【2026年7月10日 施行後更新】2026年7月1日、法定雇用率2.7%が施行されました。「数」の達成プレッシャーがかつてないほど強まる中、本記事が論じる「雇用の質」の重要性はむしろ高まっています。厚労省研究会報告書(2026年2月)が示した方向性——ガイドライン整備、報告義務化、能力開発と職務接続——は、施行後の今、具体的な制度設計として動き始めています。7月15日の障害者雇用状況報告の提出を前に、多くの企業が「数」に追われる今だからこそ、「質」を伴った雇用の設計が長期的な競争力になると確信しています。施行後の現場で「質」がどう問われ始めているか、本記事の視点で読み直してください。

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障害者雇用をめぐる議論は、これまで「雇用者数」や「法定雇用率」といった「数」を中心に展開されてきました。しかし、2026年2月6日に厚生労働省が公表した「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会報告書」では、今後の制度設計の方向性として、障害者社員が能力を発揮できているか、成長の機会があるか、企業の事業活動に参加できているかという「雇用の質」も重視されるべきであることが示されています。本記事では、同報告書の内容を一次資料に基づいて読み解き、企業が今後どのような雇用管理と人材育成に取り組むべきかを解説します。

なぜ今、「障害者雇用の質」が重視されているのか

日本では障害者雇用促進法に基づく法定雇用率制度により、一定規模以上の企業に障害者の雇用が義務づけられています。民間企業の法定雇用率は2024年4月に2.3%から2.5%に、2026年7月にはさらに2.7%へと段階的に引き上げられています。この制度の効果もあり、民間企業で働く障害者の人数は継続的に増加しています。厚生労働省の集計によると、2024年6月1日時点の民間企業における障害者雇用数は約64万2千人に達し、過去最高を更新しました。

しかし、雇用者数が増加する一方で、現場では次のような課題が指摘されています。担当業務が長期間変わらず固定化されている、本人の能力や希望と職務内容が合っていない、採用後の教育訓練の機会が十分に用意されていない、配属後の成長や職域拡大が想定されていない、企業の本業に参加できる場が限られている、企業の担当者が本人の勤務状況や成長を十分に把握できていない――こうした状況では、形式上の雇用にとどまり、本人の能力発揮と成長の機会が得られにくくなります。

厚生労働省の研究会報告書は、このような課題認識を踏まえ、法定雇用率の達成を引き続き重視しつつも、それに加えて「障害者雇用の質」の向上が今後の制度設計における重要な視点であることを示しました。必ずしも「数から質へ完全に政策転換した」わけではなく、「数の確保に加えて、質の向上が重視されている」と理解することが適切です。

【出典】厚生労働省「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会報告書」(2026年2月6日公表):https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001650602.pdf

厚生労働省の研究会が示した「障害者雇用の質」の中心的要素

研究会報告書では、障害者雇用の「質」は単一の指標で測れるものではなく、複数の要素から構成されるとの考え方が示されています。報告書の議論から読み取れる中心的要素として、以下の5つが挙げられます。

  • 1能力発揮の十分な促進 ― 障害者社員が持つ能力を職場で十分に発揮できる状態にあるか
  • 2能力発揮の成果を企業の事業活動に活用すること ― 発揮された能力が、企業の本業や業務改善に実際に結びついているか
  • 3適正な雇用管理 ― 業務指示、勤怠管理、安全配慮、合理的配慮などが適切に行われているか
  • 4発揮した能力に対する正当な評価と処遇への反映 ― 能力向上や業務成果が、人事評価や配置、処遇に適切に反映されているか
  • 5雇用の安定 ― 障害者社員が安心して継続的に働ける環境と、将来の見通しが確保されているか

単に5つの項目を並べるだけでなく、これらを企業実務に置き換えると、「採用して配置する」だけでなく、「採用後に育成し、能力を業務に活かし、評価し、安定して働き続けられるようにする」という一連のサイクルを回すことが求められていると理解できます。

本人に合った職務を選び、必要に応じて新しい仕事をつくる

障害者雇用の質を高める第一歩は、本人の能力、障害特性、希望と職務のマッチングです。既存の仕事に無理に当てはめるのではなく、社内業務を棚卸しし、複数の業務を組み合わせて新しい職務を創出する視点が重要になります。

企業内には、データ整理、資料作成、Webサイト更新、情報収集、社内文書の電子化など、切り出し方を工夫すれば障害者社員が担える業務が数多く存在します。「仕事がない」のではなく、「仕事が整理・設計されていない」ために見えていない場合が少なくありません。業務の棚卸しと再設計によって、障害者社員が能力を発揮できる職域を見出すことが可能です。

採用後の教育訓練と能力開発が重要になる

障害者雇用促進法では、事業主の責務として、障害者の能力の正当な評価、適正な雇用管理に加えて、「職業能力の開発及び向上に関する措置を講じる」ことが定められています。つまり、障害者を雇用した企業には、現在の仕事を与えるだけでなく、将来担当できる仕事を増やすための教育機会を提供することが求められています。

具体的な教育訓練の例としては、パソコン基本操作、Word・Excel・PowerPointなどのOfficeソフト、クラウドツールの活用、生成AIの操作、Web更新、データ処理、業務上必要なコミュニケーションスキルなどが挙げられます。重要なのは、研修を受けること自体が目的ではなく、担当できる仕事を増やすための能力開発であることです。研修内容が、その先の企業実務に接続されることを前提とした設計が必要です。

【出典】障害者雇用促進法に基づく事業主の責務(職業能力の開発・向上に関する措置を含む)に関する厚生労働省資料:https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001646173.pdf

研修は、企業の実務につながって初めて意味を持つ

研修だけが長期間続く状態は、障害者雇用の本来の目的からすれば望ましい状態とはいえません。研修で習得した能力を、実際の企業業務へ段階的に接続していくことが重要です。例えば、Excel研修を実施したのであれば、その後にデータ集計や報告資料作成を担当してもらう。生成AI研修を受けたのであれば、文書作成、情報整理、マニュアル作成などに活用してもらう。このように、研修と実務を連続的に設計することで、学んだことが実際の業務成果につながります。

模擬業務から補助業務、そして実務へと段階的に移行する考え方が有効です。本人の習熟度に合わせて徐々に難易度や責任範囲を広げていくことで、無理なく戦力化を進めることができます。ここで最も重要なのは、本人の能力発揮の成果が企業の事業活動に活用されることです。ただし、「研修を実施すれば雇用の質が高い」と短絡的に評価することは適切ではありません。研修内容と実務の接続性、そして実際の業務成果が伴ってこそ意味があります。

能力の向上を評価・配置・処遇へ反映する

新しい技能を習得したことや担当業務が広がったことを、適切に評価し、配置や役割の見直しにつなげることが重要です。具体的には、習得したスキルを人事評価に反映する、担当業務が拡大した場合に職務内容や役割を見直す、可能な範囲で昇給や契約条件の見直しを検討する、といった対応が考えられます。

研修を受けても仕事内容や評価が変わらない状態が続くと、能力開発そのものが形式化し、本人のモチベーションにも影響を及ぼすおそれがあります。能力開発と評価・処遇は切り離せない関係にあることを認識し、企業内の人事制度の中で位置づけることが望まれます。ただし、必ずしも昇給や昇格が義務化されているわけではなく、企業の状況や本人の希望に応じて、可能な範囲で取り組むべきものです。

雇用の安定と将来の見通しも「雇用の質」に含まれる

障害者雇用の「質」を考えるうえで、安定して働き続けられる環境の整備も重要な要素です。特に有期雇用の場合、契約更新の基準や、更新の見通し、無期雇用への転換の可能性について、本人に明確に説明されているかが問われます。

本人の中長期的なキャリアを見据えた定期的な面談や目標の見直し、本人が将来の見通しを持てるような情報提供と対話の機会を設けることが、安定した雇用の実現につながります。「有期雇用であること」自体が直ちに「雇用の質が低い」ことを意味するわけではなく、契約更新の基準やキャリアの見通しが明確に共有されているか、本人が納得して働けているかが重要です。

外部支援を利用しても、雇用主企業の責任はなくならない

障害者雇用において外部の支援機関やサービスを利用することは、特に専門知識やノウハウが不足している中小企業にとって有効な手段です。しかし、外部支援を利用する場合でも、業務指示、勤怠管理、人事評価、合理的配慮、配置、処遇、契約更新、安全配慮を含む雇用管理の責任は、原則として雇用主企業にあります。

外部支援事業者は、これらの責任を完全に代行する存在ではなく、専門知識の提供、教育研修、業務設計の相談、定着支援などを通じて企業を補完する立場です。企業が主体的に雇用管理に関与しつつ、不足する部分を外部の専門性で補うというバランスが重要です。中小企業においては、障害者雇用の専門人材やノウハウが社内に十分でないことも多く、適切な外部支援の活用には大きな意義があります。

いわゆる「障害者雇用ビジネス」と外部支援の違い

厚生労働省の研究会や労働政策審議会障害者雇用分科会では、外部の就業場所や業務を利用する一部の事業形態について、さまざまな論点から議論が行われています。具体的には、雇用企業と障害者社員との関係が希薄であること、企業の本業とのつながりが見えにくいこと、企業が雇用管理や能力開発に十分関与していないこと、雇用率算入が主目的に見えることなどが論点として挙げられています。

重要なのは、外部サービスを利用しているという事実だけで直ちに問題となるわけではなく、雇用企業が主体的に雇用管理、能力開発、評価、職務接続へ関与しているかどうかです。企業が自社の責任として障害者社員の育成と活用に取り組み、外部支援はその補完として位置づけられているのであれば、外部サービスの活用は合理的な選択肢となり得ます。なお、「障害者雇用ビジネス」の法令上の定義や具体的な対象範囲については、現時点で完全に確定しているわけではありません。

【出典】厚生労働省・労働政策審議会障害者雇用分科会における「障害者雇用ビジネス」に関する議論:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67605.html

在宅勤務は就労機会を広げるが、適切な雇用管理が必要

通勤困難者、地方在住者、重度障害者、体調管理上在宅勤務が適している人にとって、テレワークは就労機会を大きく広げる可能性があります。厚生労働省も、障害のある人のテレワーク就労や遠隔訓練に関する支援マニュアル、都市部の企業と地方在住の障害者をつなぐテレワーク事例集を公表しています。

一方で、在宅勤務には孤立、コミュニケーション不足、体調変化の把握の難しさ、業務指示の曖昧さ、評価の難しさ、企業との関係性の希薄化といった課題も存在します。これらの課題に対しては、定期面談の実施、チャットやオンライン会議を活用したコミュニケーション、明確な業務指示と成果物の確認、勤務状況の適切な把握、相談先の確保、企業担当者との継続的な接点の維持といった対策が有効です。在宅勤務は適切な運用があって初めて、障害者雇用の質を高める手段となります。

【出典】厚生労働省「障害のある人のテレワーク就労・遠隔訓練に関する支援マニュアル」およびテレワーク事例集:https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001119572.pdf

企業が確認すべき「雇用の質」のチェックポイント

以下に、自社の障害者雇用の現状を確認するための10のチェックポイントを整理しました。現状の確認と改善の参考としてください。

  • 本人の能力、障害特性、希望に合った職務になっているか
  • 担当する仕事の目的や企業への貢献が明確か
  • 採用後の教育訓練や成長機会があるか
  • 研修内容が将来の企業業務につながっているか
  • 企業担当者が本人と定期的に関わっているか
  • 能力向上を業務、配置、評価へ反映しているか
  • 本人が相談できる体制があるか
  • 有期雇用の場合、更新基準や将来像を説明しているか
  • 外部支援事業者に雇用管理を丸投げしていないか
  • 本人の希望や満足度を定期的に確認しているか

障害者雇用を「コスト」から「人的資本投資」へ

法定雇用率への対応は企業にとって重要な責任です。そのうえで、採用、育成、職務設計、評価、定着を一体的に行うことによって、障害者雇用は単なる「義務対応」から「人的資本への投資」へと質的に変化します。

能力開発によって障害者社員の担当業務が広がることで、既存社員の業務負担軽減につながる可能性があります。また、障害者社員の活躍が社内外に示されることは、ダイバーシティの推進や人材戦略の強化にもつながり得ます。ただし、これらはあくまで可能性であり、実際の成果は各企業の取り組み内容と運用次第です。

TSUNAGU Academyが目指す「人材育成型障害者雇用」

合同会社TSUNAGUが提供するTSUNAGU Academyは、障害者雇用を人数の確保だけで終わらせず、雇用後の能力開発、職務設計、定着、企業業務への接続までを支援する人材育成型障害者雇用支援サービスです。企業に採用された障害者社員に対して、IT、DX、Officeソフト、生成AI、Web制作などのオンライン研修を提供します。

研修だけで終わらせず、本人の能力、障害特性、希望、習熟度を踏まえ、雇用企業とともに将来担当する業務を段階的に設計します。企業業務の棚卸し、業務切り出し、在宅勤務の運用支援、定期面談、定着支援、企業担当者への助言などを通じて、雇用企業が主体となって適正な雇用管理を行える体制づくりを支援します。

TSUNAGU Academyが目指す人材育成、職務接続、定着支援の方向性は、厚生労働省の研究会報告書が示した「障害者雇用の質」の考え方と整合しています。具体的には、以下の各要素に対応したサービス設計となっています。

  • 1職務の選定、創出と障害特性とのマッチング
  • 2教育訓練機会の確保
  • 3能力発揮の成果の企業活動への活用
  • 4採用、配置、育成の計画的な実施
  • 5相談支援と適正な雇用管理
  • 6能力に応じた業務、配置、評価への接続
  • 7安定した雇用の実現
  • 8在宅勤務による就労機会の拡大

TSUNAGU Academyが雇用主企業の責任を代行するものではありません。業務指示、勤怠管理、人事評価、合理的配慮、配置、処遇、契約更新等の雇用管理責任は、雇用主企業にあります。TSUNAGU Academyは、企業がこれらを適切に実施できるよう、教育、職務設計、在宅雇用、定着支援の面から補完します。

障害者雇用の「育成」と「業務設計」にお悩みの企業様へ——法定雇用率への対応だけでなく、採用後の育成、在宅勤務の運用、業務の切り出し、定着支援まで含めて検討したい企業様のご相談を受け付けています。

現在の雇用状況や課題を整理したうえで、企業ごとに必要な支援をご案内します。

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まとめ

法定雇用率を達成することは企業にとって重要な責務です。しかし、これからは人数の確保だけでなく、障害者社員が能力を身につけ、企業の中で役割を持ち、適切に評価され、安定して働き続けられる状態をつくることが重要になってきます。障害者雇用を「義務」だけで終わらせず、本人と企業の双方に価値を生む人材育成へつなげていく視点が求められています。

障害者雇用を「義務」から「戦力」へ。

参考資料

① 厚生労働省「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会報告書」(2026年2月6日公表) ― 障害者雇用の「質」の規定、質の向上に向けた事業主の認定制度、いわゆる障害者雇用ビジネスへの対応などがまとめられています。 → https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001650602.pdf

② 厚生労働省「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」関連資料 ― 事業主の責務(能力の正当な評価、適正な雇用管理、職業能力の開発・向上に関する措置)についての資料。研究会での教育訓練、職務の創出、能力発揮、企業の事業活動への活用などの議論が含まれています。 → https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001646173.pdf

③ 障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法) ― 事業主の責務として、能力の正当な評価、適正な雇用管理、職業能力の開発・向上に関する措置が定められています。

④ 厚生労働省「障害のある人のテレワーク就労・遠隔訓練に関する支援マニュアル」およびテレワーク事例集 ― 障害者の在宅勤務・遠隔訓練に関する支援の在り方と実践事例が示されています。 → https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001119572.pdf

⑤ 厚生労働省「障害者雇用状況の集計結果」(令和6年6月1日現在) ― 民間企業における障害者雇用の最新統計が公表されています。 → https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67605.html

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参考文献・一次資料

※本記事の内容は執筆時点の情報に基づきます。最新の法令・制度については、上記の一次資料をご確認ください。

障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 監修は水野 祐美子(プロフィールはこちら)。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。

監修:水野 祐美子
公開日:2026-06-16
更新日:2026-07-10