盤になります。

「計画書を書きたいが、受け入れ可能な業務が社内にない」という段階からのご相談はTSUNAGU Academyにお任せください。業務設計の棚卸し支援から、ITスキルを習得した障害者人材の育成・採用まで、計画書に書ける内容を現実のものにするサポートを提供しています。無料相談はお気軽にどうぞ。

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参考文献・一次資料

※本記事の内容は執筆時点の情報に基づきます。最新の法令・制度については、上記の一次資料をご確認ください。

障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 監修は水野 祐美子(プロフィールはこちら)。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。

監修:水野 祐美子
公開日:2026-02-21
更新日:2026-05-01