【2026年7月10日 施行後更新】本記事が公開された2026年2月時点では「将来のリスク」だった法定雇用率2.7%が、2026年7月1日に実際に施行されました。これにより常用雇用労働者37.5人以上の企業が新たに雇用義務の対象となり、これらの企業の人事担当者は2026年6月1日時点の雇用状況を7月15日までに報告する義務に直面しています。本記事で解説した「ハローワークからの指導→雇入れ計画作成→2年間の進捗管理」という実務負担の連鎖は、もはや仮定の話ではありません。特に初めて雇用義務対象となった企業の担当者は、今この瞬間にまさに本記事の世界に突入しています。7月15日の報告期限が目前に迫る中、本記事を「これから起こりうること」ではなく「今起きていること」として読み直してください。

まずは無料相談でお気軽にご連絡ください。

無料相談する

障害者雇用率が未達でも、「納付金を払えばよい」「社名公表まではまだ時間がある」と考えていないでしょうか。しかし実務上、担当者を最も疲弊させるのは、社名公表そのものではありません。その前に発生する、ハローワークからの指導、雇入れ計画の作成、進捗管理、社内調整、採用活動の報告対応です。この記事では、誰も語ってこなかった「社名公表より前の実務負担」を可視化します。

1. 障害者雇用未達は、いきなり社名公表されるわけではない

法定雇用率を達成できていない企業が社名公表されるまでには、複数の段階を経ます。多くの人事担当者が「社名公表=最終ゴール(最悪の結末)」と捉えていますが、実際は社名公表にたどり着く前の段階で、すでに相当の実務負担が発生しています。

障害者雇用未達に対して行政が取るプロセスは、大まかに以下のような段階で進みます。それぞれの段階に「対応する実務」が伴い、担当者の業務量は雪だるま式に増えていきます。

段階内容主な実務負担
①ハローワークによる指導・確認雇用率未達が確認された企業に対するヒアリング・状況確認説明資料の作成、担当者との面談対応、今後の採用計画の説明
②雇入れ計画作成命令(一定要件該当者)不足数が大きい企業に対して、雇入れ計画の作成・提出を命令計画書の作成、社内承認取得、ハローワークへの提出・修正対応
③雇入れ計画の実行(2年間)計画に沿った採用活動・定着支援の実施と進捗報告採用活動継続、定期的な進捗報告書作成、ハローワーク面談
④適正実施勧告・特別指導計画未達の企業に対する公式勧告と特別指導の実施勧告への対応、改善計画の再作成、経営陣への報告・稟議
⑤社名公表特別指導後も改善が見られない場合の公表措置対外的な広報対応、取引先・採用市場への影響管理

重要なのは、⑤の社名公表に至るまでに①〜④の段階があり、各段階で「対応しなければならない実務」が積み上がるという事実です。「社名公表まではまだ先だ」と思っている企業でも、①や②の段階に入ると同時に、担当者への負担は既に始まっています。

社名公表は「最後の段階」——その前の実務負担こそが担当者を疲弊させる

社名公表は「最後の段階」——その前の実務負担こそが担当者を疲弊させる

2. 最初に発生するのは、ハローワークからの指導・確認

企業は毎年6月1日時点の障害者雇用状況を、7月15日までにハローワークへ報告する義務があります。この報告データをもとに、ハローワークは雇用率未達企業に対して「指導・確認」を行います。

「指導・確認」は文書での通知から始まります。ハローワークから「障害者雇用状況についてご確認させていただきたい」という連絡が来た段階で、担当者の仕事が一気に増え始めます。

  • 1現在の採用活動状況の整理と説明資料の作成(「なぜ採用が進んでいないのか」を説明するための文書)
  • 2過去の採用試みの記録確認(ハローワークへの求人登録履歴・面接実施記録など)
  • 3ハローワーク担当者との面談の日程調整・準備
  • 4面談に向けた今後の採用計画の策定(経営陣や現場部門との調整が必要)
  • 5面談後のフォローアップ文書の提出

ここで多くの担当者が最初に直面する壁が「社内で誰も協力してくれない」という問題です。「採用できない理由を説明するための資料ばかり作っている」という声は、この段階から生まれます。現場部門は「受け入れる仕事がない」と言い、経営陣は「なんとかしてほしい」と言い、ハローワークからは「改善計画を出してほしい」と言われる——担当者だけが板挟みになる状況が始まります。

人事担当者の本音①:「採用できない理由を説明するための資料ばかり作っている。ハローワークへの報告のたびに、なぜ採用が進まないかを文書で説明しなければならない。現場は『仕事がない』と言うし、経営は『どうにかしてほしい』と言う。作れるのは言い訳の資料だけ。」

まずは無料相談でお気軽にご連絡ください。

無料相談する

3. 不足人数が多い企業には、雇入れ計画作成命令が出る可能性がある

単なる指導・確認の段階を超え、一定の不足人数がある企業に対しては「雇入れ計画作成命令」が出される可能性があります。これは厚生労働大臣(実務上はハローワーク・都道府県労働局)が企業に対して正式に命令を出す行政処分に近い措置です。

雇入れ計画作成命令の対象となると、企業は計画書(通常は2年間の採用計画)を作成し、ハローワークに提出しなければなりません。この計画書の作成が、担当者にとって最初の大きなヤマになります。

なぜなら雇入れ計画は「作成できれば終わり」ではないからです。計画書には、年度ごとの採用目標人数・採用する予定の障害種別・採用チャネル(就労移行支援事業所・ハローワーク求人など)・採用後の配属予定部門と業務内容——これらを具体的に記載する必要があります。

「現場に受け入れを依頼しても、仕事がないと言われる」という段階でこの計画書を書くことになる担当者の苦悩は想像に難くありません。計画書に書けるような具体的な受け入れ部門・業務が社内に存在しないにもかかわらず、行政向けの体裁を整えた文書を作成しなければならない——この矛盾が担当者を深く疲弊させます。

雇入れ計画書の作成——社内の協力が得られない中で「体裁を整えた文書」を作る消耗戦

雇入れ計画書の作成——社内の協力が得られない中で「体裁を整えた文書」を作る消耗戦

人事担当者の本音②:「現場に受け入れを依頼しても、仕事がないと言われる。それでも計画書には『○○部門で2名を採用予定』と書かなければならない。現場の合意なしに書いた計画書を出して、万が一採用できたとしても、その後どうなるか…と考えると夜も眠れない。」

まずは無料相談でお気軽にご連絡ください。

無料相談する

4. 雇入れ計画は「作って終わり」ではなく、2年間の実行責任が伴う

雇入れ計画書を提出した後、担当者の業務はそこで終わりません。むしろここからが本番です。計画書に記載した内容を実際に実行する責任が2年間にわたって続きます。

ハローワークは計画の進捗を定期的に確認します。採用活動が計画通りに進んでいるか、採用できた場合は定着しているか——これらを報告する義務が継続します。担当者は以下のような業務を2年間継続しなければなりません。

  • 1定期的な進捗報告書の作成と提出(採用活動の実施状況・面接数・採否の記録)
  • 2ハローワーク担当者との定期面談への出席(進捗共有・今後の計画修正の協議)
  • 3採用活動の継続(求人登録の更新・就労移行支援事業所との連携・面接の実施)
  • 4採用後の定着支援状況の記録と報告(在籍確認・配属部門との連携確認)
  • 5計画修正が必要な場合の再提出・承認取得プロセス

この2年間の「実行責任」が、担当者にとってどれほどの負担になるかを考えてみてください。本来の人事業務(採用・研修・評価制度の運営など)をこなしながら、並行してハローワーク対応のための文書作成・面談出席・進捗記録が積み重なっていきます。

さらに深刻なのは「採用活動を続けても採用できない」場合です。業務設計が整っていない・現場部門の協力が得られない・候補者とのマッチングがうまくいかない——こうした根本的な課題が解決されていない状態で採用活動だけを続けることになり、「動いているが成果が出ない」という消耗状態が2年間続きます。

人事担当者の本音③:「ハローワークには改善計画を出す必要があるが、社内では誰も協力してくれない。経営陣は承認してくれるが、現場に話を持っていくと『うちの部門では無理』と言われる。計画書には採用する部門を書いているのに、現場の協力がない。板挟みで身動きが取れない。」

まずは無料相談でお気軽にご連絡ください。

無料相談する

5. 計画未達なら、適正実施勧告・特別指導へ進む

2年間の雇入れ計画期間を経ても、計画が達成できなかった場合はさらに次の段階に進みます。「適正実施勧告」と「特別指導」です。

適正実施勧告は、計画の実施が不十分と判断された企業に対して、改善を公式に求める措置です。ここに至ると、担当者の業務だけでは対処できなくなり、経営トップの関与が求められるようになります。勧告を受けた企業は、経営判断として「どう対処するか」を意思決定し、その内容を文書で行政に示す必要があります。

特別指導はさらに踏み込んだ措置で、ハローワーク担当者が企業を訪問し、経営陣・担当者同席のもとで改善計画の策定を指導します。この段階になると、単なる「担当者レベルの対応」では対処できず、経営会議への報告・役員の関与が必要になります。担当者はここで、「自分だけが2年間苦しんできたのに、なぜ今さら経営陣が出てくるのか」という複雑な感情を抱えることになります。

段階対応必要者主な実務内容担当者の精神的負荷
ハローワーク指導人事担当者面談出席・説明資料作成中(一人で対応可能)
雇入れ計画作成人事担当者・部長承認計画書作成・社内調整・提出高(社内折衝に消耗)
計画実行(2年間)人事担当者中心進捗管理・報告書作成・面談非常に高(長期消耗戦)
適正実施勧告人事部長・経営陣勧告対応・改善計画再策定高(責任追及を受ける)
特別指導経営トップ・人事部長経営陣同席面談・抜本対策立案極めて高(組織的危機対応)

「社名公表まではまだ先」という認識は正しいかもしれません。しかし、その「まだ先」の段階で担当者が経験する業務負荷・精神的消耗は、決して「まだ先」の話ではないのです。

6. 担当者が疲弊する本当の理由

「ハローワーク対応で疲弊する」という事実の背景には、業務量の問題だけでなく、構造的な「板挟み」があります。障害者雇用未達対応における担当者の「本当の疲弊の原因」を整理すると、以下の4つに集約されます。

疲弊の原因①——「言い訳の資料」を作り続けなければならない

障害者採用が進まない根本原因が「業務設計の未整備」「現場の受け入れ態勢の欠如」にあるとき、担当者にできることは限られています。根本解決ができないまま、ハローワークへの「なぜ採用が進まないか」の説明資料を作り続けることになります。この「原因を解決できないまま説明し続ける」消耗が、担当者の精神を蝕みます。

疲弊の原因②——現場部門・経営陣・行政の三者に挟まれる

担当者は三方向から相矛盾する要求を受け続けます。「受け入れ不可」と言う現場、「なんとかしてほしい」と言う経営陣、「計画通りに進めてほしい」と言うハローワーク——この三者の要求を一人で受け止め、それぞれに向けた「納得できる説明」を用意し続けなければなりません。解決権限を持たない担当者が板挟みになる構造は、疲弊を必然的にもたらします。

疲弊の原因③——「採用できない採用活動」を続けることへの虚無感

業務設計が整っていない状態で採用活動を続けることは、「採用しても配属できない」リスクを内包しています。それでも計画を達成するために採用活動を続けなければならない——成果が見えない活動を義務として続けることの虚無感は、担当者のモチベーションを根底から損ないます。

疲弊の原因④——「自分だけが知っている問題」の孤独感

多くの場合、ハローワーク対応の実務を担う担当者は1〜2名です。経営陣はプロセスの詳細を知らず、現場部門は当事者意識がない。「自分だけが全貌を知っていて、自分だけが対応している」という孤独感は、長期間にわたって担当者を消耗させます。

人事担当者の本音④:「結局、人事担当者だけが板挟みになる。経営陣は『法律だからやらなきゃいけない』と言うだけで、具体的に何をすれば良いか一緒に考えてくれない。ハローワークには毎回同じことを説明して、何も変わらないまま時間だけ過ぎていく。」

まずは無料相談でお気軽にご連絡ください。

無料相談する
三方向の板挟み——担当者一人が三者の矛盾する要求を受け止め続ける構造的問題

三方向の板挟み——担当者一人が三者の矛盾する要求を受け止め続ける構造的問題

7. 未達対応を"担当者任せ"にしないために必要なこと

障害者雇用未達対応を担当者一人に押しつけている企業は、担当者を疲弊させるだけでなく、問題の根本解決を遠ざけています。経営と現場を巻き込んだ組織的な取り組みへの転換こそが、担当者を救い、かつ雇用率達成への近道です。具体的に何をすべきかを整理します。

ステップ1——経営レベルでの「障害者雇用方針」の明文化

担当者が「なぜ採用が進まないかの説明資料」を作り続けている間、経営陣が「なぜ自社が採用しなければならないのか」を言語化できているケースは少ないものです。まず経営として「障害者雇用に取り組む方針・理由・優先度」を明文化し、社内に示すことが出発点です。これがなければ、現場部門の協力は得られません。

ステップ2——現場部門を巻き込んだ「受け入れ可能業務」の棚卸し

「うちの部門には仕事がない」という現場の言葉は、「今ある業務の中に障害者社員が担当できる形になっているものがない」という意味であることが多いです。現場任せではなく、人事が主体となって各部門の業務を「週何時間の定型業務があるか」という観点で棚卸しする作業が必要です。これは担当者一人ではできません。少なくとも部長クラスの権限と、場合によっては外部の専門家の力が必要です。

ステップ3——「採用してから育てる」支援体制の構築

「即戦力の障害者を採用する」ことを前提にすると、採用のハードルが上がり、採用後のミスマッチリスクも高まります。一方で「採用してからITスキルを習得させる」育成型のアプローチを取ると、採用ハードルが下がり、配属先の業務に合わせたスキルを習得させることができます。

TSUNAGU Academyのような育成型障害者雇用支援サービスを活用すると、採用後にPower Platform・Excelマクロ・データ入力自動化などのITスキルを習得させながら、実際の業務に配属するステップを踏むことができます。「業務設計→採用→育成→定着」の全プロセスを体系的に設計することで、担当者の「なんとかしなければ」という負担から「設計した仕組みを運用する」形へシフトできます。

ステップ4——ハローワーク対応を「戦略」として捉え直す

ハローワーク対応を「面倒な義務」として受け身で対応するのではなく、「助成金活用・採用支援・就労移行事業所との連携を得るための戦略的な関係構築」として捉え直すことも重要です。ハローワークは障害者採用のチャネルとして活用でき、人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)などの助成金情報も提供しています。担当者が孤軍奮闘するのではなく、ハローワーク担当者との協力関係を構築することが、対応負担を減らす現実的な方法の一つです。

  • 1経営レベルの方針明文化:「なぜ取り組むか」を全社に示し、現場部門の協力を引き出す土台を作る
  • 2業務棚卸しの組織的実施:「担当者任せ」から「部長以上が関与する組織的プロジェクト」へ
  • 3育成型採用への転換:「即戦力採用」の難しさから脱却し、採用後に育成する仕組みを構築する
  • 4就労移行支援事業所とのパートナーシップ:候補者の事前情報共有・実習受け入れでミスマッチを防ぐ
  • 5ハローワーク戦略的活用:助成金情報・採用チャネル・専門家紹介を積極的に活用する

まとめ——「担当者一人に任せない」ことが最大の解決策

障害者雇用率の未達に対して「担当者が頑張れば何とかなる」という発想は、根本的に間違っています。採用が進まない本当の理由は、担当者の努力不足ではなく、経営の関与不足・現場の業務設計未整備・育成体制の欠如にあります。これらは担当者一人の力では解決できません。

社名公表のリスクを気にするより先に、今まさに疲弊している担当者を救うことが、企業としての喫緊の課題です。担当者が消耗し続ける組織では、雇用率の改善はもとより、採用・定着・育成のいずれも機能しません。

「ハローワーク対応が大変」と担当者が感じているなら、それはすでに組織として動くべきサインです。経営が関与し、現場を巻き込み、外部の専門家の力を借りて、組織全体として取り組む体制を整えることが、社名公表よりずっと前に取るべきアクションです。

TSUNAGU Academyでは、障害者雇用の現状把握から業務設計・採用・育成・ハローワーク連携まで、担当者が一人で抱え込まなくて済む体制づくりを一体的にサポートしています。「今まさにハローワーク対応に追われている」「計画書を作らなければならないが何から始めていいかわからない」という段階からのご相談も歓迎します。無料相談をお気軽にご利用ください。

この記事は役に立ちましたか?

参考文献・一次資料

※本記事の内容は執筆時点の情報に基づきます。最新の法令・制度については、上記の一次資料をご確認ください。

障害者雇用・IT/DX活用に関する情報を、人事担当者の視点でわかりやすく発信。 監修は水野 祐美子(プロフィールはこちら)。最新の制度・法令については各省庁の公式情報をご確認ください。

監修:水野 祐美子
公開日:2026-02-14
更新日:2026-07-10